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紙の本
新しい国へと
2009/10/13 22:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
楽園に暮らすアダムの一族、その長男のカインと次男のアベル。カインが楽園を出て行くことになる場面を描いた一編。この神話の世界で、何一つ不自由は無いと思われるこの家族の中にも事件が起きた。それを劇と言う形にすることで、人間の物語としての描いたというのが第一の側面かと思う。それによって、信仰と背徳の関係について解き明かそうともするのだろう。
カインはルシファーに出会い、その言葉を聞く。神の世界であるから、そこには当然悪魔は存在し、ルシファーも存在する。姿を見ることも、声を聞くことも出来る。そして語られる哲学は、神の論理とはまったく正反対の体系になっている。この作品が発表当時大きな非難を浴びたというのは、まずそこら辺のところにあるのだろうかと思ったりするが、まるきり信仰というものに縁のない者としては、ただそこに在るものを見て聞くだけのこととしか思えないのだが。
さらにルシファーは、カインを世界の外側に連れ出し、宇宙の全体像を目にさせる。正しいとか間違っているといった評価以前に、それまで絶対的だった神の存在が、悪魔や宇宙などと相対化された存在になってしまう。これも科学の世紀と言われた19世紀になって必然的に到達しうる地点であり、バイロンはその時代の流れを敏感に感じ取って、宇宙の一点に存在する人類としての意識を詩として表現したのではないだろうか。
カインは宇宙的視点を手に入れるが、同時に家族との愛情も彼にとっては捨てることは出来ない大切なものであり続ける。アベルの死の悲しみ、罪の重さに深く苛まされて、自分のしたことの意味も悟るわけではないが、それでも妻の愛、息子への愛によって、新しい進むべき道を見つけ出すことはできる。彼の魂にとって未知の世界への力強い旅として、強い印象を持った。
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