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hontoレビュー

夏の葬列(集英社文庫)

夏の葬列 みんなのレビュー

文庫

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みんなのレビュー45件

みんなの評価3.9

評価内訳

45 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

背筋が凍るほどの恐怖に因果応報を知る

2011/08/15 08:44

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

忘れられない一冊というものがあるように、人生においても忘れられない人、忘れられない思い出、忘れられない「罪」というものがある。
あなたにとっての忘れられない時は?と聞かれて、一昔前、ましてや夏のこの時期に問われれば大半の人が戦争と答えたのではないだろうか。
「戦争を知らないこともたち」がほぼ大半となった現在では、半年前の関東東北や阪神淡路大震災がそれにあたるよう移行しているのかもしれない。

生き死にを左右する異常な世界の非常時に、人は基本的には本能的に己の命を守ることを第一優先にするだろう。肉親や愛する人でもない限り、目の前の他人よりも自分の命、共に助かるかもしれない可能性よりも自分ひとり確実に生き残る確実な選択肢を取るに違いない。
この物語は親しい「お姉さん」を見捨てて銃撃から一人逃げ隠れて生き延びた、そしてその罪に蓋をして安穏な人生を送ってきた男が 数十年後の帰省でその場その瞬間をフラッシュバックし罪悪感に苛まれるという物語である。いや、それだけではない。
その忘れていた罪悪を思い出させられて尚、都合のよい解釈と自己弁護で再び何もなかった日常に戻ろうとしたその瞬間、さらにより大きな罪悪の連鎖を負うはめになるという、むしろホラーに近いものがある。

私はこの物語をおそらく中学の夏、教科書で読み知った。
まだ純粋?であった当時の私はひたすら罪から逃げようとする彼への単純な非難を覚え、最後のオチにゾクリと恐怖したものである。
年を重ね、程度の差はあれ様々な「罪」を重ねて罪悪感を隅に追いやりつつ日々を生きる大人となった今、改めてこの物語を読みどう感じるか。
この物語を子供はもちろんだがそれ以上に大人に読んでいただきたい。

人は幸福な時よりも不幸な時をいつまでも引き摺る皮肉な生き物で、善幸よりも罪悪を覚えている、そのくせ表面上は嫌なことをさっさと忘れる因果な生き物である。 
因果応報。
人が報いを受ける時とはどのようなものなのか。
あの時とは違い数倍の、背筋が凍るような恐怖を覚えつつこの物語を私は読んでいる。

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紙の本

自分の心の翳をふいに垣間見たとき

2004/07/27 17:31

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:土曜日の子供 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あるひとつの出来事からフラッシュバックする過去の記憶。それによって封印していた自分の気持ちと図らずも向き合うことになる。触れたくはなかった自分の心の暗部。そのときの気持の動きが正直にありのままに描かれる。
 自分自身も似たような気持になった出来事を思い出す。主人公と同じように罪悪感を感じたり、少しでもそれを軽くしようといい方に解釈しようとしたり…。
 やるせないけど先に光明がみえる話もあるし、ちょっと煮え詰まった感じになるものもある。
 何気ない日々の生活の中で、ふと自身をみつめる瞬間。ふだんは意識していなかった自分の本心。突然あふれ出した想いを書き留めたもの。文章が音楽のようにキレがあって、表情が豊かだ。一篇の詩のようでもある。古さを感じさせない文体であり、身近な日常生活の場が舞台になっていて、とっつきやすいのだが、文学作品を味わっているという気分が終始漂う。そういう意味で純文学は堅苦しいというイメージを持っている人や、活字から遠ざかっている人にでも、抵抗なく読める。
 閉塞状態からの脱出を求めての葛藤。青年期の、戸惑い迷い抵抗する気持。
繊細で多感な主人公の心中。悩み葛藤しながらも折り合いをつけようと、現状を納得しようとする。たとえそれが一時の心の安定であったとしても。
 海が出てくる。空も街並みもそのときの主人公の心象風景を映し出しているように思える。
 夏の日の昼下がり、ちょっぴりアンニュイな気分に浸りながら読むのが、ぴったりくるような作品集である。

