紙の本
楽しみの、さらに上をゆくモーム
2004/06/05 11:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスの作家モームが、世界の偉大な文学者が残してきた遺産の中から「楽しく読める書物のリスト」を提供する。なにを上げたのか、ほんの一例をご紹介する。
バルザック『ゴリオ爺さん』
フィールディング『トム・ジョーンズ』
ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』
トルストイ『戦争と平和』
メイヴィル『モービー・ディック(白鯨)』
エミリー・ブロンテ『嵐が丘』
スタンダール『赤と黒』
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
フローベール『ボヴァリー夫人』
オースティン『マンスフィールド・パーク』
ずらりと並んだベストセラー。モームは「読書は楽しくあれ」という主義の持ち主である。よって本書には、モーム自身が「面白い」と感じた書物のみ堂々と取り上げられている。
しかし、モームがただ単に「楽しいだけの読書」を肯定していると早合点してはいけないようである。それは本書の中ほどにある「ベストセラー論」に見るモームの書物に対するある毅然とした態度から察せられる。以下に引いてみる。
「わたくしは、話を、当然古典と見なして差し支えないと思える書物だけに限るつもりである。最近の書物には一切ふれない。それは、ひとつにはわたくしが十分な知識をもっていないためであり、またひとつには、過去五十年間に出版された莫大な数にのぼる作品のうち、そのどれが永久に特異な価値をもちつづけるか、いまのところ時期尚早で、なんともいえないからである。
一部の人びとが考えているのとはちがって、ある書物がひじょうに多くのひとに喜ばれ、その結果、ベストセラーになったことは、その書物がぜんぜん無価値であるという証拠には少しもならない。…『戦争と平和』にせよ、いずれも昔からベストセラーであったではないか。だが、だからといって、ベストセラーであることは、その書物が傑作であるという証拠になるわけのものでもない。…
わたくし自身のやり方を申せば、わたくしは、出版後二、三年間は、ひとがなんといおうと、それらにつられてベストセラーをよむことがないように心がけている。世間でひじょうな歓迎をうけている書物で、出版後二、三年もたってみると、よまないでおいても、わたくしとして一向につうようを感じない書物になってしまっているのがいかに数多くあるか、まことにおどろくほどである。」
読書は楽しみのためにある。ただし、モームは「永久に特異な価値をもちつづける」ような傑作を選定する眼や、乱読を制する心構え(出版後二、三年間は読まないほどの心構え!)をもつことの大切さを、あえて強制はしないけれども、自ら示しているのである。
まこと、モームが偉大な小説家になったのも頷けるというものである。
紙の本
世界の文学に出逢える本
2003/04/02 22:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yurippe - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者は言うまでもなく、『月と六ペンス』などの作品で知れられるイギリス文学の巨匠です。
そして、大変な読書家でもあったモームは、後世の本好きのために素晴らしいガイドブックを遺してくれました。
本書は「イギリス文学」「ヨーロッパ文学」「アメリカ文学」の3章からなり、それぞれの名作の魅力を余すところなく伝えてくれます。
スウィフト、ディケンズ、エミリー・ブロンテ、セルバンテス、ゲーテ、トルストイ、モンテーニュ、スタンダール、プルースト、ホーソーン、メルヴィル、ポー……etc.
何だか見ているだけでもワクワクするラインナップです!
