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声の文化と文字の文化

声の文化と文字の文化 みんなのレビュー

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紙の本

きわめて示唆に富んでいる本、参考文献を芋ずる式に追いかけてきた甲斐あり

2003/07/06 20:37

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ことばとその表現手段との関わり、および、そうしたかかわりが人間の考えに及ぼす影響が、著者の関心の中心である。著者の研究は、とりわけ文字文化の問題に歴史的に接近しようとするとき、その洞察力と包括性において、きわめて示唆に富んでいる。本書における著者の関心は、声の文化と文字の文化との間にある心性の違いについてである。
 文字の文化にどっぷりと浸かっているわれわれには、文字のない声の文化というものが理解できない、とのこと。文字を書く事、書いた文字を読む事を全く知らない人びとは、思考や記憶の仕方さえ違うものだという事などは、思いも及ばなかった。
 我々は知らず知らずのうちに、文字に慣れた我々が自らの思考や表現を理解するような仕方で、そうして声の文化における思考と表現を理解してしまうのである、とのこと。
 第一章から第三章では、こうした声の文化に対する我々の偏見と、そうした偏見なしに見た声の文化の心理的力学がいかに我々の文化と異なっているか、という事を述べる。第四章は、多くの道具だてとそれらを使いこなすノウハウを必要とする、「書くという技術」が歴史の中に登場したとき、我々の意識の中で何が変わったかという事を、主題とする。第五章では、声の文化が聴覚と時間に規定され開放されており、文字の文化が視覚と空間に規定され閉じられている事が、論じれる。第六章は、言語芸術に現われた声の文化から文字の文化への移行を、物語を例にとって説明している。最後の 第七章は、今日の文学理論や哲学理論において、声の文化と文字の文化の問題がどのようにとりあげられているかを概観する。
 自分自身を知るという事が、人間にとって大きな課題である。自分が属している日本というものを知りたくて日本論/日本人論をいろいろ読んできた。そして日本語にも関心が深まり(英語ができなくてせめて日本語だけでもまともになりたいと)、その延長で言語関係にも関心が向いてきた。そしてこの本に辿り着いた。次々と参考文献を追いかけたかいがあった、というものである。

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