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従来の学校文法における時制、法助動詞といった事項に関する盲点、「命令・依頼・懇願」、「助言・批判・警告」といった機能別のいろいろな表現、「知的情報交換」、「潤滑油としてのことば」という語用論的な側面、そしてイントネーション、とった内容を解説し、ことばをどう使うとどのような効果が生まれるか、という観点でまとめた1冊。
はじめの時制、完了形・進行形、法助動詞の各章は、英語学の知見を活かした英文法の整理、という感じで、他の英文法関係の本にも書かれている内容だった。He may be right.とHe can be right.の違い、とか勉強になった。後に続く語用論的な内容を扱った章では、急に英会話の本のような感じで、「文句の付け方」とか「助力の申し出の断り方」など、同じ機能でもどのような感情を乗せるかによって、どう表現すれば効果的かということが紹介されている。ところどころに著者の体験談が出てきて、読み物としても面白い。日本で皮肉は嫌われがちだけれども、英米では「少々ひねった言い方の方がトゲをやわれげる効果がある」(p.105)とか、英米人は議論好きだけれども論争は好きではない、という内容で、You may be right.と反応された話(pp.135-6)など、おれ自身にも最近似たようなことがあって、妙に納得した。
英語学的な観点にかなりの重きを置きつつ、「語学」としての英語という観点を合わせて、英会話を中心とした英語の実運用面を解説した本はそんなにないように思うので、ユニークな1冊だと思った。(12/02/22)