「以下にかかげる書物は、あなたが学位をとる助けにもならなければ、生計を立てる役にも立たないであろう。そのかわりに、あなたがより充実した生活を送ることには役立つであろう。」(本文より)
このポリシーのもと、モームが編んだ本書は世界の文学の入門書として、比類なき秀作です。
「難しそうだから…」と敬遠しがちな文豪たちの著書も、するりと手に取れるよう、心のバリアを溶かしてくれるステキな読書案内です。
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小説は読めないといっている輩は、想像力の欠けたものか、他人の身になって考えることが出来ない人間だと。この言葉に心を打たれ、目頭が熱くなった。自分の考えはまだまだ狭いことに気づかせてくれた。
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「月と6ペンス」、「人間の絆」など著名な作品の多いモームの小説案内。ちなみに原題は"Books and you"だとか。小説とは、自分が楽しいか否かで読むべきで、ちょっとでも合わなければ、読むのをやめていいし、面倒・退屈だと思った部分は読み飛ばしてかまわない、とさらりと言ってのけるあたりが好ましい。取り上げているのは、イギリス文学・ヨーロッパ文学・アメリカ文学から。例えば、ディケンズ、ゲーテ、トルストイ、ドストエフスキー、ポーなど。モームの語り方は何となくだが、好きだなぁ。
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いろいろ読みたい小説が増えた。
『クレーヴの奥方』の夫が気になる!
2010.10.16 購入/2010.11.14 読了
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本とあなたの素直な関係。そんな本。
名著と呼ばれる本や、まわりの人達がみんな面白いという本を楽しめなくても気に病むことはないんですよ。
たとえどんなに他の人と似ていても、あなたは他の誰ともちがうあなたであるように、その本はいまのあなたには必要がなかっただけなのですから。
なんつーと、胡散臭いがまあそんな本。そういった本来的ではない、本と自分の関係の外にある、社会的な、見栄やら虚栄やら群れ意識やらをさて置いて、本とあなたとのニュートラルな、シンプルで率直な関係に戻そうや。そのために、合わない本は率直に合わないでいいし、つまらん部分は無理して読むことなんてせず素直に飛ばしちゃっていいじゃん。そんな感じ。
そういった意味であとがきはとても良心的。さっそく文を読み飛ばす練習ができるんだから。
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ようやくモームの文章を読んで、素直におもしろいと思えた。要するにこの人はフィクションよりもエッセイの方がおもしろいらしい。もともとは雑誌に掲載されたもので、世界文学(といってもイギリスとヨーロッパとアメリカだけなんだけど)の中の、誰が読んでも文句なしに称賛できる、素晴らしい精神的富となる作品を紹介したエッセイ。「読書は楽しくあるのが本当だ」「一流の批評家がほめたたえようとも、あなたにとって興味がわかないのなら、その書物はあなたにはなんのかかわりもない」と堂々書いてみせるモームは、古き良き時代のイギリス知識階級の最も美しい姿を示して見せていると言える。色々な文学者へのモームの感想やコメントも、もったいぶっていなくて楽しい。
ちなみに。ここでもやっぱりトルストイの「戦争と平和」は壮大なすばらしい小説として称賛され、そのヒロインは「小説にあらわれたもっとも魅惑的な女主人公」とほめちぎられているのだが……私には、気分に左右される、一貫性のない、いつもその場限りで行動する頭の悪い女性にしか見えなかったのだが。うーん。モームの時代では彼女が魅力的だったってこと? それとも男の視点と女の視点の違い? 単に私の趣味が世間と違うだけ?
