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1988年、サクラメントで私営の老人ホームの庭から7人もの遺体が掘り出され、経営者の老婦人が逮捕された…
という事件のドキュメンタリー、犯罪実録本。でも、いわゆる「恐怖の館」のシリアルキラーを期待すると、かなり趣は違って、そもそも本の刊行時には容疑者の公判も始まってないので、彼女が殺人者なのかどうか、断定もしていない。地元の新聞記者である筆者が、彼女と個人的な知り合いであるのも影響してるかも。
むしろ周囲の人、ソーシャルワーカーや警察が、どう動いて、事件が発覚するに至ったか、ということが語られる。
要は、これは、昨今日本でも話題になってる、生活保護ビジネス犯罪についての告発なんだ。
容疑者にとって、被害者は、カネを毟る作物でしかない…それが題名の意味。彼女が筆者に言ったという…「どうせあの人達は既に死んでいるようなもの」…この言葉が、象徴しているようにも思う。
そして、作者の筆鋒は、彼女の犯罪を可能にした社会制度への批判、そういうふうに法制度を変えたレーガン・ブッシュの共和党政権にも向かう。
レーガンて、日本ではあんまり評判良くないけど、アメリカでは不思議と、歴代大統領でリンカーンと双璧なくらい人気なのだよね。それは、富裕層偏重して彼らを富ませたから、かも知れないが、そのしわ寄せは確実に、社会的弱者に。
福祉行政が性善説で運営されてるから犯罪や不正の温床になる、てのが事件の背景にあるけど、要は、福祉行政の予算が足りない、キチッと監視する人手がないから性善説に頼るしかないのだよね。
もうちょっと世慣れた市職員の「福祉施設を運営しようとする人にロクなヤツがいない」というのは切実だ…にしても、給付金の20%が不適切て見積はヒドイなオイ。