紙の本
瑞々しい青春小説、老人パワー炸裂奇ッ怪小説!
2002/06/13 03:29
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投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄テイストのこの物語、とにかくとんでもない登場人物が多数登場する、とんでもない話なのだ。池上永一は『バガージマヌパナス』で第6回ファンタジーノベル大賞を受賞しデビューした人だが、『バガージマヌパナス』はファンタジーノベルという割にはファンタスティックな要素を少ししか持っていなかった。しかし、受賞第1作であるこの『風車祭』はすごいぞ。沖縄を舞台にしていることはデビュー作と同じだが、瑞々しい青春幻想小説で、しかも老人パワー炸裂の痛快奇ッ怪小説なのだ。
主人公は、一応、武志という高校生である。この少年、なんかとてもいい子なのだけど、少し存在感が薄い。それもそのはず、彼のまわりにいるのは、変人奇人怪物ばかり。一番すごいのは仲村渠(なかんだかり)フジという96歳のオバァである。フジは若いときから「長生きする」ことだけを望み、そのためだけに生きてきた。その生に対する執着心、身勝手さ、お気楽さ、無責任さは、もう、呆れるのを通り越して小気味いいほどである。その他の登場人物も一人一人が強烈だ。二百五十年の間さまよっている魂だけの美少女ピシャーマ、そのお供の健気な六本足の妖豚ギーギー。神と交感して不思議な絵を描く浮浪者兄弟、炎天下に腐りかけた残飯をあさる残飯オバァ。こういう途方もない連中が、真夏日の沖縄で無責任に暴れ回るのだからたまらない。
ストーリーは破天荒かつ複雑。ひとくちには説明できないので、ぜひ手にとってお読みいただきたい。できれば、何も考えられないくらい高温高湿の寝苦しい熱帯夜に、お気楽な気分で、能転気に、どうぞ。
紙の本
異世界風現実世界
2001/06/25 16:49
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投稿者:齋藤麗奈 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本を手に取ったとき、その重量感に一瞬売り場に戻しそうになってしまった厚さなのだけど、これが読み始めると止まらない。
石垣島を舞台に、主人公である、まだまだ純朴な少年武志、可憐な少女幽霊のピシャーマ、一途な、しかし迷惑千万な豚のギーギー、それ以上に大迷惑かつどうしようもなくパワフルなオバアのフジを中心に繰り広げられる大スペクタクル・ストーリーなのである。
不条理なまでにパワフルで大迷惑なオバア、フジにしっちゃかめっちゃかに振り回されまくる登場人物。武志の純情な恋。そして何といってもこの物語の中でいちばんに、楽しくわくわくして、爆笑をまじえつつ、どうにも泣かされてしまうのが、豚のギーギーの武志への恋。
とても同じ日本の中の話とは思えない、けれどそれは海を越えて、石垣島に行けば、そこにフジや武志が本当にいて、ちょっと運が良ければ(悪ければ?)ピシャーマやギーギーにも会えてしまうのかも知れない。そんな風に思えてきてしまう、それはまさに異世界風現実世界。
なにしろ本の分厚さに見合うだけのおもしろさがあります。536ページ怖れずに、まずははい挑戦!
