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紙の本
青木昌彦という知性
2007/09/25 11:50
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
青木昌彦という日本有数の経済学者が、実は東京大学の学生時代、共産主義者同盟(ブント)の指導者だったということをご存知だろうか。そのお陰で、彼は米国のブラックリストに載っていて、スタンフォード大学に教授として招かれてもビザがなかなか下りなかったと苦笑しつつ述懐している。彼の偉いところは、若いとき反体制運動・共産主義運動に一旦はのめり込んでも、やがて共産主義という間違った思想の欠点を正確に見抜き、見事なまでに反体制運動や共産主義と決別している点であろう。共産主義から離れていって理由について青木は本書で「マルクス主義の知的貧困」につくづく愛想が尽きたからだという。こういう人は珍しい。全学連運動に身を投じた西部邁のように左翼から右翼に180度方向転換したもの、あるいは森田実のように政治評論家に身をやつした者など、その後の経路は様々だが、彼らに共通するのはいまだに強烈な「反米ナショナリズム」を維持そていて、アメリカに敵愾心を燃やし続けることのみをほとんど唯一の生きる支えとしていることである。その後に起きた全共闘運動はもっとひどい。軽佻浮薄な四方田犬彦、矢作俊彦のようにひたすら「元秀才の自己差別化」に血道をあげるもの(俺は頭が良いんだ症候群)もいれば、嶋泰三のようにいまだに己の犯した過ちを認めようとせず鬱々と日々を暮らしているものもいる。こんな連中ばかり見てきた私にとって、青木の知的正直さ、アメリカの強さ・日本の強さ(それぞれの弱さをも)きちんと正面から受け止め理解できる人の存在はある意味で救いであった。本書の圧巻は、湾岸戦争に従軍した元アメリカ兵たちがハイテクの素晴らしさ、チームワークの素晴らしさを戦場という極限状況下で知りぬいた「リーダー予備軍」たちが、やがてアメリカの日常生活に戻っていた時に、アメリカ社会に与えるであろう数限りないプラスの効果を予測している点である。日本では「アメリカでは戦争になると貧困者、黒人をはじめとする有色人種にしわ寄せが行き、社会の断裂が深まる」式の週刊金曜日が好きそうなステレオタイプの記事のみが幅を利かせていることに反発を覚えた青木が書いた湾岸戦争のプラスの効果に関する考察であるが、その後の経過を見ると、どうやら青木の考察は当たっていたように思えてならない。
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