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そういう話を聞きながら、彼はこんなに人がしあわせそうに生きている土地は他にないと思った。食べるものは山と畑と川からもたらされ、湧き水が涸れることはない。お金はあまり村に入ってこないけれども、お金で買うのは服地とか、紙巻きタバコとか、懐中電灯の電池とか、そういう雑貨ばかり。キセルで吸うタバコならば自分たちのところで採れるので間に合う(吸わせてもらうと、とても甘いいい味がした)。
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本文より。
大人の絵本。絵本といっても、ほんとの大人向け。そういう本って、ふだんはあまり読まないんですけど(好き嫌いではなく、貧乏性なので薄くて高い本には気後れしてなかなか手が伸びない。映画のパンフレットとか)、でも、池澤さんの本だから……!(←ファン根性)
読んでみて、池澤さんらしいお話だなあと思いました。絵は渡邊良重さんという方で、シンプルな挿絵がなんかほっとする感じ。
村で作ったミカンを籠に抱えて、山の上から延々と歩いて下り、町まで売りに行く人々。畑の世話をし、ヤギを飼って、病気になったら祈祷師に病気を追い払ってもらう暮らし。
言葉の通じない異国、昔ながらの暮らしをしている山中のちょっと不思議な村に、いっとき自分も迷い込んだような気分になりました。