紙の本
日記帳を読み直そう
2004/06/13 12:29
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋波子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
+★(←120点ということです)
今年の2月になくなった網野喜彦が書いた本である。日本史を考える上で、14世紀が大きな転換期になるという視点から、わかりやすい文章で解説や問題提起をしたりしている。BK1によると利用対象は中学生とあるが、多分歴史を専攻する大学生にも有用だろう。
文字の社会における役割を述べ、明治になって急にカタカナ混じり文が増えたことに言及し、明治国家の本質に触れる問題があるのではないかと問題を投げかけている。それを考えるだけでも年号を覚えるより勉強になる。あの商法の読みづらいしかしすべてが誤り無く包括されているカナ混じり文をすぐに思い出した。
また、様々な差別やエタ、非人、乞食について紹介している。つい最近小学生の女児が同級生を殺す事件があった。これは現代における特徴的な事件ではなく、おそらく古くから繰り返された事件だろう。そして事件を犯した子供やその親はどんな時代でもこれまでどおりの生活はできないわけで、村八分的な扱いを受け、もしかしたら逃げ出し、新しい生活の場所を探し出そうとするが、どこの地域でもよそ者を気前良く受け入れるはずも無いから、そこで彼らは人として生活することをあきらめてしまう、というようなことがあり、ひとつの差別ができて、被差別人種が新しくできてしまうのだろうと私は思う。
最後は天皇についてだが、これはあまりにもナーバスな問題だ。日本が国家として立ち続けるためには避けられないところがあって、刺激的なのは「日本人の意思によって、天皇が消える条件は、そう遠からず生まれるといってよい」とあるところだ。歴史は人類の日記帳である。事実の積み重ねの集大成なのである。その事実を史実というが、創作や捏造も交じって不可解なところもある。それでも創作と創作の間に脈が無ければ創作だし、史実と創作の間に関係性が見つかれば、事実はどこかに隠れているわけなのである。創作も事実だと仮説を証明できないまま天皇制は存続している。第9条よりも大きな問題なのかもしれない。
紙の本
面白かったが
2017/05/09 20:47
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投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白かった。
第三章の被差別の話は長すぎたように感じたが、
第四章の女性についての話は面白かった。
第五章の天皇についての話の最後の方で著者は、
「おそらくこの二つの転換期をこえる過程で、日本人の意思によって、
天皇が消える条件は、そう遠からず生まれるといってよいと思います。」
と語っているが、そうだろうか。賛同できなかった。
本書の続編を含めた(全)というバージョンがあるようで、
そちらの方を読みたかった。
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網野氏のおもな主張を、教科書スタイルのやわらかな文体で書きおろした名著。
網野史学の入り口として最適、ていうか私のバイブル。
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[ 内容 ]
後醍醐天皇の出現が、日本の歴史全体を変えた驚くべき事実。
「一遍聖絵」から読み解く差別の発生。
ひらがな文字や銭の普及の背景とその意味。
今日の私たちを束縛し、重大な影響を与えた14世紀の出来事から、新しい日本史像にいどむ刺激的な試み。
[ 目次 ]
第1章 文字について
第2章 貨幣と商業・金融
第3章 畏怖と賎視
第4章 女性をめぐって
第5章 天皇と「日本」の国号
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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天皇の君臨から江戸時代以前の中世に至るまでの歴史において素晴らしい内容の一書でした。
世俗的な日本人の姿(特に女性)や風習の謂れなど、これだけ内容ある書に出会ったのは初めて。
14世紀中世までの女性の役割や世俗と切り離す為に存在した非人の存在意義、平将門の他にも朝廷から自立した国家が存在したことなど、目からウロコの内容です。
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文字は鎌倉時代以前は大切に扱われてきた。
神様の所有の範疇でないと、商売は出来ない。
人の縁さえも断ち切るために。
虹はあの世とこの世をつなぐ橋。
非人は蔑まれる存在より、畏怖されていた。
神様に使えていたともされていた。
女性観。
中世が歴史の重要な部分を秘めているという事を知る。
