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19世紀末のロンドンを舞台のシリーズ1作目。
1890年晩秋。
市警察のジョゼフ・ブラッグ部長刑事は、仕立ての良い服を着た若者の入室に、ぽかんとする。
実はこれが、新任のジェイムズ・モートン巡査。
彼の考えた私服というのは高級すぎるので、すぐにもっと庶民的な服を買いに走らせることに。
モートンはケンブリッジを出ているのだが、既に交通整理などを勤めた後で、本人のつもりでは至って真面目に仕事に取り組んでいるらしい。
ロンドンの高架下で、アーサー・ポッターという男が殺された事件を捜査することになる。
海運会社の平凡な社員で、そんな所を歩いている理由もない。
ただの追いはぎにしては様子がおかしい。
遺された妻デイジーは寄る辺もなく、痛ましく思うブラッグ。
会社で何かが起きていたと睨んだモートンは、社長のクロスを尾行し、愛人の女性ベラに近づいていく。
ブラッグは、モートンのやり方を危ぶむのだが。
お金持ちのお坊ちゃんがそういう女性に近づくのは、ある意味珍しくないことなのかも。
張り込みに劇場へ行くときに、旧友で株式仲買人のデントンと一緒だったりして、このデントンがまた調子のいい男なので、素人探偵コンビのような優雅さ。
たたき上げの硬骨漢ブラッグが見る目には、モートンはのびのびと育ちが良すぎる雰囲気。
このギャップがユーモラスに描かれます。
実はモートンは社交界が苦手ですぐ退屈してしまい、やりがいのある仕事を求めていた。
広大な敷地のある屋敷に住み、父親は元軍人で、ケント州統監という堅物。
跡継ぎは長男で、モートンは今は口を出せないのだが、兄は傷痍軍人なので、いずれは次男の彼が跡を継ぐことになるだろう立場でもある。
歴史物としてはやや薄めなので、気軽に読めるかも。
その分、主役のエピソードなどは小出しで、次回に続く?っていう感じですが。
作者は、1928年生まれ。
長く内国歳入庁に勤めた後、投資コンサルタント会社の重役に。
1982年から小説を書き始めた人。
それで金融関係のミステリなんですね。
シリーズはずっと続いているようです。
本作は1983年の作品で、1991年翻訳発行。