紙の本
私本太平記・7
2015/07/16 16:15
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投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
足利尊氏の九州落ちから桜井の別れ・湊川開戦までの期間を描く。足利尊氏が多々良浜の合戦に向かう前に将士に向かってした演説、楠木正成が後醍醐天皇に必勝の策を奏上するが戦知らずの公家に一蹴されるシーン、定番だけど楠木正成と息子・正行の桜井の別れ、などなど、この巻にも名場面がたくさんある。特に桜井の別れは、戦前の勤王思想に固まったものではなく、父子の情愛が滲み出てくるような語らいがあって泣けた。
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桜井の宿での、楠木正成・正行親子の別れが、なんか力が込められて書かれているなと思う。ちょっと泣けた。こういう親父って憧れるな。
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尊氏を筑紫へ落ち延びせしめた宮方軍。京は勝利の喜びに浸っていた。わけて新田義貞は後醍醐天皇の寵姫を賜わり、凱旋将軍の栄誉を浴びていた。この中にあって、依然行く末を憂いていたのは楠木正成。尊氏の反攻を脅威に感じ、和解策を献上するもそれは採られるはずもなかった。
都が戦勝一色に染まる間、尊氏は大宰府を基点として戦力の充填に務める。わずか一ヵ月半の間に陸軍・水軍ともに大軍団を揃え、東上を開始する。そしてついに、両軍激突となるのであった―。
真に国の行く末を案じている楠木正成、彼の姿が印象に残ります。彼こそまさに忠誠の士と呼んでしかるべき人でしょう。またそういう人はいつの時代でも受け入れられないものなのかもしれません。
ついに尊氏の反攻作戦が始まりました。この日を見据えて九州の武士へも恩義を与えておいたのでしょうか、さすがです。
時の運も味方している足利軍、これに楠木正成、新田義貞がどうぶつかるのか、また彼らの運命はどうなっていくのか、いよいよ最終巻、次が楽しみです。
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(全巻合わせた感想)
文章が読みやすく、状況描写が上手でその場の雰囲気や気持ちが手に取るように分かり、その文章の巧みさに感嘆した。内容は主人公尊氏及び周辺の人々に何らの魅力を見出せなかったので、少しつまらなかった。
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・舞台は九州より勢力を盛り返す足利尊氏と、天皇、朝廷側に立つものの、独自のスタンスを保つ楠木正成が中心に描かれる。
・特に楠木正成の清廉な姿が見事に描かれており、足利尊氏も最後まで彼を見方につけようとしたことがよく理解できる。当時は、はやりトップに立つ武将の人物的な力量が大きかったのだろう。
・仮面作りの職人が、正成の顔を表現した箇所が巧妙。
「ゆたかな慈悲のおん相にはちがいない。けれど阿修羅もおよばぬすさまじい剣気を眸に持っておいてられる。したがその猛も貪婪な五欲には組み合わず、唇と歯には智恵をかみわけ、鼻、ひたいに女性のような柔和と小心と、迷いのふかい凡相をさえお持ちであらっしゃる。卑賤の親とは慕われようが、決して貴人の相とは申されぬ」
「いやいや、言い違えた。貴相ではあるが、その貴相は、福禄のそれではなく、堂上におごる人のそれともちがう。どうみても我利我欲の強さには欠けている。では私の自我心はないのか。それもちがう。おそろしい大自我、いわば大私といったような御自分の自信はなんぴとよりもお強く巌みたいにその貌心の奥に深く秘めてはおられる」
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▼本を読んだ理由(きっかけ・動機)
もともと吉川英治氏の作品は全て読破したいと思っていたため、いずれ読むつもりであった。
このタイミングで手をだしたのは、山岡荘八氏の『源頼朝』を読んで、鎌倉~応仁の乱を経て戦国に到るまでの歴史を改めて知りたいと思ったから。
「足利尊氏」という人物をぼんやりとしか知らなかったのも動機のひとつ。
▼作品について
室町幕府を起こした足利尊氏を主人公に南北朝動乱の始まりから鎌倉幕府崩壊後の泥まみれの戦模様が描かれている。
これを読めば、室町幕府が早期に瓦解し、応仁の乱を経て戦国に突入した理由がよくわかる。
▼感想を一言
切なくなった
▼どんな人におすすめ(気分、状況)
日常に疲れ、厭世観に付きまとわれている人。
