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1991年に刊行された嵐山光三郎氏の短編集
。
内容説明には、現代の怪談十話、とありますが、怪談、というより、昭和風に言うと「奇妙な味」の作品集。
どの作品も多かれ少なかれ、かなり、変。
本のタイトルから怪談を期待したのに思っていた内容と全く違うし、どの作品も感動には程遠い、不思議を通り越してヘンテコリンな作品ばかりですが、なぜか嫌な読後感がない、ということが、不思議です。
以下、各作品の簡単な感想を↓
「散歩」
映画『異人たちとの夏』からの影響が余りにも大きいノスタルジック怪談。
死地をさまよい、死んだ父に会う、というノスタルジック部分をバッサリカットしてショートショートで書かれたら、だいぶ違った印象になったと思います。
「G街の幽霊」
新宿ゴールデン街を舞台に、誰が生きた人間で、誰が死んだ人間なのかわからない世界を描いた一編。
地上げ屋に立ち向かう幽霊、という全く怖くない幽霊を描いたユーモア怪談です。
「睡眠王」
18年間働いていた会社を解雇された営業マンが、失業中、連続する夢の中の世界でも営業マンとして働こうとする物語。
夢の中なのに、必死に働こうとする男の姿が哀しい一編。
「蛙女」
女も男も抱く両刀使いの歌舞伎役者を中心に三角関係を描いた一編。
そこに、蛙、蚊、という生き物への生理的嫌悪感を加えて、ホラー仕立てにしています。
毒蚊に刺されてできた腫れ物への嫌悪感と、毒蚊を飼うという人間の怖さもありますね。
「ランドセル地蔵」
多くの地蔵像が並ぶ山中を舞台に、妻と愛人との戦いを描いた一編。
愛人と、既に死んでいる妻とが、共に霊力が強く、霊力合戦となるという不思議な展開。怪談ともホラーとも言い難いですが、女の怖さは伝わる話です。
「即身仏」
山に登ったまま行方不明になった夫を探して山寺にたどり着いた女が、夫によく似た即身仏を見つける物語。
基本的には、田舎に行ったら怖い目にあったというタイプのホラーですが、そこに男と女の愛憎を加えたにエロティックな一編に仕上がっています。
「発狂公園」
タイトルはヤバめですが、奇想天外な、ホラーとも言えない一編。
公園の管理課職員、公園一帯の清掃夫、公園を売りに出し、再開発をしようとする権力者。
彼らが皆、樹木が人間を殺せて当然、という認識がある、という不思議な世界観が描かれます。
「饅頭」
古代食を求めた中国ツアーを描いた
一編。
まじないをテーマにしていますが、ホラーでも怪談でもなく、文芸的な仕上がりになっています。
「生き霊」
こんなタイトルですが、ホラーではなく、出版社社長が、生き霊を飛ばして中東テロリストと戦う、という、すこし不思議なスパイ活劇となっております。
「盲目旅行」
ふとした出来事で、片目に怪我をした男が、その怪我をした目で、男の守護霊である幼い頃に事故死した兄が見えるようになるという物語。
現実か幻想かわからない物語が、ブラックユーモアを交えながら繰り広げられます。
この作品集で、���番怪談寄りなのではないでしょうか。