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忘れられない「マーン城の喪主」の衝撃!
2004/04/09 16:42
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投稿者:風(KAZE) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブラウン神父シリーズのこの作品集の中では、「俳優とアリバイ」以降の
後半の作品群がとてもよかったです。なかでも感動したのが、
「マーン城の喪主」!
ずしんと心に響く衝撃と感動を受けました。
稲妻の閃光に照らし出される冒頭からラストまで、
話にぐいと掴まれたような気持ちで読んでいきました。
ラストでは、ぐぁんぐぁんと鉄槌で打たれ、
打ちのめされたような感動を覚えました。
「俳優とアリバイ」「ヴォードリーの失踪」も印象に残ります。
この二篇を続けて読んだ辺りからかな、それまでのほほんと
読んでいたぐうたらな気持ちが、俄然引き締まりました。
寝転んで読んでいたところが、むっくり起き上がる気持ちになった
というところです。
おしまいの「フランボウの秘密」も、この短編集を締め括る作品と
して読みごたえがありました。そして、ブラウン神父のことが
ちょっと恐くなりました。神の眼差し、神の慈悲のようなものを
感じて、その辺にぞくぞくさせられたからです。
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神父の役目
2017/05/16 23:45
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「マーン城の喪主」でブラウン神父が司祭とはなんたるかを説くシーンが一番よかったです。決闘に則った戦いで、相手を殺してしまった人物を許すかどうかという問いに対して、みんな許すと言っていたのに、真相がわかると手のひら返し。それでも神父である自分は、だれも許さない人物をも許すのだと、熱く語るシーンは心にしみます。
紙の本
チェスタトンの罠
2004/09/14 23:10
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投稿者:死せる詩人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェスタトンによるブラウン神父譚の4冊目です。プラウン神父譚がトリックの宝庫だ、というのは有名な話ですが、その実我々がトリックだと思っているものは、チェスタトンによって仕掛けられたレトリックの陥穽に他なりません。
私達はチェスタトンが巧みに用意した構成の罠に嵌っているのです。ブラウン神父譚の多くは30ページ前後ですが、この短い物語の中に多数の登場人物が次から次へと、入れ替わり立ち替わりやってきては、あれやこれやと発言します。そして気が付くと物語は終盤にやってきていて、読者は状況すら把握できないままブラウン神父の解決を聴く事になるのです。そういう目で見ると、改行や改段の少ないチェスタトンの文章というのは計算されたものなのではないかと思えてきます。
初読の時は混乱させられた文章も、ブラウン神父の解説を聞いた後に再読するとスンナリ理解できてしまうのですから、それぞれの短編が如何に凝縮されているかが分かります。
本書ではブラウン神父の探偵法が明かされています。それは「犯人になりきったつもりで考える」という事なのですが、これも信者の気持を斟酌する事が得意な神父ならではと言えます。
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ブラウン神父シリーズの中でも特にこの「秘密」は彼の宗教観や犯罪観、人間観といったものが語られていて、おすすめです。
「あなたがたが犯罪を怖ろしいと思うのは自分が到底そんなことはできないと思うからでしょう。私が犯罪を怖ろしいと思うのは自分もやりかねないと思うからなのです」
「あなたがたが人を許すのは許すほどのことが何もないからなのです。〜(卑怯な犯罪を犯した人を私は)許せるとは思いません。けれど私たち司祭はそれを許さなくてはならないのです。それが神の慈悲と人の慈悲の違いなのです。」
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The Secret of Father Brown(1927年、英)
ブラウン神父シリーズ。随所に皮肉を効かせておきながら、最後はとびきり性善説的なエピソードで締める、その演出の妙に★4つ。
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『ブラウン神父の秘密』
スペインに引退したフランボウに自らの推理法について語るブラウン神父。
『大法律家の鏡』
殺害された判事。逮捕され裁判にかけられた容疑者。撃たれた鏡に隠された秘密。
『顎ひげの二つある男』
かつての泥棒の出獄。狙われた被害者たち。ムーンシャインと思われる人間たち。そして射殺されたムーンシャインの二つの顎ひげの秘密。
『飛び魚の歌』
体は金、目はルビーの「金魚」。持ち主が留守中に盗まれた「金魚」。アラビア風の衣装を身にまとった男の謎。
『俳優とアリバイ』
稽古直前に楽屋に立てこもった女優。稽古中に殺害された劇場支配人。劇場支配人の重婚疑惑。
『ヴォードリーの失踪』
失踪したヴォードリー卿。娘の婚約者とヴォードリー卿の関係。見つかったヴォードリー卿の死体。恐喝屋の正体は?
