紙の本
遺伝子研究から見たカンブリア紀の生物たち
2010/01/26 20:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
グールド「ワンダフル・ライフ」で、バージェス動物群の記載の見直しを行った三人の英雄として描かれていたうちのひとり、コンウェイ・モリスによるバージェス動物群についての著作。
新書判で手頃だが、やはりまずはグールドのものを読んでからこれを読むべきだろう。一応本書でもバージェス動物群についての解説は行われているけれど、図版や個々の動物についての記述は薄手で、ある程度の知識がないと楽しめないと思う。二肢型付属肢などの用語が説明なく用いられていたりするので、節足動物の分類などについてもある程度の知識があった方がよい。
その点「ワンダフル・ライフ」では個々の動物についての記述や、動物分類の具体例などがかなり詳しい。コンウェイ・モリスは「ワンダフル・ライフ」を冗長と評しているけれど、初学者にとってはきわめて丁寧かつわかりやすい基礎知識の解説を含んだ、秀逸な概説書だ。知ってる人には冗長だろうけれど。
本書ではグールド以降のバージェス動物群研究のエッセンスを知ることが出来、またグールドのバージェス動物群観に見直しを迫るものとなっていて、非常に興味深い。特に、グールドのものでは生物の外形ぐらいでしか分類を判断する術がなかったのに対し、本書では分子発生生物学、遺伝子研究などの最新知見を動員した議論が付加されている。そこでは、バージェス以前のエディアカラ動物群の時代には基本となる遺伝子セットはすでに用意されていたという見解がある。では、カンブリア紀で爆発が起こったのはなぜか、という疑問に対して、ある程度有力な見解として、捕食生物の登場をはじめとした、摂食行動の多様化が挙げられている(これに関してはアンドリュー・パーカー「眼の誕生」に詳しい)。
「ワンダフル・ライフ」を読んでいると三章くらいまでは復習みたいな感じでさほど新鮮味はないが、四章あたりからはアップデートされた研究を基になかなか新鮮な知見が多く、特に発生学と遺伝という視点はグールドのものにはまったくなかったものだけに、非常に面白い。
紙の本
分岐分類学への誘い
2002/07/15 14:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もぐらもち - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の柱は2つ。カンブリア紀の生物たちはどのようの生活をおくっていたのか、又、なぜ、そのようなことが分かるのか。という話とスティーブン・ジェイ・グールド「ワンダフル・ライフ」に対する反論です。
カンブリア紀の生物については細かい図があまりなく、あるのは化石の写真とカラーの口絵(カンブリア紀の生物がうごめいている海の中の絵)のみです。「ワンダフル・ライフ」を読んでからでないと、話題となっている生物のイメージがつかめません。目が5つあるオパビニアでさえ印象に残りません。しかし、「オットイアはどうやって捕食したか」というような話はとても面白いです。「なんでそこまで分かるのか!」と驚くしかありません。
また、「動物の異質性はカンブリア紀に極大に達していた」というグールドさんの主張に対し、モリスさんは「分岐分類学の手法によると異質性の程度は変わらない」と主張します。「ワンダフル・ライフ」には節足動物の分類方法について説明がありますが、その考え方自体が誤っていると主張します。グールドさんの「悲運多数死」にも、「生命のリプレイ」にも疑問を投げかけています。
この本が書かれた段階でも、まだまだカンブリア紀の爆発の謎は解けていません。今後の展開が楽しみです。
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陽気なアメリカ人学者に対してシニカルなイギリス人学者という感じ。倫理観が徹頭徹尾キリスト教で、少し受け入れにくい部分もあり。
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「ワンダフル・ライフ」では完全にヤンチャ坊主扱いされたモリスが、ワンダフルライフ後の研究成果を淡々と語る。ジェイグールドほどの文才は無いが、ワンダフルライフの記述と比較しながら読むと面白い。
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バージェス頁岩に封じ込められた恐竜の時代よりももう少し昔の生物たち。ちょっと古生物に興味のある人なら、”アノマロカリス”くらいは知っているかもしれない。カンブリア紀の生物は新生代に生きる我々の目からするとちょっと奇異に映るが、だからこそ余計に興味をそそられるという人もいる。そういう人には、無条件に薦められる本だろう。内容はやや古く、書き口も冗長ではあるが、すでに知識のある古生物好きなら楽しめる本だと思う。ただ、「恐竜は好きだけど、それより昔のことはあまり知りません」とか、「カンブリア紀ってなによ?」とか、そういった感じの人には読みにくいかもしれない。
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カンブリア紀の進化に関する、グールドの「ワンダフル・ライフ」以後の研究について読める。「ワンダフル・ライフ」で著者の名を知った人には意外なほど、グールドに敵対的。