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楽しむための読書の姿勢に目が覚める思いをした。偉大な傑作と思っている書でも欠点があれば率直に記す態度にもさわやかな心地がした。
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古典文学…読んでないなぁ…
読みたいリストがまた一気に増えてしまった。
著者の好きさ加減が伝わる解説で、さらに読み飛ばしたっていいと、言われたら、手を出してみるかとなってまう
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「読書」という行為を改めて考えさせられた。読書は楽しいものだという原点を思い出させられた。
文字を読んで感動する、良く考えれば不思議だと実感した次第である。
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たとえ傑作と呼ばれるような小説であっても、自分がつまらないと思った箇所は読み飛ばして読んでも良いのだという考え方がなかなか衝撃的。
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「ある書物について(中略)あなたの興味をひかないならば、
その書物はあなたにはなんの関わりもないのだ。」
「読書の習慣を身につけることは、人生のほとんどすべての
不幸からあなたを守る、避難所ができることである。」
「ひとに何かを求めるときには、そのひとにできない
ものまで望むようなことがあってはならない。」
「読書はひとつの楽しみである。人生があたえてくれる
もっとも大きな楽しみのひとつなのである。」
「彼女は天賦の才能にめぐまれていた。しかし、
大した才能ではない。」
モームだなぁ。好きだ。
原題の"Books and you"が好き。邦題の「読書案内」も良い。
モームおすすめの本はいくつか読んでるものもあった。英文学を専攻していた身としては少しホッとした。
一つもなかったら「学生時代なにしてたんだろう…」と
思うところだった。。
しかし
「ひとに何かを求めるときには、そのひとにできない
ものまで望むようなことがあってはならない。」
なんてもう読書を超えて人生論だなぁ。
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古いけど、この頃から薦められている本は、今でも名作とされているのだなぁと気づかされた。もう、手に入らない本は、古本か図書館で探して読んでみたい。この著者の本からまず読もうと思う。
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『月と六ペンス』で有名なイギリスの作家サマセット・モーム(1874~1965年)が、米国の週刊誌「Saturday Evening Post」誌に連載したものをまとめ、1940年に発表したエッセイ集『Books and You』の翻訳である。
邦訳題の通り、イギリス文学、(その他の)ヨーロッパ文学、アメリカ文学の代表的な作家約40人、及びその作品についての評価が主であるが、読書についての心得なども綴られており、幅広く楽しめる。
心得としては、「わたくしがまず第一に主張したいのは、読書は楽しくあるのがほんとうだ、ということである。・・・ある書物について、学識ある人びとがなんといおうと、また、どれほど口をそろえてほめたてえようと、あなたの興味をひかないならば、その書物はあなたにはなんのかかわりもないのだ」、「かならずしも一冊ずつ片づけてゆかねばならぬということもない、とさえわたくしは考える。わたくし自身についていえば、同時に四、五冊の書物を読むほうが、わたくしの気持ちに一層ぴったりくる」、「とばしてよむことも読書法の一つ・・・『カラマーゾフの兄弟』のおわりの数章は、うむところを知らぬ読者でもなければ、とうてい完全にはよめるものではないのだから。・・・人びとの趣味がかわったため、すぐれた書物であっても、そのある部分は、現代の読者にとっては退屈でしかない」等。
また、作者・作品についてのコメントもなかなか刺激的である。
例えば、「誇張、卑俗、饒舌、感傷癖など、欠点はいろいろあるにせよ、やはりディッケンズが(英国)最大(の作家)である。彼はじつにおどろくべき作家である。彼がえがく世界は、わたくしたちが知っているそれとはちがう。・・・同じことができたのは、わたくしの知るところでは、彼のほかにはだひとり、トルストイのみである。・・・ディッケンズにたいし、ジェイン・オースティンは完璧な作家である」、「わたくしは、楽しく思えないような書物は、よんでもむだである、いっておいた。だが、いま『カラマーゾフの兄弟』の話をする段になってみると、わたくしは躊躇をおぼえる。この・・・小説を、はたして楽しんでよむことができるかどうか、疑問に思えるからである。・・・」、「最後にわたくしは、現代にマルセル・プルーストという過去の最大の小説家と肩を並べうる作家が出ていることを、注意しておかねばならない」等。
因みに、付録に掲載されている、モームが本書の後で選んだ「世界の十大小説」は、『ゴリオ爺さん』、『トム・ジョーンズ』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『戦争と平和』、『白鯨』、『嵐が丘』、『赤と黒』、『カラマーゾフの兄弟』、『ボヴァリー夫人』、『高慢と偏見』である。
(2006年1月了)
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モームにとってみれば、やっつけのエッセイの一つなのかもしれない。余計な力の抜けた、奇矯なところのない、世界文学(といっても西欧に限る)名作リストアップである。
ほぼ定番のリストであるが、さしもにイギリス文学で紹介されるものは、日本人としてはなじみの薄い人も結構でてくる。