紙の本
太鼓判をおして
2005/11/07 11:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何かおもしろい本格ミステリはないかとお探しの方、いませんか?そんな方におすすめなのが、本書の著者 平石貴樹のミステリ。作品数は少ないのですが、どれをとっても満足できる本格ミステリがそろっています。
中でもこの『誰もがポオを愛していた』は著者の(今のところ)代表作ともいえるミステリ、みたて殺人(ミステリの生みの親といわれるエドガー・アラン・ポオの作品のみたて)、不思議な謎、魅力ある探偵、不可能に見えていたものが論理的に解明されていく爽快感、ミステリ好きな人にはたまらない盛りだくさんの楽しさがつまっています。
さらにエピローグでは、ポオの有名作『アッシャー家の崩壊』に隠された真実を暴き出していて、これもとても興味深くおもしろい。
これぞ本格ミステリと太鼓判を押しておすすめできる一冊です。
紙の本
本格!別にポオを熟知してなくてOK。
2019/10/12 15:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきたまご - この投稿者のレビュー一覧を見る
松谷警部シリーズを読んで、更科ニッキも読みたいと思っていました。復刊フェアで、ようやく叶いました。
動機は置いておいて、物理的な可能性を軸に考えていくニッキ。こういう人に、憧れます。
物語としては、かなり本格です。仕掛けは派手、見立て有り、しかも翻訳物という設定(実際は日本人が書いていますが)。
本格ミステリに飢えている方に、オススメです!
ポオの見立てということもあり、「ポオを読んでいないといけないのでは?」「読んでいない話をネタバレされたくない」という、このタイプの本ではありがちなことを心配していましたが、そこまで甚大な被害はなかったです。確かに、ネタバレがないとは言いませんが、ポオの中でも推理ものよりは幻想もの(?)の見立てが多かったからかもしれません。
気になる方は、章の題名になっている物語だけは読んでおいたほうが良いかもしれません。
アメリカ人から見た日本人、異文化コミュニケーションあるある、なども描かれていて、本格推理の中でも常にユーモアを持った小説でした。
登場人物の名前が、マクドナルド、ケロッグ、ナビスコなど、ふざけた感じなのも楽しかったです。
紙の本
朽ちた瓦礫を集めれば、再び館は建ちあがる。
2000/09/21 08:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
始まりは予告電話。「諸君はアッシャー家の崩壊を見出すだろう」…ポオの縁の地ボルティモアで日系人兄妹の住む館が爆発、沼の中へと崩れ去った。瓦礫の中の妹は謎の言葉を残して事切れ、沼へと沈んだ兄の体には謎の傷痕が。あらゆるものにポオとの符合が見つかる中、死体の歯が全て折られた『ベニレス』、斧で頭を割られた死体が片目の黒猫と共に壁から見つかる『黒猫』が発見され事件は大混乱を招き…。
舞台はアメリカ。マクドナルド警部補の一人称語りを日本語に翻訳した、という設定。しかしまぁ登場人物の名前がすごい。探偵役が更科丹季(さらしなにっき)だし、ナビスコ、ケロッグ、センゴク、バドワイザー等など。しかしこれがわかりやすい。海外ものっぽい体裁なのだけどすらすら頭に入ってくる。随所に散りばめられたユーモアもしかり。大事件が起きてもジョークを忘れない。いい感じ。
ところが事件の展開は決してライトではないのですよ。序盤から大小の謎のオンパレード。“爆破"されたのは謎だったのではというくらいばら撒かれ方。あんまりばら撒くので整理が追いつかない点は過剰サービスだけど、それは読者の頭脳が試されているという証。被疑者の人間関係を置き去りに、主人公ニッキは物証を頼りに論証を進めていく。割れた破片を拾い、繋ぎ、真相という一枚のガラスに復元する。論理だけで。終盤の収束具合には口開けっ放し。上質のユーモアとロジックが、峠を登り攻めてくる。秀逸です。
あ、それとポオの『アッシャー家の崩壊』を読んでるとより楽しめると思います。
投稿元:
レビューを見る
すばらしい。ガチガチの本格って言葉がここまで似合う作品はなかなかないよ。館の崩壊、怪しい容疑者、死体の見立て、読者への挑戦……そして前作でも良く分かってたんだけどあくまで論理で固めた解決編、見事としか言いようがない。特に最後の解決。この伏線はここしかないってとこにかっちりと嵌まっていく様は読んでるだけで快感。
投稿元:
レビューを見る
諸君はアッシャー家の崩壊を見出すだろう。
予告の電話は真実を告げていた。
上のような文句で前説を振られたこの作品は、凄い!!の一言しか出てきません。
「アッシャー家の崩壊」・「ベレニス」・「黒猫」・・・。
エドガー・アラン・ポオの作品にのめり込んでいた方には何も言わずに買え!!と無理強いしたくなる作品です。
無論、こういうからには損などさせません。
それほど凄いのです。
物語は「アッシャー家の崩壊」そのものと言える爆破事件から始まります。
屋敷の持ち主である兄妹の妹がその場で亡くなり、兄は行方知れず。
この事件を発端に巻き起こる第二・第三の事件。
これらポオの作品を模した事件に明確な回答は得られるのか?
