紙の本
シリーズ二作目は無人島生活
2002/02/10 12:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る
一応シリーズニ作目ですけれど、序盤あたりで前作のあらすじのようなものが語られてますので、独立して楽しめる作品となっています。今回は、前作で合流した小人達と失われた故郷「小人の国」を求めて小人一家が海を渡り、辿りついた島が舞台。無人島での生活、揺れる島の謎、妻を亡くしたたちの苦しみ、はなはなとくりな、みんみとゆたの淡いロマンスあり、と贅沢な内容でした。
序盤は島で暮らす小人達の生活描写がメイン。家を建てたり、海岸で保存食づくりをしたり、拾った貝を使ってにわか音楽隊を結成しようとしたり、楽しいエピソードが満載。前作ではおとなしかった少女くりなも、この作品ではいきいきと活躍しています。そんなくりなに惹かれるはなはなの様子もなんだか微笑ましい。あと、印象に残ったのがネズミ達の海わたり。島が揺れて沈んでしまう前にと、海の彼方に見える島に泳いで辿りつこうとする場面があるのですが、次から次へと海に飛びこむネズミ達の行動が心に残りました。
前作同様スッキリと楽しいだけでなく、戦争の暗い影が垣間見えるような記述もありますが、一巻、二巻を読み終えてみると、結局これは戦争という負の遺産を、新しい希望という力で塗り変えていく次の世代(子供たち)の物語なのかな、と感じました。作品の中でまばゆいばかりの光を発する子供達に、作者は平和という願いを託したんでしょうね。個人的にはこの二作目の方がより楽しめました。ラストも壮大。
投稿元:
レビューを見る
和製ファンタジーはなはなみんみ物語の第二巻☆
前作で新たな小人族たちに出会えたはなはな達は、ふたたび小人の国の地を踏もうと住み慣れた森を離れ小さな帆船で海へ出ます。長い航海で仲間を失いながらはなはな達は、ある島にたどり着きます。彼らはその島で家をつくるも地震によって壊されてしまい、またその地震によって船は流されてしまいます。
そんなさなか、なかまの一人きゆばあさんが海底小人隊だった夫の残した詩(ゆらぎの詩)、戦争の最後の方でもこのように島がゆれたこと、水中くぐりについてはなはな達に話してくれます。はなはなは、この島がゆれるのは地の底に何か隠されていてゆらぎの詩はそれを語っているんだ、そのためには海のそこへ潜って突き止めないと!とこっそり危険な水中くぐりの練習を始めます。今回この島でであうのはねずみ達。
この島の現実、そして、ゆらぎの詩の真実や、よみがえりの石の秘密、妻をうしなった仲間のたちとほかの小人たちとの葛藤、そしてはなはなとくりな、みんみとゆたの信頼と友情と愛情の詰まった第二作
投稿元:
レビューを見る
1冊目から感じていた違和感がさらにはっきりとしてきた。この作者の言語感覚が好きじゃないんだな。
はなはな、みんみという妙に可愛い名前も「トベリーノ ドンドン」も「魔法”なげる”」もはじめからしっくりこなかったのだが。「スイギー ホーイ」はいやだがそのあとに続く「ズンズン」はもっといや。ドリフか。ひろちゅもいやだし「うなる岩」もいや。「うなり岩」じゃないの?
登場人物がステレオタイプなのもな・・・。人物描写が薄っぺらいんだよ。小人の生活にリアリティがないしな。「床下」みたいな偉大な作品と比べちゃいけないけど。
まあ、これがいい、好き、という人を否定しない。
小学校中学年から読めるファンタジーで、可愛い感じがありながら、けっこう骨太な物語ってあまりないものだしね。
乗りかかった舟だから最後まで読むつもり。
投稿元:
レビューを見る
揺らぎの詩の物語 わたりむつこ リブリオ
こびと版の猿の惑星
人間が自ら自滅を招いた最終戦争で
生き残ったワズカな人間が生まれ故郷に帰り着き
その本末転倒した無益な体験で
知識に溺れた唯物社会の愚かさに気付き
視野を広げた意識による調和の関係に目覚めて
シナヤカな環境を創造していく話
投稿元:
レビューを見る
子どもの頃、大好きだった「はなはなみんみ物語」の三部作。何十年かぶりに実家から持ち帰り読んでみました。
冒険もの、ファンタジーであると同時に、過去の小人大戦争からの再生の物語でもあり、スケールが大きいのです。
魔法や緑の石の秘密も子どもだましなものではなく、大人になって読んでも納得。
三部作の中で、私が一番好きだったのがこの「ゆらぎの詩の物語」。水中くぐりの魔法に憧れて、プールで呪文を唱え、息止め法を試したっけ。本当にできそうな気がするほど、入れ込んで読んでました。
海の中の描写が素敵で、魚のように自在に水中をくぐるはなはなやくりなが羨ましくて。
登場人物がまた良くて、はかなげででも芯のある美少女くりなが好きでした。
小人や動物の仲間たちとの友情と協力、過去を償うこと、乗り越えて未来へ進むこと、色んなことが詰まった物語。
今読んでも内容は古くなく、いつまでも色あせない読み継がれてほしい物語です。
投稿元:
レビューを見る
小人族の生き残りを探し、遥かな海へ家族で漕ぎ出した小人たちは、嵐に巻き込まれ、仲間を失い、不思議な島へとたどり着いた。島は時折激しく身を震わせ、小人たちはせっかく家を建てても壊され、船まで失ってしまう。このままでは小人の国を見つけるどころか、生きていくこともままならない。はなはなとみんみたちは、水中小人隊員だったきゆばあさんの夫が最期に残した「ゆらぎの詩」を頼りに、揺れる島の謎を解き明かそうと、水中くぐりの魔法で海へ探検に出た。
前作で登場した小人の兵器「いかり玉」は、直接手で使用するタイプの武器で、互いに撃ち合い特攻する様子から現実の火薬を想像させた。今回登場する「ゆらぎの柱」は、作り手である小人が滅び、戦争が終わってなお作動し続け、生き残ったいきものたちの生活を脅かし続けていた。さながら地雷ような戦争の負の遺産だ。食糧を得るため、生きるために始まった戦争が、激化するにつれてついには目的を失い、敵を滅ぼすために故郷の大地をも海に沈めてしまう。そんな戦争の恐ろしさ、人間の愚かしさを感じさせる。
今作では男女の愛もテーマのひとつになっている。妻を失ったたちはこころが壊れ、また、はなはなも初めての愛と喪失を知る。愛が目覚めた瞬間のときめき、自分を助けるために相手が命を落とした悲しみ、その両方が優しく穏やかな文体に乗って率直に読む者の心に響く。
戦争をしていた小人たちにも、愛はあったはずなのだ。愛する家族を守るため、男たちは戦争に出たのだろう。はなはなとくりなの純粋な愛を見ていると、一体小人たちはどこで間違って戦争になってしまったのだろうと不思議になる。子供の頃に読んだときは気付けなかったが、ひとたび愛する者を傷付けられ、失ってしまえば、誰かを恨み傷付けなければ心が保てなくなってしまうのかとたちを見ていて思う。それゆえに、戦争はまず、始めないことが肝要なのだ。互いの愛する者を失ってしまってからでは、刃を収めるのは容易ではない。