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紙の本
福沢諭吉だったらやる気はない
2001/05/11 23:38
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投稿者:さかな - この投稿者のレビュー一覧を見る
銀行の地下深く眠る金塊、金色の光が六人の男達を動かした。
豪気な男北川が持ち出したのは銀行強盗の話だった。しかも金塊を奪うという。<人のいない土地>に行くことを望みながらただひっそりと日々を送っていた幸田はその計画に乗った。強盗チームに集まったのは6人。それぞれの男達がそれぞれの理由を求めて計画を進めていく…。
高村薫得意の「男の世界」が展開されている。後半の計画実行シーンはスピーディーに進み、臨場感満点。息も詰まる展開の後のラストシーンはどこか神々しさを感じる。
しかし、私はこの作品の重点は計画準備段階での男達の関係にあると思う。特に幸田と、多くの謎を持つモモさんの間に生まれた絆は友情というには深すぎ、こんな愛情というのも在るのかと思わされた。こんな熱い世界にどっぷりハマって涙を流してみるのも良いのではないか。
紙の本
緻密に味付けされた金塊強奪計画。
2021/09/30 10:05
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
緻密に味付けされた金塊強奪計画。当初は簡潔明瞭な金塊強奪計画と思って読み進んだが、やがて主人公の過去の闇、北朝鮮や公安警察の影など、様々な人間模様が交差する複雑な展開に。やがて複雑な人間関係が破局的局面を迎える中での、緻密に計画、準備された金塊強奪計画の強行。最後約60ページの金塊強奪シーンはちょっと上手く行き過ぎの感もあるがそれを吹き飛ばす迫力で押し切っている。人間模様も描きこんだ犯罪ものとして凄いの一言。但し、個人的にはどこかキリスト教的「罪と罰」の匂いを感じるのは私的偏見かな。
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6人の若者が繰り広げる世紀の大泥棒!
2001/09/13 13:18
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投稿者:ちょこらんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の幸田は犯罪の世界に無意識に入り込むタイプなのだろう。焦がれてやまない世界の匂いを放つモモに惹きつけられずにいられない。そんな幸田を、どうにかしてこちらの世界にとどめておきたい「小ワル」な北川。
北川の弟の春樹は、そんな幸田の持つあやうい魅力に惹かれ、幸田が棲む「あちら側」の世界に入り込みたいと願う。若さゆえの一途で尖った思いをぶつけられる幸田には、春樹はあまりにもまぶしい存在で拒むことはなかなか難しい。しかし、やはり本能では「あちら側」にいるモモを選ぶ幸田であった。
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高村文学の原点をここに見る。
2012/10/06 09:59
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画化され、まもなく公開と聞く。これが氏のデビュー作であるにもかかわらず、どういうわけか、わたしは読んでいなかった。いまさらではあったが、途方もなく新鮮な衝撃を受けた。これほどリアルで暴力的でシリアスで、魅力的な大型の犯罪小説だったとは知らなかった。不条理の世界で生きる人間を穿つ高村文学は『太陽を曳く馬』へと飛翔したのだが、原点はすでにこのデビュー作に埋まっていたことに気づいたことである。
メンバーそれぞれの得意技を活かしたチーム型強奪作戦である。手に汗を握るアクションが期待されるから、それだけであれば、小説よりは映像表現のほうが間違いなく受けるテーマである。まさに映像化にはふさわしい見せ場がいたるところにある。ダイナマイト輸送トラックの襲撃、変電所爆破、通信ラインの共同溝爆破、そして金庫襲撃と後半立て続けのアクションシーン。地形、建物の構造、爆薬製造、エレベーターシステムなどディテイルの積み重ねは映像のほうがわかりやすいとは思う。そして国際的謀略を背景にした、殺るか、殺られるかの激闘、暗闘。
20年以上前、1990年の作品なのだ。とにかく当時、これだけ荒唐無稽な犯罪を細部にこだわって迫真力ある重量級バイオレンスに仕上げたのが新人の女性作家だったことは信じがたいことである。
ところで『黄金の七人』や『オーシャン』、ハリウッド製のチーム型強奪モノというのは、オシャレで女性にモテモテのダンディたちが、陽気に派手にふるまう持ち前の性格をちょっとオーバーにした程度の、生活の臭いとは無縁な楽しいゲームであった。まさに痛快冒険活劇!フランス映画、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンが共演した『地下室のメロディ』だって渋いフランス流ダンディズムが一貫していた。
ところが『黄金を抱いて翔べ』はこれらとはまるで異質である。この異質なところは映像化が難しそうであり、映画は原作とは別物になるのではないだろうか。
時は1988年と推定される。昭和63年。昭和の最後の年にあたる。北川浩二(計画の首謀者)、幸田弘之(行動のリーダー)は29歳から30歳。二人は学生時代に左翼ゲリラに武装部品等を売買していた仲間であり、公安の監視対象者。幸田は母親が神父と不倫関係から孤独に育ち、家族や神を憎悪する人物。二人とも頭脳は明晰、繊細な感受性を持ち、自分を冷静に見つめることができる男である。社会の枠組みを認めず、虚無の中で希望は持たず、この世に未練がないが、ただ湿り気のある生命力だけは旺盛なのだ。そして暴力の臭いを発散させ、女よりも男を引き寄せる。
冒頭、目的のビル周辺を観察する幸田。単なる大型娯楽小説ならばこんなムードのスタートにはしないものだ。 『太陽を曳く馬』の合田雄一郎を髣髴させ、高村薫らしいドストエフスキーやニーチェにあるなにものかが全編を漂い始める。処女作からこういう雰囲気を宿した作品だったんだ。
なぜ金塊なのか。札束ではないのか。なぜ無用な殺人を犯すのか。なぜここまでの悲劇を身内に与えるのか。細密な計画遂行に比較して犯行後の展望がないのはなぜか。そもそも何のために?………にもかかわらず彼らは死を覚悟した行動に挑んだ。
すべてが価値のないことなのだ。それをわかった上で途方もなく強大な壁に向けて、限界まで力をぶっつける。そこに自己の存在があり、確信できるなら死んでもいい。
現時点でみれば時代錯誤の発想でしかないだろう。だから今、彼らと同世代人には理解しえない状況ではないだろうか。
これは遠い昔の物語なのだ。ラスト昭和の崖っぷちに立って、振り返れば残照に長く引いた己の影があった。
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一癖も二癖もある登場人物達
2020/11/21 11:53
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
一癖も二癖もある登場人物達だ。一筋縄ではいかない。これが高村薫のデビュー作とは思えない完成度だ。この頃から作風が変わらない。細部の描写が細かく、専門用語が頻繁に出てくる。登場人物や属するグループも多岐に渡り、ストーリーが複雑だ。腰を据えて読まなければいけない。
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黄金を抱いて……。
2002/07/31 19:53
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
硬質の設定と綿密な描写、その中の六人の男。私は「男らしい」小説が良くて「女らしい」小説が劣っていると言う気はさらさらないが、男とか女とか関係無しに、ベタベタしてミーハーな小説よりも、作りがしっかりして甘ったるくない小説の方が好きだ(因みに男権主義的な小説は嫌いである)。
高村薫氏の作品は所謂「男らしい」作風だろうが、男だろうと女だろうと、そのしっかりした作りが作品をレベルの高いものにしている。よく読むと男性同士の関係などに女性向けっぽい要素もある。
正直、この手の話はあまり読まないのだが、著者の他の作品も読んでみようという気にはさせてくれた。