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「生前には1冊の詩集すら出版されることはなく」「女性詩人の原型」という惹句で手にした本。
ただし、英米詩どころか詩自体に詳しいわけでもないし、そもそもこの詩人のこともな~んにも知らない (^^;) ので、①解説②詩人論③作品の順に読んでみた。
…ところが①②ともよく分からず。①は訳編者によるものだけど、「作詩者エミリー・ディキンスンを主人公にした劇作があること」「ミクロコスモスとマクロコスモスの対比が作風の特徴」「(自身を含め)複数の訳者の翻訳を収録したのは、訳者による語感の違いを味わってもらうため」しか分からんかった。
②にいたっては、冒頭に「偉大な詩は、特に難解な面を持つ必要はない。」とあるが、皮肉なのかこの評論は難解である。分かったことは、ディキンスンの詩はピューリタニズムに裏打ちされていることくらい。
そして、核心の③。これもやはり難解…。生前に出版されていないので、各作品にタイトルはなく、番号が付いている。また、複数の訳者のうち、訳編者の新倉のものが大半を占める。
作品番号400番台前後~900番台あたりは、何かに憑かれたように抽象的・観念的で、現実感・生活感はほとんど感じられず、理解もできないので、俺には心に刺さりにくい。「こまどり」「蜜蜂」「塵」「花」などの自然に関する頻出ワードが、「死」「墓」などの宗教的・観念的な頻出ワードのメタファーとかになっているのかもよく分からない。
これが1000番台あたり以降になると、憑き物が落ちたかのような、何か精神的に開けた風になって、少し馴染みやすくなった。
別の訳者・岡隆夫になると、基本女性ことばになるのでガラッと印象が変わるのが面白い。岡訳には新倉訳にあった抽象性・観念性が比較的薄く、日本語も分かりやすいのでとっつきやすい。両方を読んで比較すると、味わいの違いに大差があるのがよく分かるが、原著者の精神的な位置がどこにあるのか分からなくなる感が-。