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紙の本
鏡のなかの鏡、のなかの鏡、の……
2004/09/10 16:45
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投稿者:亜李子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
それは牡牛の頭をもつ怪物の住む迷宮である。
一瞬でも自分の存在について不安を覚えた人は、この作品のいい読者になれるだろう。然し、あなたがこの作品を読んで感じるようには私は感じない。この迷宮は、あなたの迷宮なのである。
最初から耳を傾けながら読まなくてはならない作品である。書き出しの「許して、ぼくはこれより大きな声ではしゃべれない」いう文章には、息を潜めてさえその声を読み取ろうとしてしまう。その時点で既に迷宮に呑まれているとも知らずに。
三十に分けられた章段に、全く関連のない物語が綴られているようにも思えるが、その根底は皆同じものである。
本の終わりには司修氏の解説が載っているが、それは迷宮に対する解説ではない。彼が迷宮に出したひとつの答えにしか過ぎない。そのため、その説明は人口に膾炙した「歴史」から抽出されたものである。だが、それが「世界の記憶」であるとは誰が証明できよう。また、それを本当の答えとしてしまうのは些か軽率である。大なり小なり「世界の記憶」のなかではそれと同じようなことは数え切れぬほど起こってきた。
この物語たちが象徴する世界とは、どこにでもある世界なのである。あまりにも瑣末であなたが気付かないだけかも知れないし、気付いたとしても何のことはないと一蹴してしまった世界である。だからきっと、思い返してみればひとつに限らず類似する世界があなたのなかにあるだろう。
この一冊では三十章で終わっているが、それは終わりではなく、境界なき世界のひとつの視点である。糸玉を持たぬ英雄は永遠に迷宮で迷い、そして怪物になるのだろうか。そしてまた、迷宮のなかから物語は始まる。
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