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二度目の正直で中身を開きました。
この人の文章は読みやすいので、本の厚さの割りに読み始めるとあっという間でした。
前に読んだ「夏化粧」はオンラインか何かの連載だったそうで、そのときそのときでこっちに飛び、あっちに飛び、という感じが非常に不安定で読みにくい感じがしたのですが。カジマヤーは一本調子で貫かれていて、非常に読みやすい話だった。
私は物語というのは一本の大きな川で、作者はその川で川くだりをする船の船頭さん、読者というのは船頭の操る船に乗る人々、だと思っています。
船頭は川を下る楽しさの全てを乗っている人に伝えなくてはならない。
静けさも急流も、間間にある奇岩、景勝地、全てのポイントを下流に着くまでに回らなくてはならない。船はスピードがなくっちゃつまらない。けれどもスピードが速すぎると景勝地を全て回るために船を操るのが難しくなってしまう。
そのバランスをとりつつ、面白い景勝地を上手く回っているのが「風車祭」だと思う。
「夏化粧」はね、操ろうとしてはスピードが落ちすぎて、スピードを上げてしまうと景勝地が全然回れなくって、みたいなところがあったかな、と。
この話は、読んでみて「白き魔女/Falcom/PCゲーム」だな、と思った。
物語の持つ基本構造、いいたいテーマなんかが同じなのだと思う。
「白き魔女」の持つ基本構造がやはり、RPGの元祖「指輪物語」からきているのだとすれば、物語の種類、というのは実のところとても数が限られたものなのかもしれない、とも思う。
でも。
じゃあ、「カジマヤー」と「白き魔女」が似ているのかというとほとんど似ていない。
「カジマヤー」に流れる極彩色の奔流は「白き魔女」にはないし、逆に「白き魔女」がもつ月の光のような繊細な物悲しさは「カジマヤー」にはない。
同じ物語の軸を使っていたとしても、まったく同じ物語というのはありえないんだなあ……としみじみと思いました。
最後の方は感動を一気に感じたくて夜更かしして読んじゃったけど、つらつらとこの色彩の川流れる世界に身を浸してみると、世界が色鮮やかに見えてくるような気がします。
モノクロームの世界に飽きてしまったら一読をお薦めします。
(20040426)
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沖縄の八重山の島が舞台のファンタジー。
嫁入り行列の最中に神の力でマブイ(魂)だけの存在になって226年も島をさまよって存在する娘ピシャーマ。
高校生の武史は偶然ピシャーマと出会い、恋に落ちる。しかしマブイとの恋は成就するのか?
島一番の大嘘つきで命根性の汚い中村梁フジオバア(96歳)の陰謀や、妖怪豚のギーギー、武史のことが好きな同級生の睦子などがおこす騒動によって話はどんどんややこしくなっていく・・・
笑いあり笑いあり、という感じでこの長さでも最後まで勢いが衰えない。
そんな中、島の伝統的な祭礼や御嶽の由来、魂とマブイの概念など、「沖縄ごころ」みたいなのがたっぷりと語られていて読んでる間中心はもう島人である。
もちろん本当は、島人は島人でも試される北の大地なのだが。
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長生きに異常な執念を燃やす島のオバァ、フジは、九十七歳の生年祝い
「風車祭」を無事に迎えようと、家族や島人を混乱の渦に巻き込む。一方、
神事を怠り危機に瀕した島の運命は?島の祭や呪術を背景に、オバァや巫女、
六本足の妖怪豚が大活躍する、生命力とユーモア溢れる壮大な物語。
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071030読了。長かった!!!石垣島を舞台にし、八重山諸島の伝承を交えた不思議なお話。でも、池上さんの書き口なので、とても読みやすく、おもしろい。マンガ化されているようなので、それも読みたい。
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石垣島を舞台にしたあの世とこの世とそして歴史を土台にした壮大なファンタジー。登場する場所場所は実際に石垣島にあるので、旅行の際には是非!探索を!!でも、十八番街(びっちんやまに行こうとした)だけは、市場のおばあに怒られてしまいました。。。(笑)
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図書館でふとタイトルが目に入って、借りたという偶然の出逢い。
沖縄好きなのでアンテナがキャッチしたんでしょう、きっと。
石垣島を舞台にした笑えるファンタジー?小説。
八重山の言葉も響きが面白くて読んでいて楽しい。
とにかく老人力がすごいんです(笑)
生きるためなら何だってするオバァ、読んでいるうちにすっかり虜になって
しまいました。
島が浸水した後に、子ども用のビニールプールを船にして、スーパーまで
強盗に行くようなオバァですよ!(結局沈没するんですけど)
もっと色々面白い話があるんだけど、ネタばらしちゃいけないからこの辺で。
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「〜。男なら、たとえみえなくても、声が聞こえなくても、好きでいつづけろ」
あぁーー、凄く良かった!!!
