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『親鸞入門』(1971年、講談社現代新書)を中心に、著者が親鸞について論じた文章をまとめて再編集しています。
著者は「まえがき」で、本巻における親鸞解釈の基調となる考え方を提示していますが、そのなかに「仏教は念仏である」ということが含まれています。こうした著者の親鸞解釈は、本著作集の他の巻でも見られますが、本巻においても仏教の本質を「道」ということばで表現し、「大乗仏教は求道者の仏教である」と述べられています。そして、阿弥陀仏の本願とそれをめざす法蔵菩薩の求道者としてのすがたが、一念仏者として生きた親鸞に受け継がれているとして、仏教の本質が親鸞に受け継がれていると主張されています。
また、阿弥陀仏の本願を「願海」ということばで表現することに着目し、仏教における「海」のメタファーについて独自の考察を展開している箇所も、興味深く読みました。
歴史的アプローチによって親鸞の思想とその人物の真実像にせまるのではなく、著者自身の浄土教理解が濃厚に現われ出ている入門書だといえるように思います。こうしたアプローチには賛否両論があるでしょうが、個人的には啓発的な内容だと感じました。