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紙の本
バイタリティには敬服
2001/07/12 23:37
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投稿者:tanzanight - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は東大農学部林学科の井上先生が、JICAの専門家としてインドネシア・カリマンタンで研究を行っておられた時の経験・資料をもとに書かれたものである。前半が調査の話、調査時に拾った話、後半はぐっとアカデミックになり、焼畑の持続性などをいろいろな側面から検討している。
まず前半の部分で驚くのは筆者のバイタリティーである。相当な奥地までずんずん入り込み、調査を実施する実行力は敬服する以外にない。その一方人々を見る目の温かさも伝わってくる、読み物としても良いできの書である。
後半部分は焼畑を農業集約化論やコモンズ論の観点から論じている。農業集約化論に関しては私は全くわからないが、詳細に論議がなされ説得力がある。
一方コモンズ論に関しては少々問題点を指摘しておく必要があるように思う。筆者はコモンズ論に関し、英語の文献は有名な Hardin の Tragedy of the Commons ただ一つである。これは筆者が農業集約化論の部分で数多くの英語論文をあげているのと比べると、著しい差がある。英語と日本語のコモンズ論に関する文献の数はとても比較になるものではなく、筆者もそれは十分承知していると思われるが。特に筆者が提案するルーズなコモンズ、タイトなコモンズと言う概念は、言葉の上では Hardin が最近の論文(1994: The tragedy of the unmanaged commons. Trends in Ecology & Evolution, 9(5), 199) で提唱した unmanaged commons とダブっている印象を受ける。当然筆者の言うルーズなコモンズとの違いに言及されるべきであるが、そうはなされていない。
またもう一点コモンズに関して気になるのは、焼畑地をコモンズとして考えることの適切さである。焼畑は考え様によっては平面に時間軸が加わった個人による土地の私有形態とも言える。特定の個人が確保した土地・時間は他者によっておかされないからである。この点から考えると焼畑が果たしてコモンズと呼べるのかどうかにも疑問を持たざるを得ない。この点に関してももう少し論議するべきであったように思う。
全体を通しては良書であると思うが、このコモンズ論の部分一点に関しては、私の評価はかなり辛い点をつけざるを得ない。
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