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多くの試練を経て成長していく少年の喜びや悲しみを、作者の故郷カリフォルニアの大自然を舞台に詩情豊かに描いた自伝的作品。
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一言で言うなら、「やるせない」。そんな感じの小説です。郷愁というほど甘くない、かといってクールなわけでもない。泥臭さのなかに、喪失やかなしみ、苛立ち、愛情が、少々の痛みを伴って浮かび上がる文章。個人的には「約束」が好きです。
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カリフォルニア州に、サリナスというところがある。
二つの山に挟まれた長い谷が続く土地で、作者はここで生まれる。
「赤い小馬」はサリナスが舞台となっている。
主人公ジョーディ少年が繰り広げる、日常のストーリー。
厳格な父、やさしい母、雇い人のビリー、そして遠い昔に思いをはせる祖父。
有名な「怒りの葡萄」とは違って、牧歌的な作品。
<あらすじ>
「贈り物」、「大連峰」、「約束」、「開拓者」の四つが収録されている。
赤い小馬が出てくるのは、最初の「贈り物」。
ジョーディ少年が父親から「自分の馬」を初めて買ってもらい、
乗れるようになるまで、丹精込めて育てていく。
しかし馬は途中で伝染病にかかってしまい、死んでしまう。
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一つ一つの短編の内容は繋がっているという訳ではなく、単独で読むことができる。
同じフレーズが出てきたりして、詩的な効果があったりアメリカ作家らしくない感じ。
続き→http://hihidx.blog115.fc2.com/blog-entry-357.html
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スタインベックの自伝的小説だという、短編連作小説。この手の小説がベストで現代エンターテインメントが安っぽくて駄目だと言っても、カール・ティフリンが言うように『終わってしまったこと』を誰が何度も聞きたがるのだろう。そして文句なしに輝くすばらしき小説に出会う目は訓練をすれば誰でも身につけられるのに、祖父の言うように『西へ進む精神はもう激しい欲求ではなくなってしまって』いる。ここで言う西とは目的であるのだけれど、より限定すれば実態のある~べき事実のことだ。小説で語るべき何と、小説であるべき何に必死になる時代、そういう世代。
また、前時代的である祖父自身も、昔話を始めてみないことには明確に自身が何を伝えたいかをつかめていない。疑問を持たなければ、技巧のこもった感情のない動作にすぎない。事実を経た語り手も歳をとり、老人になれば、ただただもろい。ジョーディの肉体は成長している、ビリー・バックの自尊心。風・雨・泥・陽光……馬、ねずみ、ハゲワシ。
内容の語れる小説が今は求められているかもしれないが、充実感の伴う体験はあり、あるならいられる安心できる。それが時間。
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暴風の夜、愛する小馬を失った少年は、その怒りと悲しみの中から、はじめて「なぜ?」という疑問に接し、苦しむことになる。そんな彼は、突然農場に現れ、住みつきたいという謎の老人に心ひかれるが・・・
数々の試練を経験しながら成長していく少年の日の悩み、喜びを、カリフォルニア、サリーナスの大自然を背景に描く自伝的作品。
厳格な父、心優しき母、愛すべき友ビリーに囲まれて生きるジョーディを焦点にあてた物語で、ひとつの「いのち」の尊さ、動物を愛することの意味を教えてくれる。
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カリフォルニア州サリーナスの大自然を舞台に描かれた作品。
ジョーディについつい感情移入してしまい彼とともに心を痛めつつも、
同時にそういった辛い出来事を通してたくましく成長していく少年の姿を
父親の目線で見守る自分の感覚を確認しつつ読んだ。
主人公以外の登場人物も実に魅力的だ。
特に、西部開拓時代のエピソードを何度も何度も語ろうとする祖父の姿は、
「フロンティアの消滅」という事実に直面してもなお抗おうとする当時の開拓者の痛ましいほどの「スピリット」が感じられた。
そんな祖父に表面的には取り繕いつつも内心冷ややかな目線で見ている父親との対比も面白い。
(特に父親が感極まって感情をぶちまけるシーンはコミカルさもあり秀逸)
人物描写以外にも、牧場の馬たちやサリーナスの大自然の描写は冴え渡っている。
170ページ足らずの作品だが、大変読み応えがあった。
出来ることなら今度は、草原にでも寝そべって深呼吸しながら読みたい。
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アメリカの広大な大地にある牧場が舞台。
