紙の本
事前の大層な期待はかなえられなかったが…
2002/04/30 22:27
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はや父(とう) - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国古代に題材を取った本を見るのは久しぶりだったが、タイトルと本のカバー裏の紹介を読んで随分そそられた。ただこの作者の著作で、始めて読むのがこの本で良いのかはよく分からなかったが。
とても興味を持ったのは、「墨守」という言葉の元になった古代中国の諸子百家の時代に活躍した墨子と言う思想に材を取ったということ、内容は不可能とも思える様な籠城戦を描いたものであること、それが主に非戦を訴える様な墨子思想によるものであること、などから。とても面白く、また独自の読後感を与えてくれる本なのではないか、と大層期待した。
しかしその期待はそれほど叶えられなかった。
まず籠城戦。この攻防が本編の中心な訳である。しかしながらここを書き切るためだけでもあまりに枚数が少なく、ほとんど突っ込み不足という感を受けた。作中でその肝と言っている人心掌握も、結局主人公以外の人物がほとんど書き込まれておらず、あまり迫力というかはっきり凄いことをしているという感を受けづらかった。そしておそらくこのような戦いの華ともいえる、その当時の最新技術を駆使する様にもあまり驚きを感じることはなかった。
また戦いの収束にしろ、その後の歴史の説明にしろ、どうもいまいち焦点が絞れていない感じがした。歴史の流れに消えていった墨子教団の存在と、その大きな流れに関与することの無かったこの戦いと。多分そこの感じ(無常感のようなもの?)も、もっと枚数をかければ具体的に伝わったのではないだろうか。
また作者はかなり長いあとがきを書いており、そこで「想像を絶するもの」について書いている。資料にしろ何にしろほとんど存在の痕跡がない墨子教団について書くことの困難さと、それでもこれからもそういうものに挑み続ける、そういう宣言であると思われる。その困難さに立ち向かう事、そのことによる成果が本作では残念ながら私には感じられなかった。
ともかく、ここで表現しようとしているものが、あっさり表現する事によって深く伝わるというタイプのものであるとは思えない。そのためにこちらに響いてくるものがほとんど無かった。じっくり長大な物語として書き込んで欲しかったと思う。
ただしそういう点からは長大なシリーズになっている様な作者の別の作品は、読んでみようかと思わせる、それくらいの読後感と、後に続く期待は残った。
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墨守する:何かを守って、そして頑なに守り続けること。
専守防衛を今から2千年以上前の中国で唱えた墨子、そしてその教えを継承した墨子集団の活躍を描いた作品。
後の中国で戦乱のだびに篭城戦に卓越した指揮官が現れるが、この教えに通じるものがあるのかもしれない。同名のタイトルで漫画化もされている。
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どうしてこの人の文章はいつもこんなに臨場感に溢れているんだろう。
「血沸き肉踊る」とは正にこんな感じなのか!と実感させてくれる。
今まさに躍りだすような勢いを持ちながらも、冷静を装った文体が小面憎くも快い。
史実はどうあれ(というよりも史実を装った)、酒見賢一ワールドにどっぷりつかって頂きたい。
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戦国時代を舞台に、墨家集団の一人革離が大群相手に小国の城を守り通すべく獅子奮迅のはたらきを見せる歴史小説。
森秀樹氏の画でコミカライズもされたのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。墨家についてはわからないことも多いのでかなり創作に寄るところも多いということですけれど・・・
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4101281122 170p 1995・1・15 4刷
史実と作話が入り混じった作品。
趙の大軍と小城を守る革離と素人の住民の戦い。革離の職人技の人心掌握術や守備術にわくわくします。
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史実と虚構を程よく織りまぜ、スピード感のある中国戦術エンタテイメント小説になっている。
中編という事で話の尺も丁度いい。2007年正月に映画が公開になるという事でそちらも期待。2時間くらいの映画にまとめるのは丁度と作品だと思う。
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酒見賢一の代表作の一つ。今回、映画化されて読み直したが、やはりテンポがいい。もともと薄い文庫本だが、2−3時間で一気に読んでしまう。しかし読んだ後に残るのものがない。現在、宮城谷昌光氏の中国小説に人気があるのは、読後の充実感があるからではないだろうか。残念。
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劉徳華主演で映画化記念ということで、久々に再読。儒家と並ぶ影響力を持ちながら、なぜか姿を消した集団・墨家を架空の墨者の姿を借りて描いた端正な小品。その特異な思想や戦闘技術が面白いのと、あっさりとした結末が印象的。
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映画公開に先がけて読んでみました。さくっと数十分で読めます。
なんとなく展開わかってしまった。
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短編ながらスケールの大きな話。「墨子」って、聞いたことはあったけれども、こういう戦う思想集団だったということは知らなかった。あくまでも小説なので、書いてあることを鵜呑みにはできないけれども、なかなか勉強になった。中国物という点での共通項があるので、中島敦とよく比較されている(中島敦記念賞を受賞してもいる)が、中島敦ほど格調高くはなく、娯楽作品らしい軽さがある。(2007Feb)
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近々映画になるらしいですね。
結構宣伝では、漫画のほうをとりあげられていますが、漫画はまだ読んでいなかったりします。短い話の中で、墨家という思想の集団が鮮明にかかれていて、ほほうなるほどって感じの作品。戦いは、人同士が戦うもので、色々な思惑が絡む。なかなかセオリーどおりにはいかないんだなとしみじみと感じさせてくれた。
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映画を先に観てから原作を手にとってみましたが、かなりストーリーは違うのね。墨家の考え方のコアの部分が理解できた気がするけれど、映画の印象の方が強いためちょっと消化不良。
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映画化されたのを機に読み返してみました。もともと、中学の時の部活の顧問に勧められたのが読んだきっかけ。攻撃重視な考え方を変えようとしてくれたんだろうけど、期待には応えられませんでした。話は戦国時代の中国が舞台。謎に包まれた墨子教団を題材にしています。読み返してみて、薦めてくれた先生の意図が今更ながら身にしみて、それを見にできなかった自分が恥ずかしくなります。。。
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酒見さんの本を読むのは、「後宮〜」「弱虫〜」に続いて三冊目。どれも軽妙なテンポで綴られるのですが、話の内容はわりとヘビーですね。映画も見てみたくなりました。
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古代中国の戦乱時代をモチーフにした…と書くとありがちに聞こえるが,本書の世界観・設定は,いわゆる「歴史モノ」とは異色で,とても面白いものである.ある意味漫画的な発想(有り得なさ重視?)で,「働き者」な一人のカリスマの活躍を描く.この本はけっこうあっさりと話を終わらせてしまっているが,この設定をもとにすれば,いくらでも世界を膨ませることができそう.と思ったら,やはり映画化,漫画化もされている.