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浮雲 改版 みんなのレビュー

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みんなのレビュー47件

みんなの評価3.7

評価内訳

47 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

未完であるのが人生か

2003/09/12 00:26

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 明治20年に第一編が発売され、今日、「日本における近代小説は『浮雲』に発する」ともいわれる未完の長編小説である。

 主人公の文三は、どうにも人生が上手くない男である。誠実なのは良いけれど、官職を首になっては思い悩み、下宿先の叔父の娘・お勢の慄然(ぞっ)とするほど凄みのある美しさに惚れるも「好きです」と、その一言がいえなくて思い悩む。人生に、これといった答えを出せずに常に思い悩むその様は、まったく生身の人間そのものである。もう痛々しくて、思わず、「文三、なにやってんだよ、はっきりものを言えよ」と堪らず呟いてしまう。これは、紛れもない小説である。

 文三は惚れたお勢に、ついに思い切って打ち明けようと試みる。お勢に、貴方という親友が出来たから大変気丈夫になったなどと言われ、もう嬉しい。しかし、文三にとっては、親友などでは済まされない。惚れた女性に親友扱いされたる男の辛さ、はちきれそうな胸の内、ままよと決意する。

「‥私には‥親より‥大切な者があります‥」
ト吃ながら言ッて文三は差俯向いてしまう。
お勢は不思議そうに文三の様子を眺めながら
「親より大切な者‥親より‥大切な‥者‥親より大切な者は私にも有りますワ」
文三はうな垂れた頸を振揚げて
「エ、貴嬢にも有りますと」
「ハア有りますワ」
「誰‥誰れが」
「人じゃないの、アノ真理」
「真理」
ト文三は慄然(ぶるぶる)と胴震をして唇を喰いしめたまま暫らく無言、…

 この場面、強烈である。これから巡る恋の受難を暗示するのか、当時の女性の流行なのか、四迷の遊びか。ここぞという瞬間に、「真理」と語らせ雲に巻く。雲に巻かれた文三は、答えのない人生をただ生きる。未完に終わる人生。否、生きている限り未完であるのが人生か。

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紙の本

言文一致とドストエフスキー

2003/06/18 21:38

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

私がドストエフスキー「二重人格」を読んでからずいぶん経つが、それを思い起こさせずにはいられない小説である。意外に思われる方もいるかも知れないが、「浮雲」がドストエフスキーの「二重人格」(「分身」)の模倣というか、大きな影響下に書かれていることは、結構有名である、と書こうとしてネットを検索してみると驚いた。そういった記述はほとんどない。私はそういった主張は後藤明生の書いたもので知った。「小説は何処から来たか」という彼の小説論の集大成とも言える自分の書物の引用でできているような本にも書いてある。
それよりも、日本の言文一致の祖がドストエフスキーから出発していた、というのは、単純に面白い話ではないだろうか。日本文学のなかであれほどの影響力を持ち、戦後作家の多くが多大な影響を受けたドストエフスキーが、そもそも「浮雲」の元になっていたというのは結構面白い話だと思うのだが。

小説そのものは役所を免職された内気な青年内海文三が、下宿先の家族との間で不和を拡大していく様子、と簡潔にまとめることができるだろう。文三は下宿先の娘、お勢といい仲であったのだが、お勢の母であるお政との確執からそれも次第に疎遠になるばかりか、元同僚の本田昇という男とお勢が親しくなるのを歯がみせんばかりに見ている。
文三と本田の関係は、ドストエフスキー「二重人格」での、ゴリャートキン氏と突然現われた贋ゴリャートキン氏とほとんど同じである。性格造形も非常に似ているうえ、物語の展開も似ている。興味のある方は是非両方を読んで見て欲しい。

この小説にたびたび出てくる語彙に、条理と不条理がある。これは簡単な解釈をすれば日本の伝統や因習を背負う、お政のいうことを不条理といい、ロジックや新しい国外の学問などにもとづくものを、条理という言葉で対峙させていると見ることができる。そのような見方をすると、そのお政の子として現われ、当初スウィントンの英語の本などを引っ提げて現われる渦中の女性、お勢の位置の変転というのはそのまま、日本近代の不安定と見ることもできるだろう(大ざっぱすぎてつまらない解釈だが)。そのお勢が文三から次第に本田に近づいていき、本田こそがお政の気に入るようになっていくという展開ははなはだ象徴的でもある。小説の展開は、いよいよ文三とお勢との仲が決裂したが、それでも文三は一向に下宿先であるお政の家を出ていないというところで終っている。

この先には悲劇的な展開が待っていそうだが、どうやらおもむきは違っている。決裂した後の決然としたお勢の反文三的態度が次第に軟化していくのが描かれている。そして、一時はお勢を奪われたかと見えた本田も、次第に家に寄りつかなくっている。
どうやら希望が見えてきそうな展開でもあるのだ。事実、第三篇はどちらに転ぶか分からない、しかし、展開を見るに希望がありそうな以下のような文章で終っている。

「が、とにかく物をいったら、聞いていそうゆえ、今にも帰ッて来たら、今一度運を試して聞かれたらそのとおり、もし聴かれん時にはその時こそ断然叔父の家を辞し去ろうと、ついにこう決心して、そしてひとまず二階へ戻った」。

ここでの聞く、聴かないとは、あれほど決裂していたお勢が自分の話を聞くだろうかということである。ここから一波乱有りそうなところである。ドストエフスキーの「二重人格」の陰鬱な結末を知っている私としては、是非とも巻き返しを図る文三を見てみたい気分である。じっさい、小説の展開としてはそうなりそうな感じもあるのだ。しかし、その予測に反して暗い気分にさせられるのは、ここで終ったと言うことだ。ここで中断してしまったと言うこと、それを考えると陰鬱な気分になりかかる。希望を描くことが、できなかったということなのかも知れないからである。

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2004/10/08 00:41

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2006/10/26 14:44

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2008/06/24 20:47

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2012/06/20 00:26

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2012/04/08 23:21

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