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マラボゥストーク みんなのレビュー
- アーヴィン・ウェルシュ (著), 早川 敦子 (訳), アンナ・ピンスキー (訳)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:スリーエーネットワーク
- 発行年月:1997.9
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紙の本
傑作
2003/12/18 07:11
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投稿者:OK - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み残していたアーヴィン・ウェルシュの第二長編にいまさら目を通してみたら、これが傑作だった。
簡単に言えば、『グロテスク』(パトリック・マグラア作。植物状態の人物が歪んだ一人称叙述を繰り広げる)の構造で語られる『時計じかけのオレンジ』、といった趣向の小説で、主人公の現在時間(病室に見舞いの人などが訪れる)に、生い立ちから現在までの回想、そして現実逃避の妄想世界(怪鳥マラボゥ狩りの冒険旅行)と、都合三つのレベルの挿話が混在して交互に進展する。この奇妙な構成は、エピソードを連ねて物語を形成する(第一作の『トレインスポッティング』はまさにエピソード集のおもむきだった)ウェルシュ独特の作風と合致していて、適切な戦略だと思う。既成の要素を独自の感覚でミックスして新鮮なものを作る、という「クラブのDJ」的な手法を小説に応用した作品としても読めるかもしれない。主人公がどんな経緯で現在の植物状態に陥ってしまったのか、といった過去の事情が示唆されながらもなかなか語られないままになっていて、それが小説の推進力になっているとともに、嫌な記憶から目を逸らして空想に逃げ込みたいという主人公の精神的な弱さを反映して、物語的な意味を重ねられているのも巧みな設定。ただし全体的に、主人公の思考や感情がそのまま告白調で文章化されてしまっているところは、小説としての洗練に欠けるような気もしないではない。
妄想と現実が交互に語られる趣向は、ジャン・ヴォートランの『グルーム』に通じるものがあり、低所得者用の集合住宅の荒廃を背景にしていること、主人公が肉体的な劣等感を抱えているところなども、ヴォートランの小説を連想させる。また、、本書の破格の書法はジム・トンプスンの『死ぬほどいい女』における痙攣した文章と類似しているし、荒涼とした(そして性的な含意の強い)結末もトンプスンの『残酷な夜』『死ぬほどいい女』『グリフターズ』などの「女嫌い」ものの系譜に連なるものだ(ちなみに次の長編『フィルス』は現代版『ポップ1280』みたいな品性最低の警官をめぐる話でもある)。
それにしてもアーヴィン・ウェルシュは、『トレインスポッティング』に本書『マラボゥストーク』、そして『フィルス』と、訳されている長編どれもが傑作なのに、日本ではいまひとつ評価が高くないような気がする。この『マラボゥストーク』を読むだけでも、彼が単なる若者風俗を描く流行作家というだけでないことは了解されるのではないかと思うのだけど(英国ではブッカー賞の候補にも挙げられたらしい)。
紙の本
沈みながら浮かぶ男の物語
2001/08/26 23:09
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投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
植物人間になったロイが邪悪な鳥マラボゥストークを追いながら幻想と現実と過去を行き来する。そして最後は凄惨な復讐劇となり…。エディンバラの残酷な現実を書いた長編小説。後味はよくない。
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