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エタ非人は本来は天皇直結で、生命の最後を支配する尊い職業だったのに、武家社会となり自然に対する畏敬の念が薄れたこと、社会が清潔になり、汚いという感情が産まれたことから、卑しい職業になってしまったなどという話が載っている。
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元高校教師をされていた方なで一般向けに書かれた物なので文章も分かりやすく読みやすいです。
百姓=農民でない 網野先生が繰り返しほかの本で書かれているテーマを書かれています。非農耕民が必ずしも貧しくはなく、経済活動も私たちが思うよりも活発だったということが書かれています。
高校の日本史程度の知識があったうえで網野先生のほかの本も読んでみたいという方の入門向けにいいと思います。
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タイトル通り、日本の歴史をまさに「よみなおし」た本。
今まで、私にとって、単に歴史で習った史実やことがらだけでしかなかったことを、網野氏がひとつひとつ丹念に、史料をつなぎ合わせ考察を進めていく中で、昔の日本の本来のすがたが浮かび上がってくる。
日本における文字のありかた、被差別民について、女性の地位について、天皇と日本国についてなど、目からウロコの考察がいっぱい。
面白かった。
「続」も楽しみ。
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日本人の識字率は高かったことに驚く。また、差別がいつごろから発生したかも興味深い。天皇についてはいろいろな見方、考え方があるようだ。宿から夙の発生、長更。非人、犬神人は、特別な存在として身分保障されていた。穢れをはらう=神仏に直属。
天皇とは?皇帝の顔と神聖王的な顔。
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丸をつけるものは,みないわば聖俗の境界にあることを注意する必要がある。
2012/10/23 再読
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中沢新一著「僕の叔父さん 網野善彦」にも書かれていましたが、「悪党」や「芸人」などの、いわゆる境界に在る職業について、聖でもあり賤でもあるといった考え方が興味深かった。
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日本では、文字が10世紀よりも前から、女性も含めて広く普及していた。
女性の地位も、仏教が浸透するまでは結構高く、また財産の権利ももっていた。
現在ある差別が、古代にはなかった。
障碍者や、部落。。。
部落差別が、関東ではほとんど聞かないのに、近畿地方ではとても広く、深い。
その理由とか、九州の友達が、関東びいきなのもわかった。
天皇、将軍のこと。
などなど、初めて知ったことばかり。
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(1998.11.12読了)(1998.11.02購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
後醍醐天皇の出現が、日本の歴史全体を変えた驚くべき事実。「一遍聖絵」から読み解く差別の発生。ひらがな文字や銭の普及の背景とその意味。今日の私たちを束縛し、重大な影響を与えた14世紀の出来事から、新しい日本史像にいどむ刺激的な試み。
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古本で購入。
筑摩書房の社員向けに行った5回の講義をまとめたもの。
社員教育として第一線で活躍する歴史学者を呼ぶなんて、すごいし羨ましい。
他の出版社はわからないけど、筑摩の真摯さみたいなものが見えるな。
少し長いけど本文から。
「現在の転換期と同じように大きな転換が南北朝動乱期、14世紀におこったと考えられるので、この転換期の意味を現在の新しい転換期にあたってもう一度考え直してみることは、これからの人間が進む道を考えるうえでも、また日本の文化・社会の問題を考えるうえでも、なにか意味はあるのではないかと思うのです」
この視点から、「文字」「貨幣と商業・金融」「畏怖と賤視」「女性」「天皇と『日本』の国号」の5つのテーマで話していきます。
まさに網野史学のエッセンス満載の1冊。
その史学の是非はともかくとして、網野の著作を読むなら必ずリストに加えておくべき本かと思います。
読んでいておもしろかったのは「文字」の問題。
平仮名と片仮名の使い分け、というのは初めて知った。
文書での仮名の使用において、カタカナは圧倒的に少数派だとか。
近世になると助詞に使われる程度だったカタカナは、「文書の世界では基本的には口頭でいわれた言葉を記す文字」であったらしい。
文字の持つ機能や意味といったものが非常に意識されていたんだろうね。
他のテーマについての講義も抜群におもしろい。
個人的には、網野の天皇制度に対する態度には全然賛同しないんだけど。
でも本のおもしろさは間違いなし。中世史をかじろうとする人にオススメの本。
一緒に買った『続』の方も楽しみ。