紙の本
今読んでも生き生きとしていて感動的
2002/06/06 23:52
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んだ事はなくても、名前を知らない人はいないだろう。ギリシア神話のトロイア戦争をテーマにした、約3000年前の大昔の叙事詩で、西洋文学の原点。話のタネ程度にしか期待していなかったのだが、読んでみて驚いた。とてもおもしろいのだ。確かに読みやすいとは言えないし、欠点を挙げればきりがない。それでも、今読んでも生き生きとしていて、感動的である。
ホメーロスはギリシアの詩人で、物語は当然ギリシア寄り。にもかかわらず、敵方のトロイアを“悪の枢軸”とは描いていない。それどころか、ギリシアの英雄たちが若干ステロタイプなのに対して、トロイア側の人々(第1王子で総大将のヘクトール、その妻アンドロマケー、戦争の原因を作った王子パリスと絶世の美女ヘレネー、老王プリアモス等)の方が、生き生きとしていて人間的に感じられる。だからこそ本書は、滅び行くものを悼む悲劇として心に響き、はるかなる時と場所を越えて読み継がれているのだと思う。
なお本書は、トロイア戦争の最初から最後までを描いたものではない。ギリシア側の主役の英雄アキレウスと総大将アガメムノンとの、戦争の途中での仲違いという、中途半端と思える箇所から始まっている。また、戦争の遠因である3人の女神の美しさ比べ(パリスの審判)や、直接の原因であるパリスとヘレネーの駆け落ちは、当然知っているものとされているので、それらの予備知識がないと辛いかもしれない。何らかの予習をお勧めする。私が使ったのは、ブルフィンチの「ギリシア・ローマ神話」だが、トロイア戦争の全容に加えて、「イーリアス」はここから始まると、アキレウスとアガメムノンの仲違いの背景の説明もあり、おかげで非常にわかりやすくなった。
本書には、戦争の終結部分(アキレウスの死、トロイアの木馬、トロイアの陥落)も描かれていない。読む前は正直なところ不満に感じた。だが、クライマックスのアキレウスとヘクトールの対決は最高に盛り上がったし、またフィナーレのヘクトールの葬送には、トロイアの滅亡を暗示する、しんみりとした味わいがあった。だまし討ちという盛り上がりに欠けるアキレウスの死や、陥落の血なまぐさい殺戮よりも、本書の終わらせ方の方がずっと良い、と今では思っている。
なお、木馬のエピソードが詳しく書かれているのは、トロイアの戦士アイネイアースの戦後の冒険を描いた、ウェルギリウスの「アエネーイス」である。また、トロイア戦争の全容を簡単に知りたければ、サトクリフの「トロイアの黒い船団」も役に立つ。ご参考までに。
紙の本
2700年前のダイナミクスを感じてみませんか?
2005/09/23 11:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に愉しめました。初めは登場人物の,独特の呼称に戸惑いましたが,それに慣れると,巧く物語の流れに乗ることが出来ました。文体は特有のもの──比喩の多用など──で,その好みが分かれる所だ,と思いますが,私は,すっと入り込むことが出来ました。これには,訳の助けが大きかった,と思います。他の訳を読んでいませんので,比較は出来ませんが,松平氏のこれは,口頭詩の雰囲気を,良く出していて,巧い,と感じました。後,訳注の所々に,ヒューモアが見られる点も良かったですね。
「ホメロス伝」は彼に対して特別な興味を持っている人には面白いかも知れません──と言った程度のものです。本当に,お負け,と言った感じですね。■
紙の本
壮絶な戦い
2023/08/07 05:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アカイアとトロイアの壮絶な戦いを描いた叙事詩の前半。
藪から棒に話がはじまるので、なにかしらの話を知っているのを前提っぽいのだけれど、その話がなんなのかがわからない。
だいぶ古めかしい表現が多いけれど、その辺を楽しむのもいい。
紙の本
ギリシャ神話の神々登場
2023/01/08 06:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
トロイア戦争最後の一日。英雄アキレウスが中心。キャスト:ゼウス・ヘラ・ポセイドン・アテナ・ヘルメス他。豪華絢爛。
投稿元:
レビューを見る
映画トロイの原作ということで買ってきたが、こちらは戦争はじまって10年位の所からのスタート、神々がやたら介入してくる、それはそれで面白いが、戦いの最中に一々英雄の生い立ちなどが語られるので、話が進まない、好きなキャラ以外はだんだん読むのが辛くなってくる
投稿元:
レビューを見る
上下巻。
上巻はあまりにも長々と話が続くので、集中力の足りない私のようなものには辛い。色々と人物についての挿話が入るのがギリシアのお話らしいといえばそれまでだけれど・・・。
下巻ともなれば話は格段と面白くなる。特に後半の英雄達と神々が入り乱れての戦闘は、これぞギリシア神話!という印象がある。
どんなに集中力が途切れ、だらけていてもこの部分には引き込まれてしまう。さすがは古典。
投稿元:
レビューを見る
ギリシア文明が誇る一大叙事詩。
トロイア戦争を題材に、神々をも交えた英傑たちの戦いを描く。
・・・のだが、何ともまぁ退屈でして。
登場する人物は、大体みんな勇猛果敢で力が強く、直情的。
神様は大体みんな自己中心的で、直情的。
登場人物は多いのに個性があると言えそうなのはほんの数名で(アキレウス、オデュッセウスなど)あとは名前が違うだけの無個性な存在。
その上、延々繰り広げられる戦闘描写は「誰々が何某を倒した。この何某はどこそこの出身で~」といったパターンの繰り返し。
この繰り返しも一応は「詩的な効果」を狙ってのことだそうだが、日本語に訳している時点でその効果も薄らいでいるわけで。
しょっちゅう入る神々の茶々も、似たり寄ったりのパターンの繰り返し。
この次に『オデュッセイア』も読もうと思っていたけど・・・、さすがに暫く遠慮したくなってしまった。
投稿元:
レビューを見る
アキレウスとアガメムノンと戦利品の女性をめぐる対立。ギリシア軍を襲う疫病。戦闘への参加を拒否し自分の船に引き籠るアキレウス。メネラオスとアレクサンドロスの一騎打ち。ディオメディスの奮戦。ディオメディス、オデュッセウスの偵察。ドロンの殺害。ヘクトル率いるトロイア勢の猛攻。突破される防壁。
1996年7月18日再読
投稿元:
レビューを見る
現在のトルコ北西部の端にあった都イリオス(トロイ)をギリシャ遠征軍が攻めたという,いわゆるトロイア戦争の様子を伝える叙事詩.もともと口承によって伝えられてきた長大な詩であったが,紀元前6世紀後半ごろ,アテナイ市で詩人ホメロスの吟句が筆写され,この本の元となった.なおトロイア戦争自体は,考古学および歴史学の両面から,紀元前 1200 頃に実際にあったと推定されている.