『世の中で一番重い罪』
弁護士と相続問題があるマスグレーヴ家へ赴いたブラウン神父。遺言を残した父親は息子には二度と会わないと宣言。
『メリーの赤い月』
盗まれたルビー。容疑者はインド人のバラモン。消えたルビーが再び現れる謎。
『マーン城の喪主』
変わり者のマーン城主。かつて起きた決闘事件の真相。
『フランボウの秘密』
物語を語り終えたブラウン神父。フランボウの秘密。
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ミステリとしての出来は『童心』が一番だけど、《好き》ということならこの作品。「マーン城の喪主」「フランボウの秘密」の2編は自分の宝物。
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古典ミステリの名作のひとつですね。ブラウン神父。犯人の逃亡率が高くて笑ってしまいました。おもしろかったです。
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ブラウン神父シリーズの中で一番好きかも。
本書の構成はただの短編集ではなく、最初に「ブラウン神父の秘密」、最後に「フランボウの秘密」とありましてそれぞれが序章と終章的位置づけで、その間に入っている8編の短編がブラウン神父が過去に活躍した事件譚、という形になってて面白い。
盗難事件から殺人事件までなんでも解決する坊さんですな。
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チェスタトンのブラウン神父もの、第4編。なぜか第3編をすっ飛ばしてしまいました。
前に『ブラウン神父の童心』や『ブラウン神父の知恵』の書評でも書いたかもしれないけど、ブラウン神父ものは「注意深く読んでりゃトリックが分かる」といったジャンルではありません。もちろん解けるトリックもあるんだけど、原典が出版された1900年代初頭のイギリス文化や、その当時に常識とされていた風俗が理解できないと、そもそもヒントさえ掴めないような作品も多くあります。
ということで、チェスタトンの頭脳に挑戦しようと考えるより、推理小説の古典の一つとして娯楽として読む、というのが正解かと個人的には思います。
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◆ブラウン神父シリーズの4作目で、わたしがこのシリーズを読むのは「童心」に続いて2作目です。この『秘密』では、「ブラウン神父というカトリックの司祭が、なぜ殺人事件をすらすらと解決できるのか」という問題がクローズアップされています。なぜ、殺人と最も縁遠いであろう神父が、殺人者の行動を推理したり感情的に追体験できるのでしょうか。本書で描かれるそのテーマのなかにこそ、ブラウン神父の神髄を見た気がします。◆「あなたがたが犯罪を恐ろしいと思うのは、自分にはとてもそんなことができないと思うからでしょう。わたしが犯罪を恐ろしいと思うのは、自分もそれをやりかねないと思うからなのです (p. 277)」。誰よりも罪の身近さを理解しながら、誰よりもそれを御する力をもつブラウン神父。今作も脱帽です。
* ひとことメモ *
分からない程度に書きますが、勘の鋭い方は見ない方がいいです。(”ネタバレ”は見づらいので、極力使いたくありません^^;)
「大法律家の鏡」
俗物。
「顎ひげの二つある男」
神父は、ムーンシャインの生き方にこそ、罪に対する償いの形を見ていたのだと思う。法による裁きを強いず、犯人を逃がしている理由がはっきりわかった話。
「飛び魚の歌」
念頭にない男によるしたたかな犯行を神父が見抜けたのは、念頭にない女による思わぬ行動のおかげだったという話。
「俳優とアリバイ」
多くの人を欺いた、頭のいい、俗物。
「ヴォードリーの失踪」
2度殺人を犯した男。けれど彼は人一倍その罪を悔いている。それよりもはるかに罪深いのは、あの男だった。
「世の中で一番重い罪」