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紙の本

日本文学界の<隠し玉>とも言うべき夭折の作家の短篇集。人生の残酷を都会的に描き、読む者を濃い暗闇に対峙させる短篇の数々。

2002/02/08 10:52

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 夏に生まれたからかも知れないけれど、タイトルに「夏」という字が見えると気になる。それを除いたとしても、子どものときの夏休みというのは誰の人生にとっても大切な時間のかたまりだったと思うし、人が狂気に一番近づくのが夏という季節ではないかと思うから、放ってはおけない。
 といっても、「夏」のつく本を沢山知っているわけではない。真っ先に浮かんでくるのはアーウィン・ショーの『夏服を着た女たち』で、搾り立てのグレープフルーツジュースのようなあの爽やかさ、ほろ苦さは忘れ難い。子どもが登場するものなら、『夏の庭』『オグリの夏』も良かったなあと思い起こされる。
 夏至祭関係では『真夏の夜の夢』『夏の王』という、ケルト的な香雅が捨て難い。魔法の力が最も高まるシーズンでもある。いずれも、冬があるから生まれてくる、四季のある国の文化遺産だ。万年真夏の熱帯じゃ、こうはいかない。

 山川方夫という作家の名は、堀江敏幸さんと群よう子さんの著書に教えてもらった。年季の入った本読みの方たちには、一般の人の目ではあまり届かない<隠し玉>がしかと捉えられ、こっそり本棚に格納されているんだ…と思わされるような存在である。文芸評論家の奥野健男氏が、「梶井基次郎や中島敦のような永遠に敬愛され繰り返し読まれるマイナー・ポエットの位置を未来に得るのではないか」と言ったそうである。
 ならば高校の教科書あたりに出ていてくれてもよさそう。もっと早くに出会えたのに…と思わなくもないが、この短篇集を読んだだけで、教材に採択されないであろうことはよく分かる。暗いのだ、簡単に言ってしまえば…。これから広く荒い社会へ向けて旅立とうとする若者たちに、積極的に進めるべき小説ではないという判断がなされたのは分かる気がする。

 空襲があった夏の日、真白なワンピースを着た少女に向かって吐いてしまったたった一言が、主人公の一生の後悔を引き摺り、更に新たなる後悔をも生み出してしまう表題作「夏の葬列」は、この文庫本でわずか11ページに満たない。ボリューム的には教科書向けだけれど、読後のこのやるせなさはいかんともしがたく、何日かたって沈潜させるに成功したとしても、きっとこの後何回も古傷の痛みのように蘇る。でも、いくつもの経験を経た私は、それがイヤだ、不愉快だとは思わない。楽しい思い出や幸せの記憶同様、財産として抱えていく器量が既にできたと自負しているから…。
 しかし、こういったものをさーっと書き終えたあと、35歳で早世した山川方夫の人生とはどういうものだったのか。この人は、私たち読者のために代りに傷を受けてくれたキリストだったのかもしれないとも思えてしまうのである。

 山川方夫という作家を知らない人のために書き出すと、この人の父は日本画の山川秀峰。伊東深水などと日本画壇を引っ張ってきた人。幼稚舎から慶応の「ぼん」として育った方夫(これはペンネームだけど)だが、14歳で父が亡くなり、女きょうだい4人にはさまれた彼は家長となる。経済的な苦労が始まる。大学在学中に「バンドの休暇」など都会的な雰囲気の小説を発表。
 卒業後は「三田文学」の編集者となるが、何とここで学生だった江藤淳に『夏目漱石論』を書かせて文壇にデビューさせる。他にも曽野綾子、谷川俊太郎、佐藤愛子、遠藤周作、安岡章太郎らが誌面をにぎわせ、方夫は彼らに書かせるために自分が小説家として立つのが遅れたとも言われている。やはりキリスト?

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2004/10/14 23:35

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2005/09/28 08:03

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2005/08/23 12:50

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2009/10/22 00:54

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2006/07/21 11:02

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2007/02/13 17:59

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2007/07/13 00:03

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2006/10/15 19:33

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2008/06/28 22:38

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2007/01/20 18:23

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