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紙の本
美しい詩のような言葉で空から舞わせた「女の一生」
2004/05/19 19:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい詩のような言葉たちで女の一生を空から舞いおろさせたお話。
主人公は水の結晶である「雪のひとひら」。ストーリーはいたって単純で、冬のある日、この世に天の高みから舞いながら誕生し、「雨のしずく」と結ばれ、子供を産み、艱難辛苦をくぐりぬけ、やがて巣立つ子供との別離、夫の死、自らの老いと死を迎えるという風に女性の生涯を「雪のひとひら」にたとえてかかれたもの。
言葉の無駄を削るだけ削って、磨き抜かれた詩のような言葉たち。
夫の死後、孤独と不安の中でついに息をひきとるとき、おのれの生きた意味を問わずにいられない〈雪のひとひら〉。つつましく誠実に生きてきた自分の一生は、ささやかな「雪のひとひら」にすぎず、それ以上でもなく、それ以上を望んだこともないことを思う。
ささやかながら人々の役に立ち、何ひとつ無意味なものはなかったことに彼女が気づくという最後のくだりは心を揺さぶられる。
誰しも不安におののいたり、自分は何のためにいきているのだろうかと自問自答するときがある。そんなとき、この本を読んでみるといいだろう。
安らかな温かみに包まれた読後感。
読後ふと、良寛さんの言葉が浮かんだ
わたしは
どこから 来て
どこへ ゆくのか
ひとり 生まれ
ひとり 生き
ひとり 考え
ひとり、を思う
始まりは
いつかの昔
終わりは
いつかの明日
そして
いま、ここ、に
わたしは、いる
それが
たしかな、わたし
紙の本
水はどこにでもある
2002/02/28 23:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
希代のストーリーテラー、ポール・ギャリコによって描かれた、彼女《雪のひとひら》が送る人生の壮大な流れの行き着く先と不変の愛……。
冬の日に、空高くに生まれた《雪のひとひら》。自分が何者であるのかも知らない彼女は、自分と同じ姿をした者たちと共にやがて地上に舞い降り、新たな世界を目にする。豊かな丘、流れる川、楽しそうに遊ぶ子どもたちやとげとげしい大人たち……。愛するものと出会い、旅をはじめた《雪のひとひら》は、一人が二人に、二人が一人になるような感覚を味わいながら、川の流れに身を任せてたゆたっていく。
ただ空を舞い降りるだけの存在であった《雪のひとひら》。彼女は、ギャリコの描いた多くの登場人物たちと同じ性質を持って生まれている。それは、女性であるということ。
ボクシングのチャンピオンをノックアウトしてしまったカンガルー、マチルダの冒険を描いた『マチルダ』(創元推理文庫)しかり、一匹の猫に自分が思い描く理想の女性像を照射したという『ジェニィ』(新潮文庫)しかり、孤独でやせっぽちな牝牛の思いを叶えた作品『ルドミーラ』(新潮文庫『スノーグース』に収録)しかり……。男性のギャリコは、小説家として女性を描くことに心血を注いでいたように思える。
そのまま人間の姿を伝えるのではなく、雪や牛などを擬人化するところも興味深い。雪の結晶は、他に同じ形が一つとして存在しない、またとない、他にはない《個》であり、雪として存在している以上は孤独な存在意外の何者でもない。それが水となって、他者と一体となる幸せを感じる、という自然の必然を使ってギャリコは一人の人間を、女性を描いている。彼の才能は、本当に稀有だ。
『雪のひとひら』では、ひとつぶの雪の結晶が地上に舞うようにして降り、地上では川の流れと一体となってただ流れていく様を通して、一人の女性がその一生を端的に美しく物語られていく。この物語で印象的なのは、この情景が女性的な語り口で伝えられていること。《雪のひとひら》の喜びや悲しみをすべて知り尽くした存在が、既に女性的であることは、ギャリコの描く普遍的な愛が女性という存在を通して伝えられていることの証しなのかもしれない。もちろん、彼は愛を女性だけの役割として押し付けているわけではない。ギャリコの小説家としてのアプローチが、不変の女性という存在であったというだけのこと。
この美しい小説がなにを伝えようとしているのか。そんなことは、この作品に触れた人がそれぞれに胸に抱けばいいこと。ではあるけれども、自分の感想を一つ、二つだけ。雪が水となり、川の流れとなって海に注ぎ、また空に昇って雲となるように、人の一生というのはなるようになる。水はどこにでもあるのだから。
紙の本
大人の女性向けのファンタジー
2001/10/10 16:49
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投稿者:あう - この投稿者のレビュー一覧を見る
”雪のひとひら”という一つの生命の誕生から消えゆく終わりまでが描かれており、生まれた意味、生きる意味、なんでもない日常が愛しく思えてくる人生の物語です。まるで自分の人生の物語を駆け足で読んでいるかのようでした。女性の方なら、同じ感想を持つ方も多いのではないかと思います。
雪のひとひらの喋り方も含めて、言葉自体がとても魅力的です。全体的な雰囲気も、静かで、ほかほかで、可愛くて、とてもいいです。最初から最後まで穏やかな気持ちのまま読むことが出来ました。原マスミさんによるカラーの挿絵もとても素敵です。