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紙の本

日本に現われた巨大な「結核」文化とそのなごり

2001/12/28 22:10

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 同じ著者による新刊『結核という文化:病の比較文化史』からさかのぼって,本書にたどり着いた.学術書ではあるが,その内容は一般の読者をも惹きつける.

 本書は,結核という国民病の「ロマン化」というテーマを中心に,疾病の文化史が生々しく描き出す.著者は,詳細にわたる註や参照文献を通して,結核という伝染病が,明治以降の現在にいたるまでの日本にもたらしたさまざまな意味での「爪あと」をいたるところに見出す.一方では製糸工場の女工たち,他方では文学者や芸術家たちが次々に結核に罹って斃れていった.明治初期以降1世紀にわたる結核死亡者数の推移(pp.50,348)を見ると,最盛期にはほぼ500人に1人が結核で命を落としたことになる.たいへんな数である.

 第1部では,日本の産業史を振り返り,労働者の結核罹病の高まりと雇用者側の対応や社会的施策が述べられる.第2部では,多くの文学者・文学作品を例にとって,結核がどのようにして「ロマン化」されていったのかを概観する.第3部は第2部の延長線上で,結核療養所であるサナトリウムを舞台とする文学が結核治療法の進展とともにどのような経緯をたどったかが跡づけられる.いずれの部分も,具体的な資料を見せられるので,その分量にもかかわらず読み進むことができる.

 本書は日本に限定された「結核文化」と「結核ロマン化」の議論であるが,日本よりもさらに激甚な結核蔓延を経験したイギリス(19世紀はじめにはほぼ100人に1人が結核で死亡した)でのパラレルな文化現象との対応づけがなされている.姉妹書である『結核という文化』と併読することにより,その並行性はさらに明確になるだろう.

 「少年の頃あこがれた夢二の絵の女は,現実にない情調だと思っていたのに,夢二の家には生きていた」(川端康成,p.377,註88)——本書を読んで,竹久夢二の描くなよなよした女性のイメージのもつ意味がはじめてわかったような気がする.

【目次】
序章 結核とその文化史的意義について 1

第1部 結核をめぐる社会と個人
第1章 殖産興業と女工哀史 26
1. 伝染病と社会状況 26
2. 女工と肺病 30
3. 肺病と社会的対策のはじまり 46
第2章 鴎外・コッホ・肺病 57
1. コッホと結核菌の発見 57
2. 医学者鴎外とコッホ 66
3. 「結核治療薬」ツベルクリン 71
4. 鴎外の肺病恐怖と師コッホの来日 79
5. 肺病と鴎外文学 82

第2部 結核のロマン化と非ロマン化
第3章 肺病のロマン化——『不如帰』とその系譜 100
1. ロマン化のはじめ 100
2. 『不如帰』の誕生 119
3. 『不如帰』の背景と影響 127
4. ロマン化の過程(その1) 140
5. ロマン化の過程(その2) 152
6. ロマン化の過程(その3) 169
第4章 子規と肺病患者たち 177
1. 喀血と,漱石との出会い 177
2. 病状の悪化 185
3. 肺病と死の認識 193
4. 『墨汁一滴』『仰臥漫録』と肺病患者の群像 204
5. 『病牀六尺』と肺病患者の心理 216

第3部 結核と医学
第5章 肺病・サナトリウム・転地療養 226
1. 病人の行くべき所 226
2. 転地療養とサナトリウム 237
3. サナトリウム発祥の地——鎌倉と須磨 248
4. 南湖院と獨歩 261
5. 平地および高原療養所 274
6. サナトリウムの限界と終焉 281
第6章 医学書・療養書と結核予防運動 285
1. 西洋医学の診断・治療 285
2. レントゲン線と通俗療法 301
3. 結核予防と結核撲滅運動 325
4. 農村結核から全国的蔓延へ 340
5. 免疫と死亡率の減少と 347

終 章 遠のいた死と残されたイメージ 353

註 363
あとがき 395
図表一覧 [30-31]
参考文献 [16-29]
事項索引 [10-15]
人名索引 [6-9]
英文要旨 [1-5]

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2012/07/19 10:25

投稿元:ブクログ

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