紙の本
数々の困難を克服して前進するアメリカは「夢」の超大国です
2008/03/04 11:25
14人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国語の教科書で、中学校だったかな、高校だったかな、読んだのが最初だった。日本の教科書にどうしてスタインベックのこの作品が載ったりするんだろう。アメリカは弱肉強食のひどい国で、弱者は常に虐げられ、絶望し、彼らの心中には日々「怒りの葡萄(The grapes of wrath)」が育っているんだぞという「ひどい偏見」を日本の生徒達に刷り込む「反米偏向教育」の教材として本編が使われているんじゃないかとさえ、かんぐりたくなる。そろそろスタインベックを卒業する時期に日本は来ているんじゃないか。だって、アメリカの実体とあまりに違うから。
アメリカの社会を投射した映像を見ていると、アメリカと言う「偉大な国」が数々の困難に直面しつつも、それを乗り越え、力強く前進していることが確認できる。
本書の背景となっている「世界大恐慌」はアメリカはもちろん、世界が直面した大きな試練だった。この時、計画経済を大規模に推進したソビエト社会主義は、半可通には輝いて見えた。資本主義には絶望しか残っていないかのように見えた。英国の知識人でさえ、そういう認識に陥った人が多かった(バーナード・ショー等)。本書は、その最悪期に書かれた本だということに注意を要する。
しかし、やがてアメリカは力強く復活する。そして世界の支配者として全地球に君臨するようになる。「黄金の50年代」がそれだ。アメリカの1950年代が如何に楽天的で希望に満ちていたか(また、急速に豊かになったことで、その後生じる様々な社会問題の萌芽もこの時に発生しているのだが)は、デービッド・ハルバースタムの名著『フィフティーズ』で確認することが出来る。
ベトナム戦争当時に起きた反戦暴動や人種暴動の映像を見ていると「もうアメリカはだめなんじゃないか」と思えてくるような感じだが、その後、アメリカは見事に立ち直っている。アメリカの国務長官は黒人のライスだし、次期大統領にも、もしかしたら黒人のオバマがなるかもしれない勢いだ。アメリカと言う国は、いろいろ問題も抱えながら、常に明るくオープンに、果敢にその課題に取り組んで、前進を続けてきている。過去50年そうだったなら、これから50年もおそらくそうだろう。2050年にはアメリカの人口は5億人を突破するという。アメリカの時代は予見しうる限りの将来、続くというのが私の見立ててである。
紙の本
もうひとつの聖書
2002/07/28 00:41
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もびーぐれいぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつてのアメリカの大恐慌時代を背景に
オクラホマ州の大平原で平和に暮らしていた
ジョードー家をはじめとする人々は住みなれた土地を追われて、
遠く西部カリフォルニアを目指し長い旅に出なければならなくなるのです。
どうして貧しい人たちが生まれるのか?
どうして人間はこうも苦しまなければならないのか?
そんな問いかけをしながら、物語は進んでいきます。
荒れ狂う大波が迫ってくるような、圧倒的でいて尊厳のある文章で、
ある意味、僕は未だこれ以上の小説を読んだことがない気がします。
聖書にくらべられるというのも過言でないでしょう。
僕がアメリカに興味を持つきっかけになった一冊。ぜひ読んで見てくださいな。
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農業の現場において、労働力の機械化によって働き手としての立場を追われた農民たちが、行き場を求めて移動していく様を描いた大作。アメリカにこういう歴史があったのか・・・と興味深く読めた。以前NHKで、中国の老麦客(ロウマイカ)と呼ばれる労働者たちの特集があったが、彼らも機械にとってかわられる自分の働く場所を求めて、移動を余儀なくされていた。著者のスタインベックは記者時代に、写真家ロバート・キャパと従軍していたとか。
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1930年代のアメリカ西部を舞台に飢饉と闘う人々を描いたスタインベックの代表作です。原作は長い。そして起承転結がないが為にさりげなく重い。簡潔にまとめられた映画を観た方が物語のニュアンスや舞台背景等は掴み易いかもしれないですね。
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力強い社会派小説。時代の大きな流れに飲み込まれる無力感、ふんばって立ち向かう家族の崇高さに涙。産業主義の矛盾に対する批判、というテーマが、小説だからこそ伝わりやすく、普遍的になっているのだなあ。「小説」という形式のパワーを再認識。ちなみにカテゴリは「旅」。「行楽」要素のまったくない、苦難の旅。
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大切な人に借りた本。結局もらうことになってしまったけれど。その人から紹介されなければ決して読まなかったと思う。その人に感謝。
「オクラホマの大平原を猛烈な砂嵐が吹き荒れ、耕地は一夜にして荒野と化す。血と汗で開墾した土地を、天才と大資本とに奪われた農民たちは、カリフォルニアを目指して、死活を賭けた大行進を開始する・・・・・・。ジョード一家に焦点をすえて、30年代アメリカの歴史的状況と、その中に生きる民衆の姿とを描き、旧約聖書の「出エジプト記」にも比べられる格調高い一大叙事詩である。(紹介文より)」
