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(2008.11.28読了)
1977年3月、マヤ・アステカ・インカの旅に参加しました。その前後に、中南米関係の書籍を集め、何冊かは読みましたが、多くは積読になっています。
その積読本のなかにル・クレジオの関係した本が三冊入っています。
「マヤ神話 チラム・バラムの予言」「チチメカ神話 ミチョアカン報告書」「メキシコの夢」です。
「マヤ神話」「チチメカ神話」は、ル・クレジオがメキシコに足を運んで採取した神話をフランス語で、まとめたものでしょうか?読んでみないとわかりませんがル・クレジオの創作でないことは確かです。
訳者あとがきに内容がまとめられていますので、拝借させてもらいます。
「メキシコの夢」は、カスティーリョ「メキシコ征服記」、サアグン「ヌエバ・エスパーニャ事物全史」、「チラム・バラムの予言」、「ミチョアカン報告書」を軸に、多くの文献を駆使しながら、滅ぼされた民族の「沈黙」のなかからメキシコ古代文明の姿を浮かび上がらせる、ものです。(294頁)
「ル・クレジオが挙げている宗教、哲学、芸術をはじめ天文学、薬草学、都市計画など、ヨーロッパ文明の未来に大いにプラスするものをインディオの古代文明が有していたことは事実である。だが当時のヨーロッパ人の眼には、その文明は悪魔の所業としか映らなかった。」「文明論的に考えれば、この二つの文化圏の内容は相補うべきものが多くあったに違いない。」(294頁)
●インディオ文化の消滅(250頁)
沈黙は限りなく、恐ろしい。それは1492年から1550年までのインディオの世界を飲み込み、無に追いやった。活気に充ち、変化に富み、人間の歴史と等しいほど古い知識と神話を相続した原住民の文化は、一世代のあいだに埃となり、灰となった。ヨーロッパ人によるアメリカ大陸征服は、敗北した諸民族の思考、信仰、魂に至るまで徹底的な入れ替えを行って完璧に打ちのめした文化変容のおそらく唯一の例であろう。宗教、伝説、慣習、家族あるいは部族の組織、芸術、言語から歴史まですべてが、ヨーロッパから押し付けられた新しい鋳型に場所を譲るため消え失せなければならなかった。
(ル・クレジオは、インディオ文化を掘り起こし、ヨーロッパに不足しているものを補えないかと考えているようです。)
ジャン・マリ・ギュスターブ・ル・クレジオ
フランスの作家
1940年4月、フランス南部ニース生まれ
父は英国籍、母がフランス籍
ブリストル大とニース大で文学などを学んだ
1963年、初の長編小説「調書」がフランスの文学賞ルノード賞を受賞
1967年、義務兵役代替の教授職をメキシコ市のラテン・アメリカ学院大学で果たす
1970年まで、毎年、秋から冬にかけて、メキシコに滞在
1974年、ユカタン半島メリダに長期滞在
1980年から、ミチョアカン州の大学院大学の客員教授
2008年、ノーベル文学賞受賞
(2008年11月30日・記)