紙の本
内心は分かっているのだろうが
2022/02/28 01:28
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トロツキーなりにスターリン主義体制を分析して批判しているが、書名は有名な割に意外と深みがない。結局は彼自身が体制を生み出してしまったのだから、スターリンと彼の側近達、党官僚達による失政だと主張するしかないのだろう。
ソ連邦元帥の襟と袖口に大きな星の階級章を制定した事を揶揄しているが、そういう彼自身が赤軍の軍装に赤旗勲章を佩用していたではないか。
付録に1918年に入党した「右翼反対派」で亡命した人が反共的な新聞に寄稿したトロツキストについての記事を紹介している。古参党員なのに党に幻滅してソ連から亡命出来たものだ。「ロシア革命史」では入手出来る限り、ソ連で出版されたものであれ、亡命者が書いたものであれ使っているのに、同時期のソ連を描くのに使える史料となると、ごくたまにいる亡命者が書いた手記を除くと、ソ連で発行された公式出版物、外国のスターリン主義者やソ連崇拝者が書いたものに限られてしまうのだろうか。
少なくともトロツキーは彼なりにスターリンを告発し、スターリンの「実践」を批判していたという事実が重要だ。トロツキーの本の価値は、そこにあるのだから。
実際は「亡命日記」でフランス警察に逮捕された時に備えて?、ツァーリ一家がレーニンの命令で銃殺された事を書いてしまったのは、ソ連に残った息子のセルゲイなどが「トロツキーの家族」として待っているであろう運命が、どこで生まれて、どこから来ているのか、内心では分かっていたのではないか。ボリシェヴィキがジャコバンを崇拝するあまり、自己陶酔して「理性の崇拝」こと自分を神格化したロベスピエールなどがマルゼルブを弁護士としてつけただけボリシェヴィキの公開裁判よりはマシな見世物裁判にかけてギロチンにかけた「ルイ・カペー」ことルイ16世と「オーストリア女」マリー・アントワネットを殉教者にしてしまった教訓を引き出せなかったのだから。ケレンスキーは理解していたのに。
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トロツキーが1936年に出版したスターリン体制の批判書である。工業生産の成長については、質までふくめた指標を提示し、経済発展の指導については、戦時共産主義・市場を復活した新経済政策(ネップ)、五カ年計画の歴史を概説しています。社会主義は労働生産性の高い豊かな社会の上に建設されるのであって、その点で大多数がまずしいスターリン体制は社会主義ではないとしています。ソヴィエト・テルミドール(反革命)を指摘した部分では、ボリシェビキ党の変質や、格差の増大を論じ、ソ連が官僚独裁制であることを宣伝しています。トロツキーの分析は家庭(とくに妊娠中絶権をソ連が禁止したこと)や青年の教育、民族政策、赤軍の理論にも及び、官僚独裁制によって、十月革命が退歩させられていることが暴き出されます。最後は、プロレタリアートの世界革命にもとづいた、官僚専制やボナパルティズムに対する革命の必要性をよびかけています。社会主義の傷ましい失敗を知る上で、重要な著作だと思われます。とくに官僚の害悪を指摘した部分は、レーニンによる「国家の死滅」の問題もふくめ、プラトンの『国家』や中国古代思想の統治論の問題へ引き戻されます。
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もともと「ソ連はどこへ向かうのか?」という題名であったが、いつの間にか「裏切られた革命」という名前に変えられた、が、トロツキー当人も追認した名前である。
追放されたトロツキーの愚痴といえば愚痴なのだが、とにかく「ロシアの後進性」に力点をおいて説明している。元々資本主義が発展していないロシアでは、「共産主義」であろうと「資本主義」であろうと、そもそも「モノ」がないのである。商品がない。それなのに革命?とトロツキーは思ったのかも知れない。それが故にソ連では「おいつき、追い越せ」というスローガンのもとで発展をした。しかしこれは資本主義ではないか?のようなことをトロツキーは云っている。また官僚に関しても、痛烈な批判を浴びせているが・・・。