第3章までは慣れない文章に戸惑いつまらないと感じる人も多いかも。私にこの本を貸してくれた人も、つまらないから先に読んでいいよと言っていた。第6章までいくと話が見えてくるのでかなり読みやすくなると思う。
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農業の現場において、労働力の機械化によって働き手としての立場を追われた農民たちが、行き場を求めて移動していく様を描いた大作。アメリカにこういう歴史があったのか・・・と興味深く読めた。以前NHKで、中国の老麦客(ロウマイカ)と呼ばれる労働者たちの特集があったが、彼らも機械にとってかわられる自分の働く場所を求めて、移動を余儀なくされていた。著者のスタインベックは記者時代に、写真家ロバート・キャパと従軍していたとか。
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一夜にして畑を砂丘にしてしまう自然の猛威と、耕作会社のトラクターによって父祖伝来の地を追われた農民一家の不屈の人生を描く。
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スタインベックがノーベル賞を受賞した理由になった作品
機械化や産業構造の変化、環境の変化など
社会の変化に翻弄される弱者を描いた作品と言ってしまえばそれだけだが
それだけでは言い表せないものがこの作品にはある
グローバル化の進む今の世界とも重ね合わせられるものを感じる
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オクラホマの大平原を猛烈な砂嵐が吹き荒れ、耕地は一夜にして荒野と化した。血と汗で開墾した土地を天災と大資本とに奪われた農民たちは、遠い憧れの地カリフォルニアを目指して、死活を賭けた大行進を開始する。
ジョード一家を焦点に据え、彼らを取り巻く様々な人々との交流、衝突が、細やかな心の動きまで繊細に描かれている。鍬と鋤しか持たぬ農民たち──けれども彼らは強く、たくましく生きようとする。夢と希望を求めて遠いカリフォルニアへと進む彼らの足取りは、重さの中にも軽やかさが感じられて、人間として大切なことを思い出させてくれる。
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4年間の刑期を終えて出所したトム・ジョードは、乾燥地帯で営々と農業を続けてきた一家が大規模化の波をまともに受け、オクラホマ州からカリフォルニア州に移ることを知る。説教師ジム・ケイシーと行動を共にし、家族と合流。様々な苦難を乗り越えてカリフォルニア州にたどり着く。
希望の天地であるはずのカリフォルニアでジョード家族を待ち受けていたものは...
【開催案内や作品のあらすじ等はこちら↓】
http://www.prosecute.jp/keikan/056.htm
【読後の感想や読書会当日の様子などはこちら↓】
http://prosecute.way-nifty.com/blog/2009/12/56-0e08.html
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物語としては暗いが、登場人物たちの人間としての強さと優しさが光る。そこかしこで真理が語られているので、話をただ追うのだけではなく、後で繰り返し読み返したくなるだろう。
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上巻168p第8章まで読了。
10年かもっと前に買って、途中まで読んでいたけど、また最近最初から読んでみた。がんばって読んだけど全然おもしろみが分からなくて読み進められない。
もうケリをつけよう。手放そう。
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干ばつと資本主義の嵐に土地を奪われ、オクラホマから西部カリフォルニア州に移動する家族の物語。 アメリカの乾いた大地と共に生きてきた人々の強さ、そして無情な資本主義、拝金主義の恐ろしさを感じる。持つものが持たぬ者から搾取し、格差が広がる。この問題は未解決のまま現代まで至っているような気がする。
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かなり前に購入していたのだが、上下巻合わせて900ページを越えるので、
時間を見つけた時に…と後回しにしていた。
しかし、オーストラリアで誕生した初の女性首相、ジュリア・ギラートがある日の日経新聞で紹介されていて、彼女が最も感銘を受けた本として本作を挙げていた。
そんなきっかけで、ぼちぼちと読み始めた。
米カリフォルニア出身のスタインベックは、
1930年代の大恐慌後の荒んだ農民の姿に憤りを抱いていた。
オクラホマを襲った深刻な砂嵐と、冷徹に進む農業の機械化により、
農業しか生きる術のなかった人々は仕事を求めてカリフォルニアに移住する。
しかし…。
本作はそんな、政府の役人が見向きもしなかったような現状を描き、
ベストセラーとなることによって、その窮状を広く訴えた。
1940年にピューリッツアー賞、1962年にノーベル賞。
農家で大家族な主人公一家の毎日を、極めてリアルに、
あたかも自分の体験であるように描く。
そのためか、描写の移動が捉えづらい部分が見受けられるが、
物語の筋は極めてシンプルなので、それを意識しながら読めば問題ない。
ボリュームはあるものの、そこまで時間はかからないと思います。
感想は(下)の方で。