この牧場の一人息子のジョーディの目を通じて西部開拓時代の精神が失われつつあるアメリカを描写する。ジョーディは牧場を訪れる老いたヒッピーやおじいさんの昔話に憧れる。
アメリカの乾いた大地が目の前にあるような・・・
スタインベックの小説はアメリカを目の前に映し出してくれます。
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スタインベックすげー。怒りの葡萄もまあすばらしく鬱な名作ですけど、これはもっとコンパクトにぎゅっと鬱。ほんとにすごい。びっくりするくらい鬱。
短編の連作集という感じなのですけど、表題作もすごいが大連峰という短編がもうなんかじわじわきて、たまらん。考えれば考えるほど鬱;;
これは、ずっと心に残る本になる予感。
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主人公の少年ジョーディーが自然の中で成長していく様子を描く。
冒頭は、甘ったれた小生意気の、子供らしい子供だった。
作中、幾度も傷つき、悟ることで大きく成長する。
作品が締めに入る頃には、冒頭と比べものにならない程だ。
流石スタインベック、自然や人間の動きを美しく描く。
繊細ではない、寧ろ不器用ですらあるが、その無骨さがリアルで、
現実味を帯びているのだ。
赤い子馬自体は勿論重要な要素だが、その子馬ではなく、
子馬の存在でジョーディーがどのように成長し、
それを以後どのように糧にしていくのかがこの作品の肝。
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昔の、特に海外のなのかもしれないけど、文化の違いか、時代の違いか、そういうのにビビらされる。「そう言われると、自分のしたことが恥ずかしくなった。それでマットに石をぶっつけてやった。」とか、マットは犬だけど、なんで犬に石ぶつけるんやねん、というね、グリーンピースが聞いたら大変にな事になるよ、今なら。まぁそういうの全部ひっくるめて、ワイルドだよ。子どもが馬をプレゼントされるとか、描写を読んでると、わしも馬ほしいわー、なんて思うけど、今ならせいぜいジャンガリアンハムスターかな。
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ジョーディ少年の牧場での暮らし。
子馬だったり、出産だったり、祖父だったり・・・
そういう生き物や人との関わりの中で、
少年は少しずつ成長していく。
いずれ大人になったとき、この時のことを思い出す。
故郷への郷愁とともに。
スタインベックの、土の香りがする自伝的物語。
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「赤い小馬」ジョン・スタインベック著・西川正身訳、新潮文庫、1955.08.26
156p ¥90 C0197 (2018.02.24読了)(2018.02.23拝借)(1971.11.15/25刷)
【目次】(なし)
赤い小馬
1.贈り物 7頁
2.大連峰 60頁
3.約束 87頁
4.開拓者 122頁
あとがき 西川正身 154頁
☆関連図書(既読)
「エデンの東(1)」ジョン・スタインベック著・野崎孝訳、ハヤカワ文庫、1972.01.31
「エデンの東(2)」ジョン・スタインベック著・大橋健三郎訳、ハヤカワ文庫、1972.01.31
「エデンの東(3)」ジョン・スタインベック著・大橋健三郎訳、ハヤカワ文庫、1972.01.31
「エデンの東(4)」ジョン・スタインベック著・野崎孝訳、ハヤカワ文庫、1972.01.31
「愛と死と反逆と」草鹿宏著、集英社文庫、1977.09.20
「怒りの葡萄(上)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.10(1939年)
「怒りの葡萄(中)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.20
「怒りの葡萄(下)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.11.05
「二十日鼠と人間」スタインベック著・大門一男訳、新潮文庫、1953.10.10(1937年)
「真珠」スタインベック著・大門一男訳、角川文庫、1957.08.15(1947年)
内容紹介(amazon)
少年は父親から赤い小馬(pony)の子を贈られ、それを育てることを委(まか)される。愛する小馬ギャビランとの出会いと不幸な別れ。スタインベックの故郷サリーナス・ヴァレーを舞台に一人の少年の成長の過程が、大自然や生き物との交流を通じて生き生きと描かれる。
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ジョーディを追っていると、子どもの頃の気持ちが蘇っくる。
馬たちを通して。死んだ小鳥を前に。見知らぬ訪問者に。父と祖父のやり取りに。
素朴な暮らしの中、積み重ねられる経験。
彼の場合、この時代のこの土地に育てられている部分も大きいのかもしれない。
最後の「開拓者」では、成長の証しのようなものが見えて、レモネードにしみじみ。
静かに心に染み入る作品だった。