紙の本
クラークの長篇第一作
2001/11/24 02:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
クラークの記念すべき処女長篇である。
何億年ものはるか未来、かつて銀河に雄飛した人類は、一面の砂漠と化した地球の一角で最後の都市ダイアスパーにひっそりと隠れ住み、この超絶的な科学技術が実現した、理想郷の心地よい安寧に満足して暮らしている。「外」を異常に恐れる都市の人々の中にあって、アルビン少年は都市の外の未知の世界への渇望に取り憑かれ、やがて都市の外へと旅立つ。そして停滞していた歴史はふたたび動き出し、やがて人類はふたたび宇宙を取りもどす。
クラークらしい壮大なヴィジョンが展開され、読者の眼差しを遠い宇宙へと向けさせる、彼方への熱い想いに満ちた物語である。クラークはこのテーマがだいぶお気に入りと見えて、のちに同じテーマで『都市と星』(絶版である)という作品を書いている。しかし、どちらが良いかについてはいろいろな意見を聞く。
クラークが好きな人はお見逃しなく。
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ずっとずっと未来の物語。好奇心の在り様と、人の行く末をなんとなく思ってみたりしました。未知の世界への好奇心にあふれ、読みながら次の展開がどうなっていくのか、過去に何があったのか、わくわくしながら読み進んでいきました。難しい用語や理屈も少なく、SFが苦手な人も読みやすいのではないでしょうか。
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理想的に思える環境に浸り
新しい興味や欲望も姿を消した世界
過去と未来に目を向けた少年の
世界の殻を破る成長、進化の足跡
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SFというよりはファンタジー色が強め。
「ロカノンの世界」か「ダーコーヴァ」系統が
好きならば面白く感じるはず。
ただ若干癖のある文章なので、
読むのはつらいかも。
でも純粋な少年が知的生命体を求めて旅を続けていく
光景は素敵なんだけどね。
ちょっとSFとして扱うのはつらいなぁ。
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訳がまずいけれど、こっちがいいかな
都市と星の源作。
クラーク自身は書き直しである後発の「都市と星」の方がいいらしいが、私は源流といえるこっちのほうがいいと思う。
プロットは当然「都市と星」に同じ。しかし、個々の情景等の表現が浅い分、主人公にスポットがきれいに当たってテーマが見えやすい。
問題は日本語訳が悪いこと。井上勇って人の手によるのだが、やたら読点が多い上に直訳しすぎてわかりづらい部分が多くてB級の映画字幕の感がぬぐえない。
SFの訳をするには想像力が不足しているんだろう。ミスキャストだと思う。東京創元社はもう少し人選してほしかったと思う。
クラーク作品は、映画のワンシーンのようにその情景が目に浮かぶようなヴィヴィッドな表現が売りの一つなんだが、それが生かし切れていないのは訳が稚拙だからだろう。いい日本語訳で読みたかった。残念。
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数十億年未来の地球にはひとつの街に人類が集まって生きていた。そのダイアスパーという街は周囲をすべて覆われて空も景色も見ることはできなかった。機械とコンピュータにより人類の生活は快適なものであったが、それらの技術はすでに失われていて動作原理を知るものは誰もいなかった。かつては宇宙に進出したが、宇宙人の攻撃を受けて地球に閉じ込められ、なんとか生き残った人々はかつてのテクノロジーを利用して生き延びた。人類は不老不死を手に入れたが、かわりに子供が激減した。このような状況の中で人々は現状に満足し、保守的になっていった。過去七千年で唯一の子供であるアルビンは好奇心旺盛で、町の外に何があるのか、地球が今どうなっているのか知ろうとした。
アルビンはダイアスパーの人気のない場所で碑文を見つけたことから記録保管人であるロアデンの助けを得てダイアスパーの秘密を知ることになった。ダイアスパーの地下には地球上の他の街につながる道が縦横に走っていた。しかし、その道は唯一つを除いてすべて閉鎖されていた。それがリスへの道であり、アルビンはこの道を通ってリスにたどりついた。
ダイアスパー以外に人は生きていないと思われていたが、リスにも人類は生き延びていた。リスの人々は他人の考えを読み、精神を操るすべを身につけていた。ダイアスパーに自らの存在を知られたくないリスの人々は、アルビンに記憶を消してダイアスパーに戻るかリスに永遠にとどまるか選択させた。しかし、その直前に古代都市シャルミレンから手に入れたロボットを用いて脱出し、ダイアスパーに戻ることができた。
ダイアスパーに戻ったアルビンはそこでロボットから過去の情報を引き出した。そこから宇宙船を発見し手に入れた。その宇宙船に乗って七つの太陽の世界にたどり着き、そこで純粋知性体バナモンドに出会った。バナモンドと共に地球に帰還したアルビンは、ダイアスパーとリスの人々とバナモンドを調査し、本当の人類の歴史を知ることとなる。
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「銀河帝国の崩壊」のあと改稿して「都市と星」を発表。「都市と星」を先に読んでしまったので、いくぶん短いこちらは骨格があるような感じ。「都市と星」ではアルビンの父母や、同年代の友人も描かれていて、寿命は一千年で十万年後にまた別な精神で生まれ変わるということだったが、こちらでは父母の記述はほとんどなく、アルビンは何万年ぶりかに生まれた子供ということになっていて、寿命は永遠ということになっている。
1953発表
1964初版 1987.1.23第40版 図書館