化石の復元や系統推定はかなり大胆だが、「ワンダフル・ライフ」の問題点を知るにはよい本。また、カンブリア紀の動物そのものについて(その研究物語ではなく)知りたいならば、グールドの本よりも読みやすい。
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大学の授業でバージェス動物の紹介本として紹介された二冊のうちの一つ。もう一冊はもちろんグールドの「ワンダフル・ライフ」だが、その時教授は「モリスの方が読みやすいよ〜」と言っていた。その時「ワンダフルライフ」は既読だったが確かにモリスの方が読みやいかも。出た年代もずっと後なので情報が整理されてるのかもしれないが。
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カンブリア紀は地球生命の奇跡。
脊椎動物ではない烏賊や海老やヒトデやナマコや、果ては昆虫がいる理由が垣間見えます。
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『ワンダフル・ライフ』において、好意的に取り上げられている本書の著者、サイモン・コンウェイ・モリス。しかし、本書では『ワンダフル・ライフ』を「冗長」とした上で、結構厳しく評価しています。まぁ、同感ですが。『ワンダフル・ライフ』においては、バージェス頁岩における生物は現在の生物の門には属しないとされていたようですが、本書ではむしろ属する方向で議論されているということが紹介されています。そうだとすると、『ワンダフル・ライフ』における進化論の前提が崩れるわけですから、そういった意味でもこれら二つの本を読むことは悪くないと思います。が、カンブリア紀の生物に関してだけ知りたいのであれば、個人的には『ワンダフル・ライフ』に軍配です。
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【カンブリア紀への招待】――バージェス頁岩はありきたりの化石層ではない。
ここでは腐敗の過程が一時停止してしまっていて、古代の生命の豊富さをありのまま見ることができる。堅くて丈夫な骨格を持つ三葉虫や軟体動物ばかりか、全く骨格の無い軟組織だけから成る動物も遺されている。これらの驚くべき化石においては動物体の輪郭だけでなく時には腸や筋肉のような内部組織までもはっきりと眼にすることができるのだ。ちょうどガラパゴス島のダーウィンフィンチという鳥が「適応進化」の重要性発見の代名詞とされるように、あるいは、また、ショウジョウバエが分子生物学の発展のシンボルとなっているように、バージェス頁岩は、生命の歴史の研究に生涯を捧げる人々にとって、イコン(聖像)になりつつある
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1997年発行の古い本
レビューの写真と違うバージョンの本。
人類は何故ココにいるかとか、古の進化と人類を結びつけた本
でも終わりにで語られるこ事はよくわからない
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序 「生命の歴史」の五大事件
第1章 カンブリア紀への招待
第2章 バージェス頁岩の発見
第3章 タイムマシーンに乗って
第4章 新たなバージェス頁岩の探求
第5章 バージェス頁岩の重要性
第6章 門の起源
第7章 別の世界
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初版の本を買ったが、版が新しくなっているようで評価されているのだな、と思った。生命科学は専門ではないので、ナナメ読みや字面を追うことも多く会った。興味深いと単に思ったところは、付箋をはるなどした。
思うことは、生命科学とはとても哲学に近いと思えることだ。彼の「私が個々にいなくても、誰かがこの研究をしたに違いない。仮に生命の歴史を遡ったとしても、同じ結果になっているはず。」とする。考えてみればそうで、「歴史にifはない。」は当たっている。「テープを戻すと、違う結果が来るはずだ。人類は、進化の結果の一つの枝葉だ。」という議論はおかしい。本来は、「今こうなっているから、昔はこれしかないし、逆から見てもそうなっている。」のはずだ(ただ偶然という要素もなきにしもあらずなので、それも必然だったかは分からないが。)。
生命の歴史の解説にとどまらず、その「考え方」を見るのはとても楽しい。
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グールドの「ワンダフル・ライフ」を読まれたなら、必ずこちらも読んでいただきたい本です。
ワンダフル・ライフでは多分に想像が入っていますが、こちらはより冷静な視点で書かれています。
古生物ファンの入門書としても最適です。
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[ 内容 ]
カンブリア紀への招待:バージェス頁岩はありきたりの化石層ではない。
[ 目次 ]
序 「生命の歴史」の五大事件
第1章 カンブリア紀への招待
第2章 バージェス頁岩の発見
第3章 タイムマシーンに乗って
第4章 新たなバージェス頁岩の探求
第5章 バージェス頁岩の重要性
第6章 門の起源
第7章 別の世界
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]