世の中で一番重い罪をおこないながら、彼は神父に対して嬉々としてその罪を告白する。なぜなら、彼が告白していたのは、神に対してではなく悪魔に対してだったからだ。
「メルーの赤い月」
多くの人は宝石の金銭的な価値に魅入られるだろうけれど、そこに価値を見出さない人間にとっては石のクズに過ぎない。行動原理のまったく異なる人間というものを象徴的に描いていると思う。最後の一言が分からなかった。
「マーン城の城主」
ここにも、ブラウン神父の「償い」に対する姿勢がはっきり見てとれる。「あなたがたが人を許すのは、許すほどのことが何もないからなのだ (p. 266)」という神父の言葉は、本当の罪を知った人たちがたやすく手のひらを返すことに対する強烈な一撃だと思う。
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本作はまず「ブラウン神父の秘密」という短編で幕を開け、最後に「フランボウの秘密」という短編で閉幕する。内容的には神父が自身の推理方法について語り、その実施例として神父が解決した9つの事件が語られるという構成になっている。アルバムでいうところのコンセプト・アルバムのような内容になっている。神父の推理方法については後で述べることにしよう。
さて本作は第4短編集ということもあり、寛容に捉えてもネタ切れの感があると当時は思っていた。例えば、「大法律家の鏡」はもろ「通路の人影」の別ヴァージョンと云える作品だ。作者が得意とする思い込みを利用した逆説を用いた作品(「顎ひげが二つある男」、「マーン城の喪主」)もあり、連続して読んだ身としては小粒感は否めなかった。強いて挙げるとすれば「世の中で一番重い罪」と「マーン城の喪主」が一つ抜きん出いるだろうかというくらいで、それも『~童心』に入っていれば普通くらいの出来だと感じていた。
しかし今回諸作について内容を調べてみると、学生当時に読んだ印象とはまた違った印象を持つ作品もあった。特に「メルーの赤い月」で開陳される山岳導師なる隠者の特殊な心理は、海外で暮らすようになった今では理解できるが、当時はまだ海外はまだしも社会人にもなっていない頃だったので、何なんだこれは!と激昂したに違いない。
また本作には後の黄金期のミステリ作家、特にカーに影響を与えたと思しき作品も見られる。中でも「顎ひげの二つある男」のシチュエーションはあの作品を、「マーン城の喪主」のトリックはあの作品と思い当たる物がある。
しかし本書の注目すべき点は冒頭にも述べたブラウン神父の推理方法だ。彼は自分こそが犯人だという。それは彼が推理する時は自分も犯人になって考えるからだ。彼が犯人だったらこうするだろうと犯人の心理と同化することで事件の真相を見抜くと告げる。
なんとこれは現代の犯罪捜査でいうところのプロファイリングに他ならないではないか。本作が出版された1926年の時点で既にチェスタトンはこの特殊な犯罪捜査方法について言及していることが驚きである。勘繰れば、このチェスタトンの推理方法からプロファイリングが生まれたようにも考えられる。
小学校の時、児童版の名探偵シリーズでお目見えした時は、単に人物が神父というだけで、ホームズやミス・マープルその他と変らないという印象でしかなかったが、本作で神父の推理方法が明かされるに至り、その印象はガラリと変ってブラウン神父という探偵の特異性が見えた。神父ゆえの宗教的観点からの謎解きだけでなく、犯罪者の心理と同化するブラウン神父の推理は全く以って他の探偵とは一線を画するものだ。
確かに各編のクオリティは落ちている(それでも水準はクリアしているが、こっちの期待値が大きいばかりについついこのような云い方になってしまう)が、本作はこの、正に“ブラウン神父の秘密”が判るだけでも意義が高い。
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どうも前半は一度読んだっぽいなあ。
筋知ってるやつもあったし。しかしやっぱりこの雰囲気は独特ですなあ。