とはいえ、なんだか、理論を実際に体現するのが困難であることも示しているように思える。
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腐敗した官僚の勝利、官僚に祭り上げられたスターリンのボナパルティズムが革命の失敗を意味する。建前として共産主義をとっていたとしても、資本主義型の収奪ヒエラルキーが組織されており、それで運営される「共産主義」はその理念と大きく矛盾する。そして、その組織の指導者は官僚に都合のよい人物が選ばれ、―そのスターリンは歓声の中で指導力を発揮し―腐敗した官僚主義がはびこる。理念との矛盾する組織運営がソ連を崩壊に導いていると警告する。
本書ではソ連がいかに傾いているかという事の証明は、主にデータとでなされる。バーナードショーが称賛した如く、大恐慌の中全体の数字だけ見れば安定した成長を遂げていたソ連。しかしこの時点で、客観的に問題が指摘できるまでに腐敗が進んでいたのだ。
トロツキーが「経済の民主化」を要求している点を強調しておく。共産主義=スターリン主義というイメージが支配的であるが、そういうことではないとわかる。共産主義のためには「民主的」と言う意味での自由な経済が必要だというのである。
そして「経済の民主化」と言う言葉は、現状の自由主義経済に対する最も根本的な批判になるのではないか。なぜなら「経済の民主化」とは自由主義も理念とするところであり、しかも、ほとんど達成されていないものであると私は考えているからだ。
何故理念と矛盾する現状が存在するのか。そしてその矛盾が体制を崩壊に導いていくのではないか。トロツキーの批判はなお鋭い。
本書を読むにあたり常に念頭に在るのは「ソ連は何故崩壊したのか」ということである。崩壊を導いたのは共産主義の理念ではなく、むしろ組織の問題であると本書からは理解される。つまり、トロツキーが明らかにするソ連の「失敗」は、どんな理念をもつ国にもその可能性があるということである。私としてはこの視点が、(共産主義ラブとか資本主義ラブとかそういう話ではなく)イデオロギーを超える、ということの意味なのではと思うのだが。
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原書名:Что такое С.С.С.Р.и куда он идет?(Троцкий,Л.)
本書の課題◆なにが達成されたか?◆経済の発展と指導のジグザグ◆社会主義と国家◆労働生産性のためのたたかい◆ソヴェト・テルミドール◆不平等と社会的対立の増大◆家庭、青年、文化◆対外政策と軍隊◆ソ連とはなにか?◆新憲法の鏡に映ったソ連◆ソ連はどこへ行く?◆一国社会主義◆ソ連の「友」
著者:レフ・トロツキー(1879-1940、ウクライナ)政治家・革命家・思想家
訳者:藤井一行(1933-、宮城県大崎市)〈政治学・ロシア思想〉[東京外国語大学ロシア語科→一橋大学大学院社会学研究科]富山大学名誉教授
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[ 内容 ]
この著作は、ソ連成立当初の諸理念がスターリン体制によっていかに変質させられたかを究明するとともに、第二の革命をよびかけたソ連研究の古典。
自由選挙、複数政党制、経済民主主義の問題等今日も示唆に富む論点が提起されている。
[ 目次 ]
1 なにが達成されたか?
2 経済の発展と指導のジグザグ
3 社会主義と国家
4 労働生産性のためのたたかい
5 ソヴェト・テルミドール
6 不平等と社会的対立の増大
7 家庭、青年、文化
8 対外政策と軍隊
9 ソ連とはなにか?
10 新憲法の鏡に映ったソ連
11 ソ連はどこへ行く?
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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ブックオフで奇跡的に出会えた本、ソビエト連邦の関連書籍を探してた為通読。
如何にして、マルクスが打ち出したスターリンによって歪曲化されゆくのががよくわかる本。
理想と現実…そして改善点…、革命について語るためには必読だど思いたい。