一つの事件に一章、全三章の問題編。
そして第四章で名探偵が示す回答が導き出されるのです。
ポオ好きもそうでない方もこれを機に彼の作品を手に(より楽しむ為の氏の忠告つき)この作品を手にとってみませんか?
素晴しいおまけがついていますよ。
投稿元:
レビューを見る
米澤穂信の100冊その17:「物語」と「事件」を並行させ、「事件」ではなく「物語」を解くことで解決に導く。米澤さんのミステリを作る方法論の根底にある一冊。
投稿元:
レビューを見る
ポオ縁の地でアシヤ家の爆破崩壊事件から続く、ポオの作品を見立てたような連続殺人事件。魅力的な謎が提示され、探偵役が美しく論理的な推理で犯人を指摘する。実にエレガントなミステリです。書かれたのは所謂新本格ブームが興る直前、ミステリを愛する火は脈々と受け継がれていたのですね。
翻訳小説の形を取って書かれているのも面白いのですが、人物名にニヤリとさせられます。何せマクドナルドにナビスコ、バドワイザー、ハインツなどなど。しかもゲイカップルの名はロンとヤース。これは時代を感じさせますな。
投稿元:
レビューを見る
E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系(自称)の美少女探偵が事件を解決。全体を通してポオ作品への愛に溢れているので、ポオマニアの人は読むと良いと思うよ!
翻訳小説の形式を取っているけれど、読みにくいことはなかった。
登場人物の名前のセンスが、ちょっとアレだったかな…読んでてお腹空いてくるんだよね…ケロッグとかナゲットとかさ…。
投稿元:
レビューを見る
なにか面白い推理小説無い?と聞かれたとき、相手がミステリーマニアであれば、これを勧めています。ただ、手に入りにくいのかな、現在は。
投稿元:
レビューを見る
諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく…。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。 (「BOOK」データベースより)
結構期待して手に取ったのですが、うーんイマイチ。
面白いには面白かったのですが、主人公(だよね、多分)のニッキが好きになれない。
途中の言動・行動も最後の謎解きも、なんかイライラする。
全体的に読んでいて心地よくない。
どんなに陰惨な事件が題材でも、有栖川氏の作品は読んでいて心地よい。
文章が肌に合うのです。
この作品は合いませんでした。
普通に面白く、途中でいやになることもなく最後まで読んだのですけどね。
私がポオを読んだことないのがいけないのかもしれませんが。
投稿元:
レビューを見る
ポオを読んだことがない私にとっては着いていけない部分がありましたが、ストーリーよりも謎解きに特化した作品でなかなか面白かったです。確かなロジック で犯人を絞り込んでいく過程は破綻がありません。
また、「読者への挑戦」があります。関係者のアリバイ表で 登場人物の整理もし易いので、純粋に推理を楽しむことが出来ます。ポオが好きな方、推理を楽しみたい方におススメです。
投稿元:
レビューを見る
新本格前夜のミステリ、と紹介されていたが、確かにうなづける。ポオの小説の見立て連続殺人という、若干の幻想的要素を持ちつつ、謎は論理的。言い回しもアメリカの翻訳小説風で面白かった。また、ポオのアッシャー家の崩壊を犯罪小説として読み解く一編も秀逸。
投稿元:
レビューを見る
三十年ほど前の作品。ポーの[アッシャー家の崩壊]を見立てた本格探偵小説。
作風はむしろエラリークイーンの構成に近い。
一昔前の小説特有の仕掛けと回りくどさに演出の派手さがあるが、王道の本格探偵小説。最近の小説には無い面白みをたまには味わうのも楽しめる。
投稿元:
レビューを見る
登場人物の名前や翻訳風の文章の雰囲気から、バカミス系かなと思れたが、意外とまじめな内容だった。 推理は半分当たった。
内容は面白かったが、探偵のキャラクターがイマイチ好きになれず入り込めなかった。頭は良いが超人的という程でもなく、中途半端に冷淡で、チャーミングというわけでもないブレブレな人物のように感じられた。
犯人も、印象が薄すぎる人物だったので驚けなかった。
事件自体は面白かっただけに、人物が魅力的だったらもっと良かったのにという残念な強く気持ちを感じてしまった。
投稿元:
レビューを見る
どうしてこんな作品を今まで見落としていたんだろう、と個人的に忸怩たる思いでした。ただでさえ見立て殺人大好きなのに、しかもポオって!!! それもアシヤ家が文字通り崩壊というスケールの壮大すぎる見立てに愕然としながら感激です。
もちろん、謎解きの論理もしっかり堅実な本格ミステリでした。あくまでも事実のみを検討するニッキのストイックな探偵ぶりもいいのですが。個人的には動機等から突き詰めるのも嫌いじゃないんだけどなあ、と思っていたら。
……なんたること。動機もインパクトのあるものでした。こういうちょっと狂気な路線がやはり好きです。そしてポオの「アッシャー家の崩壊」の謎までこれで解けてしまうだなんて! まさしく目からウロコの一冊です。