地中海文化圏での青銅器時代の終わり頃に相当する当時の生活や考え方,身の回りの道具類などに興味があって読んでいるが,「イリアス」の諸描写は細かく,そういった興味に答えてくれる.例えば,第 11 歌 596-617 (前線から戻ったネストルとエウリュメドンが一息つく場面)で登場する盃は,「黄金の鋲が打ってあり,把手は四つ,それぞれの把手の両側に,餌をついばむ姿の黄金製の鳩二羽が造りつけてあり,台座は二重になっている」というもので,これに酷似した盃が実際に発掘されているそうである.また,この時の酒のツマミは玉葱と蜂蜜.酒は葡萄酒を割ったものに山羊のチーズと白い大麦の粉をかけたもの.美味いんだろうか.
人間的エピソードとしては,アカイア勢の王アガメムノンに怒るアキレウスが面白かった.ギリシャ側は,ヘレネを奪われたことに怒って戦争を始めたことになっているが,あろうことか味方,しかも人並み以上に働いたアキレウスに対して,アガメムノンは同じようなことをしたのだと,ひたすらに怒っている(詳しい経緯は語られないのだが,どうも妻を連れ去られたらしい).「厚顔無恥を身に纏ったようなあの男(アガメムノンのこと)にはもういっさい協力しない」と,この随一の実力を誇る英雄は,激しい怒りの表現を惜しまない.
投稿元:
レビューを見る
トロイア戦争のほんの一部。
いきなり途中から始まるので、状況把握にちょっと苦労するかも。
人間と神の自分勝手ぶりを大いに堪能できます。
でもヘクトルはかっこよし。
ただ、神様の異名やらが何の説明もなくバンバン出てくるの(巻末に解説あり)で、予備知識がないと読みづらいかと思います。
投稿元:
レビューを見る
ホメロスの叙事詩
トロイア陥落寸前のアキレウスとヘクトルの戦いを描く。
当時の人々は自分たちに理解できない事象をすべてオリュンポスの神々の仕業だと考えたんだなー感じた。
投稿元:
レビューを見る
トロイヤ戦争最後の50日余りの叙情詩。
なにが恐ろしいかって、注訳含め全432Pで25日くらいしかたってないってことだ・・・
更に注訳参照にしながら読むから、進まない。びっくりするほど進みません(-_-;)
トロイヤ戦争は映画トロイの知識くらいしかなかったけど、思った以上にパリスがへタレてる。
ヘレネにまで死んだらよかったのにって言われちゃうパリスってどうよ(笑)
個人的には、ディオメデスに攻撃されて、ふっざけんな、人間ごときが神に楯突くんじゃねえ!とおっしゃったアポロンの君に脱帽です☆
さすがアポロン!!
投稿元:
レビューを見る
以前からホメロスは読まなきゃと思っていましたが、シュリーマンに触れ必要にかられて読み始めました。これが口承で伝わってきたのかと思うと奇跡ですが、ホメーロスの力はすごいなと見せつけられました。躍動感あふれる古代の英雄、その背後で身勝手に一喜一憂する神々。この対立はどうなんでしょうか。信仰も何もあったものではないと思うのはキリスト教的で、自然の不条理がこのように映じるのだなと持った次第です。
しかしこれ読んで発掘にとりかかったシュリーマンは何者かと思いましたが。
11/10/15
投稿元:
レビューを見る
時代背景などが分かっていないと理解しにくいが、いつの時代もあまり変わらない人々の思いのおかげか、割と読みやすい。
投稿元:
レビューを見る
ホメロスの叙事詩。現代文と比較すると文章が少しだけ読みにくいかもしれないが、「トロイア全史」で全体像をつかんだ後に読むと、壮大で感動的な作品に感じられる。アキレウスが死すべき運命の戦いに向かっていくことの原因となるパトロクロスの死のくだりに涙が出る。