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ふと、この 『フラゴナールの婚約者』 (みすず書房) を
読み返したいと思いました。
フランスの作家、ロジェ・グルニエさんの短篇集です。
手元にありません。
引っ越しなどにまぎれて、どこかに行ってしまった本です。
最初に出合ったのは、刊行間もない、8年か9年前です。
ちょうど、高橋源一郎さんの本を編集しているときです。
高橋さん宅に打ち合わせで行くと、
高橋さんの本棚にも1冊、見つけました。
ちょっと珍しい、濃いオレンジ色のカバーなので、
すぐに目につきます。
「『フラゴナール……』、いいですよね」(わたくし)
「うん、いーよねー」(高橋さん)
2人とも、そのまましばらく、黙り込んでしまいました。
2人とも、それぞれの読後感を味わっています。
少なくとも、わたくしには、そう思えました。
こうした出合いのころのことを思い出していたら、
また、どうしても、すぐに会いたくなります。
行方不明になった、この旧知の友を、本棚に探します。
やっぱり……いません。
音信不通の人間の友達を探すのは、大変な作業ですが、
幸い、本の場合は、本屋さんを巡れば、
再び出合うこともできるのです。
何軒目かで、再会しました。
あの、濃いオレンジのカバーです。
手に取って、カバーをなでてみます。
この手触りです。
外見だけではない。
版面 (はんづら)も美しい。
そういえば、この版面をまねて、
文芸書を編集したこともありました。
実際に読み始めて、驚きました。
最初に出合ったときとは、
お話の中身が、まるで違っているのです。
姿形はまったく同じなのに、8年か9年で、
こんなにも中身が変わるものなのだろうか。
旧友は、わたくしが知らぬうちに成長を遂げていたのです。
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諦めるというより人生と折り合いをつける、そして愛する。その境地でなおも純粋であることの価値を知ることができる物語。
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グルニエの短編集。グルニエの作品は初めて読んだが、最初から文学的インパクトがあった。気に入るフレーズも多かった。また、引用のセンスがいいと思う。好きだった作品は、「第六の戒律」、「春から夏へ」、「ウィーン」、「アルルカンの誘拐」、「三たびの夏」、そして表題作の「フラゴナールの婚約者」。(2011/11/12読了)