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200人以上の専門家を執筆陣に迎えた事典だが、コンパクトによくまとまっている。
基本的にはアカデミックよりの内容だが、執筆者に大沼忠弘、鎌田東二、
松長有慶といった名前があることを見てもわかるように、スーフィスム、道教、
霊学、マンダラ、気、ヘルメス思想、マントラ、オカルティズム、唯識派、
神智学、カバラ、憑依といった神秘主義関係の項目も数多く取りあげられている。
当然、中心となる項目は、人文系、社会科学系の共同幻想、機械の中の幽霊、
いき、知の考古学、呪われた部分、パレート最適といった20世紀にもてはや
された用語だが、カタストロフィ理論、統一場理論といった自然科学系の
項目も幅広く収録されている。
神秘主義に興味を持つものが、初心者向けの本を卒業し、専門的な本を
手に取った際、言葉遣いが難しすぎて途中で何を言っているのかまったく
わからなることが多い。
その理由の一つとして、一見普通の日本語に見える単語が、実は翻訳文化の
際に少し特殊なニュアンスを持たせられた言葉を、そうとは知らず軽く流して
しまっているためだったりすることがある。
この事典で、カリスマ、他者、存在、実質、統合、同一視、超越、真理、儀礼
といった言葉を調べてみると、分野や研究者、時代によってそれぞれ
微妙に違う意味を持たせてあることが分かる。
また、ルサンチマン、レトリック、イデオロギーといった雰囲気だけで多用
されている外来語についても、これまでのいきさつを絡めて詳しく
解説してあるので分かりやすい。
昨今はぐぐればそれっぽい解説はすぐに得られますが、こういう事典系については何か一つ気に入ったものを手元に置いておいて、読書の際に参照すべきだと思います。