「足利尊氏」の晩年の悲しさも最後の「覚一法師」の琵琶問答に救われる。
▼作者について
歴史・時代作家としては吉川英治氏が描く作品は司馬遼太郎氏のリアリティとは違い、人間愛に溢れている。
作品は最後に”救い”があり、現実の厳しさの中にも一輪の花(希望)を咲かせるような
読む人を励まそうとするような一面があるように思える。
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本作品の主人公は紛れもなく足利尊氏だろう。そしてライバルとして楠木正成が据えられている。まあ、同じ源氏出身同士で仲違いをした新田義貞を合わせれば二人か。いや、後醍醐天皇も入れれば三人か。ならば護良親王も合わせれば四人…と、まあ主人公を引き立てせるためには幾人かのライバルを登場させるのが小説のやり方。話を戻そう、楠木正成。彼はどの時代人においても評価が高く、戦前などは彼が超ベビーフェイスで、尊氏がヒールという扱いだった。それは勿論、後醍醐天皇を敵に回した尊氏と、支え続けた正成という図式だからである。本作品は戦後描かれた作品であり、そんな図式にはとらわれず、この二人のキャラクターを魅力たっぷりに描いている。そこが画期的な作品なのだろう。そのライバル同士が、憎み合うことをせず、お互いに認め合うシーンは読んでいて清々しいものがあった。尊氏が一色右馬介を使いにやらせて正成を味方に引き入れようとするシーン、正成が後醍醐天皇に「義貞を切って尊氏と和睦を進めるべき」と迫るシーン…。本作品上ではこのライバル二人は一度しか会ったことがないのだが、これぞ宿命といった感じがした。
一度は敗れながらも、九州に落ち、再び盛り返す尊氏。戦力不足ながらもそれを迎え撃たんとする正成。いよいよ次巻、クライマックスを迎える。
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(1991.07.26読了)(1991.06.29購入)
内容紹介 amazon
一夜にして人間の評価が変るのが乱世の慣い尊氏が「筑紫隠れ」の朝,新田義貞は凱旋将軍として,堂上の歓呼をあびていた.――尾羽打ち枯らした尊氏であったが,北九州に勢力を養い,密かに反攻を企てる.
☆関連図書(既読)
「太平記の謎」邦光史郎著、光文社、1990.12.20
「私本 太平記(一)」吉川英治著、講談社、1990.02.11
「私本 太平記(二)」吉川英治著、講談社、1990.02.11
「私本 太平記(三)」吉川英治著、講談社、1990.03.11
「私本 太平記(四)」吉川英治著、講談社、1990.03.11
「私本 太平記(五)」吉川英治著、講談社、1990.04.11
「私本 太平記(六)」吉川英治著、講談社、1990.04.11
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尊氏、九州から反攻。
僕にとっては、ここが太平記の最大の魅力の一つ。どうして尊氏が時勢の主役になれたのか。それも一年もかからずに。それだけ建武の新政は世に受け入れられなかったということなんだろうけど。それに気づかない後醍醐ってどうなのかなぁ。王として自らの理想のためには民をどれほど苦しめてもかまわないというわけだ。高邁な理想はいいけど、残念ながらそれを具現化する政治・行政能力は皆無だったんだよね。王様ってのはそういうものなんだけどさ。
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足利尊氏は九州に上陸後、菊池党らを破り、勢力を立て直す。ついに、足利尊氏も、持明院党の光厳上皇から院宣を賜わり、自らも官軍となり、西国の諸将を集め、大軍にて西上していく。
一方、京都では、後醍醐帝を中心とした公卿らが、我が世の春を謳歌しており、新田義貞も、勾当内侍を帝から賜っていた。
楠木正成は、足利尊氏との和睦を帝に進言するも聞き入れられず、圧倒的兵力差のなか、死を決意して、戦いに臨む。
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尊氏、筑紫隠れもすぐに体制を立て直し、近畿に巻き返す。迎え撃つは新田義貞と楠木正成だが、愚の義貞と賢の正成が両極端に描かれる。そして、本当は尊氏と戦いたくない正成と息子との有名な桜井の別れ。実家に割と近い頃なので、知ってはいたが、詳しくは分かってなかったので、分かってよかった。なるほどねえ・・・
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尊氏と義貞の攻防。尊氏は破れ筑紫落ち。九州で再起を図り再び入洛を目指す。東進し決戦は兵庫の地へ。正成、新田を廃し足利を用いるよう後醍醐に諫奏。