読んでいる時はもうこの長さと意味不明さに、ついていけなくなりそうなことがあったのだけれど、読み終わって、その後漫画まで読んじゃったりしたら、もうするめのように、噛めば噛むほど味が出てくる感じなのだ。
泣けるシーンは、何度読んでも泣けてくるし、再読破したくないけどどこかまた読みたい、、、なんて思わせてくれる1冊。
沖縄行きたくなったさー。
【2/14読了・初読・市立図書館】
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和製ファンタジー。
まずすごいのはフジオバァですな。
彼女はまるで妖怪です(笑)
生きる妖怪。
ふとしたきっかけで
マブイを落としてしまった武志。
しかしそれがきっかけでさまざまな
見えぬものとの出会いが…
途中生々しい表現がありますが
軽く読み飛ばせばよいでしょう。
沖縄の言葉が所々出てきて
どこかほのぼのとしている作品でした。
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沖縄ってやはり別の国だよね〜。習慣や祭りが独特だもの。そこがすごく魅力的。昔ながらの行事などは無くならずこれからも残って欲しい。
しかし、オバアが何人も一緒に暮らしているというのは大変な環境だろうな。ブジは長寿に関しては一歩も譲れないみたいだし。あれほど長寿に執着していれば長生きできるハズよ。何事にも動じずデーンと構えているふてぶてしさが魅力だね。自分の祖母だと面倒だけど(笑)。
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昨年の年末から1ヶ月半近く?かけての読破!! ホントに長かった。。。物語は、石垣島の1年を、マブイ(魂)を落とした少年とマブイを無くした花嫁、風車祭(カジマヤー)と呼ばれる数え97歳の祝いを迎えることだけに執念をかける96歳にして子供みたいなフジおばぁ、神に愛された浮浪者兄弟チーチーマーチュと、ターチーマーチュなど個性豊かな島人らが、ある神のお裁きに遭遇していく物語を、年柄年中執り行われている種々の島の祭に合わせて語られている、、、と言ったらスゴイお話のようであるが、10分の9ぐらいは、しょーもないおばぁの戯言と、淡い恋を妖怪ブタにジャマされる苦難の少年のしょーもない話であるw しょーもない話が長すぎて、何度もリタイヤしそうになったが、最後まで読んで良かったです。最後はウルルとしました。いつか、石垣島に行って祭に参加してみたいな。
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沖縄のことがもっと好きになる一冊。それにこれ程色々なお祭りがあるなんて吃驚する。本当に不思議な文化は面白さ満載だ。
池上さんの話しはオバアがすごく魅力的で面白い。フジオバアみたいな生き方って変に真っ直ぐで呆れて笑っちゃうのに、どこか憎めなくて優しいとこが良い。武志の成長を描いている部分もあるのかな?
途中はどうなるんだ!?と思うくらいバタバタと進んでいくけれど、思った以上に(?)純愛を含んだストーリーに仕上がっている。ギーギーが介入した部分があるので、ちょっと純愛から外れるような気もしないでもないけど…(笑)いやあ、結構長いです。でも全てで一つの話に落ち着いてるところが本当にすごい。
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物語が終わりに向かっていく高揚感が
なんとも言えないです(^-^)
壮大な映画のようです
神々の素晴らしさ
実在の島なのに
ファンタジーの世界でした
ピシャーマが、とても好き
主人公にしてほしいな
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多分、3度目の読了。
読み始めると鮮やかな沖縄の日常が目の前に広がる。
ひとつの事象について2点以上の視点から眺め、解釈して話が進む。
例えば、ピシャーマが良かれと思ってやった事が「アキシャビヨー」になってたり、伝説になったり…
この本を読むたびに沖縄に移住したくなる。
「だからよー」