紙の本
全体としての評価は星4つ
2002/06/28 02:15
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投稿者:れじー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書には短編10作が収められている。
やはり江戸川乱歩は長編小説も良いが短編もいい味を出している。
以下それぞれの作品について一言ずつコメントと評価をする。
『一枚の切符』…★★★★
短い割に内容は濃い。謎解きも面白かった。
『恐ろしき錯誤』…★★★
100点だと思ったら名前を書き忘れて0点になってしまった。
そんな感じの短編。
『双生児』…★★★★
双子の入れ替わりは今ではよく見られるトリックである。
指紋の話は割とよかったと思う。
『黒手組』…★★★
暗号文が初めの方に載っているのは読者に対する挑戦だろうか?
トリックは結構簡単にわかる。
『日記帳』…★★★
何だろう、これは。かなりワケがわからない作品。私は割と好きだが。
『算盤が恋を語る話』…★★★
イマイチ。主人公のTは下手をしたらストーカーである。
『幽霊』…★★★
現在の社会では、生きている人を死んだようにみせかけるのは難しいだろう。
この世には幽霊など存在しないのである(もし存在するのならば、私見えるように出て来い)
『盗難』…★★★★★
これは面白い。トリックがわかった!と思いきやどんでん返しが。
前半だけで終わってたら面白くもなんともないが、後半の偽札のネタががよかった。
『指輪』…★★
乱歩本人の評価はかなり悪いようだ。事実、あまりよくなかった。
最後にどんでん返しがあるが、意外性がなくありきたりなもので終わっているのが残念。
『夢遊病者の死』…★★★★
氷を使ったトリックはよく見かける。偶然は怖い。
本書の最後には江戸川乱歩の自註自解があるのでそちらも読んでみると、自分の感想と作者の意図がどれだけズレてるかわかって面白い。是非読んで比べてもらいたい。
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初期の乱歩はこの頃の探偵小説作家には珍しいくらいミステリ的な面白さに満ちていると個人的に考えているのでこれはやたら面白い。短編であることの有利さをどこまでも利用してサプライズを仕掛けていると思う。本格としてもかなり出来がいい。「一枚の切符」「盗難」「夢遊病者の死」が好き。
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収録作品:
一枚の切符/恐ろしき錯誤/双生児/黒手組/日記帳/算盤が恋を語る話/幽霊/盗難/指環/夢遊病者の死
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『一枚の切符』
富田博士の妻の死。汽車による轢死と思われたが黒田刑事の捜査ににより他殺の可能性が浮かび上がる。逮捕される富田博士。左右田が拾った一枚の切符から博士の無実を証明するが・・・。
『恐ろしき錯誤』
対立する北川氏と野本氏。北川氏の妻・妙子の焼死事件。彼女が助かったにもかかわらず再び火の中に駆け込んでしまった秘密。彼女の耳元に囁いた謎の男の言葉の罠。妙子の持つペンダントにかくされた秘密。誰の写真?
『双生児』
遺産を相続した双子の兄を殺害した弟。兄になりすまし元恋人である兄嫁も騙し続ける。遺産を使い尽くし金に困った男。兄の日記で見つけた指紋を使った殺人を実行するが・・・。
『黒手組』
明智小五郎シリーズ
「黒手組」と名乗る犯行グループに誘拐された冨美子。身代金を支払ったにも関わらず解放されない登美子。受け渡しを担当した牧田の秘密。父親に禁じられた恋の謎。牧田の持つ手紙にかくされた暗号。
『日記帳』
死んだ弟の日記帳を読む兄。日記帳に書かれたある女性との恋の物語。日記帳に隠された暗号。
『算盤が恋を語る話』
自分の助手であるS子に恋するT。しかし女性に対して奥手で伝えるすべを持たない。算盤に秘めた暗号。S子からの返信。
『幽霊』
明智小五郎シリーズ
自分を敵として狙う辻堂の死。安心した平田の前にあらわれる辻堂の幽霊。怪しい写真。辻堂の戸籍にかくされた秘密。
『盗難』
ある宗教団体に勤めている時分に盗難された金。警官に化け金を盗んだ盗賊。犯人をつけた男。贋金をつかまされたと告白する盗賊。
『指輪』
電車の中で出会った男。拾った指輪の話。
『夢遊病者の死』
会社を辞め停職に付かない彦太郎。伯爵邸に住み込み働く父親との対立彦太郎の夢遊病。ある朝庭で殺害された父親。自分の犯行と思った彦太郎の自殺。
2010年12月15日再読
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初期の短編集。
様々なシチュエーションの奇妙な短編が多く収められている。
飄々とした口調で妙な物語を語られるのが心地よい。
アイデア一発勝負で、見事な勝利を手に入れている、よく出来た短編が多い。
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乱歩の初期短編作品を主に収録。いわゆる、変態趣味的な要素はあまり含まれず、(乱歩っぽくない!と思われる人がいるかもしれないほど)論理主体のミステリが多く、オチにひねりのきいた作品が多くてかなり楽しめた。(二銭銅貨ばりの暗号ネタとかね)
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勘違い、早とちり
『日記帳』はほっこりした
『算盤が恋を語る話』うーーん純粋!ちょっとわくわくしてしまったけどまさかの
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タイトルからメルヘン系怪奇ものだと思って読んだらぜんぜん違ってた、乱歩の知性偏重傾向のシニカルな短編集。詰めを誤った人々に対する残酷なまでの仕打ちは、「正義は勝つ」とか「純愛は成就する」とかそういった奇麗事を鼻で笑い飛ばすがごとく。いや、逆にここまでやればメルヘンか。
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初期短編集。
例によって乱歩の自註自解が自虐的で、いじらしいというか何というか。
表題作はソロバン目線で進行する話――というワケではなくて(笑)
ソロバンを使って
簡単な暗号でメッセージを伝えようとする内気な男の物語。
「日記帳」も暗号ネタで、こちらも悠長で不器用な青年の報われぬ恋。
大正時代のインテリ諸氏って、概ねこんな感じだったのかしらん。
それとも乱歩が特異なタイプだったのか……。
何にせよ、現代に比べれば
恋愛話などオープンに出来ない時世だったのだろうけど、
意外に今時の若者も、玉砕して恥を掻きたくないとか、
気持ちを受け入れてもらえなかったら、その後、気まずくなってしまうとか、
悶々としがちな人も少なくないらしいと聞いて、
好きなら好きってサッサと言っちゃえよ!
と思う自分はデリカシーに欠けるのか、などと、ちょっと反省してみる次第。
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二千銅貨と同時期に執筆された1枚の切符から始まる巨匠の短編集。
映画化もされた双生児が印象深い。あと明智が出てくると安心しますね。
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☑一枚の切符
☑恐ろしき錯誤
☑双生児
☑黒手組
☑日記帳
☑算盤が恋を語る話
☑幽霊
☑盗難
☑指環
☑夢遊病者の死
☑自註自解
☑解説 山前譲
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乱歩初期短編集。普通の推理物・暗号物ばかり。乱歩は文学として面白いけどトリックはいまいちだよなあ、という評判に漏れず、特におおという仕掛けもない。推理物なんて普段読まない私でもある程度オチが読めてしまうレベル。本人も自覚していたようで、自註自解ではそんなようなぼやきが多くそれはそれで面白かった(笑)
しっかし明智はイケメンだな、台詞見ただけでおっこいつはインテリ系イケメンだとパッとわかる。恐ろしい。明智に限らず、登場人物の風貌描写は殆ど無くとも自然と頭の中に「こいつはこういう顔だ」と浮かび上がらせる、巧みな人物描写。ゆえに単調なトリックの連続でもついページをめくる手を止められなかったのかもしれない。
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長編作品は柔らかな文体でスピード感を持って読ませるの対して、この本の初期の短編作品は硬質な文体で、より静的な、純度の高い印象を受ける。それでいて底をながれるものは同じ。興味深い。
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江戸川乱歩の初期短編集。まだ乱歩らしさは出ておらず、萌芽が感じられる程度。作品としてはすべて凡庸で退屈である。乱歩は円熟期においても夢オチ、いたずらオチ、勘違いオチ、などがハナにつくがすでにこの時代から。乱歩の有名どころは全部読んだという人が最後にその惰性で読む、というのがいい。
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私個人としては長編作家としての乱歩氏は少年期に少年探偵団シリーズで胸躍らせたあの頃で完結しており、『孤島の鬼』などの例外はあるにせよ、通俗すぎてバランスが悪いという印象しかもたないが、短編作家としての彼はワンアイデアで勝負する分、冗長でなく、しかもそのアイデアにキレがある事からかなり評価は高かった。
しかし本書に至っては短編の量産化のためかアイデアの枯渇が否が応にも窺え、小細工を変に弄するがためにギクシャクとした印象がある。
各々の作品については述べないが、「恐ろしき錯誤」以降すべてが読者をどうにか欺こう、読者の考えの先を行こうと無理矢理などんでん返しを用意している分、それがなんとも痛々しいのだ。かてて加えて読書期間中は横浜に遊びに行ったこともあり、没入できなかった外的要因もあるのだが…。
次の『人でなしの恋』に期待しよう。