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ディア ノーバディ みんなのレビュー
- バーリー・ドハティ (著), 中川 千尋 (訳)
- 税込価格:607円(5pt)
- 出版社:新潮社
- 発行年月:1998.3
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紙の本
高校生の妊娠を中心に「母性からの自立」や「身体性の希薄」など近代社会の問題をも描いた河合隼雄先生お薦めの1冊。英国カーネギー賞受賞。とても読みやすい小説です。
2001/05/28 00:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『いま、「いのち」を考える』という共著で、心理学者の河合隼雄先生がかなり力を入れて紹介していた本で、いつか読もうと考えていた。巻末には先生の解説も収められている。
ヤングアダルト向け、はやりの「朝の10分間読書」で中学生や高校生が読むといいんじゃないかな…といったイメージの内容。
ヤングアダルトや児童文学というジャンル分けはナンセンスという向きもあるようだけれど、「今日はちょっと軽い感じでイイ感じのものが読みたいなあ」という気分のとき、私はそういうジャンルの本が並んでいそうな書店や図書館の棚をさがす。
その場合、実に信頼できるブックナビが河合隼雄先生なのである。子どもの本の専門家のお薦め本には、時として肩透かしをくらって「ムッ」てしまうことがあるけれど、先生のお薦めにはそういうことがない。
それは、河合先生が数多い臨床心理の体験に照らし合わせて、ご自分の仕事の指標となるような本を求めたり紹介しているからで、ただ面白かったという種類の本でなく、面白く且つ深読みできる本を挙げてくれるからなのだと思う。
ヘレンという女の子とクリスという男の子は、大学への進学を希望している高校生。愛し合っている。ある日、ヘレンの部屋で雰囲気が盛り上がってしまって成り行きでセックスしてしまう。やがて、ヘレンの体の調子が悪くなって妊娠が発覚。
ヘレンとのことがあってから、クリスは、父や自分たち兄弟を残して家を出て行った母親のことが知りたくなり、父に母の家出の真相を尋ねて母へ手紙を書いて会いに行こうとする。「母親さがし」が始まるのだ。
ヘレンの方でも、別の意味での母親の秘密さがしが始まる。ヘレンの妊娠を知った祖母が「うちには悪い血が流れている。母親が母親なら、娘も娘」と口にしたことがきっかけ。だが、それは、ヘレンの母親が「できちゃった婚」だったのかという推測とは違っていた。実は母には自分が私生児だったということからくる苦しみがあり、ヘレンという娘との関係がぎくしゃくしてしまう事実があったのだ。
このように母親との関係が薄いテイーンエイジャーたちは、河合先生に言わせると「肌が恋しい」のであり、それゆえ「抱いてほしい」−−それが近代社会の問題として彼らの背後に横たわっていたという分析になる。「母性」や「身体性」の不足が10代の妊娠事件を通してうまく描かれた小説ということである。
お話は、男の子の方、クリスの一人称で展開していく。その間に、女の子の方、ヘレンの「ノーバディ」に向けられた手紙がさしはさまっている。
「ノーバディ」とは、ヘレンのおなかの中の小さな命である。それが本当に宿っているのかいないのか分からない段階から「あなたがほんとうにそこにいるのかどうか、わからない」「あなたなんかいらない。出てって」という語りかけがされている。
この邪魔に思われていた小さな命が、若いカップルにどういうものになっていくかが、お話のツボになっている。
爽やかな後味の青春小説である。
紙の本
(愛でなく)恋と性の、やるせない青春小説
2003/06/13 21:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
解説が河合隼雄!! だから過剰に期待してしまったのだが…。高校生カップルが、たった一度のコイタスで妊娠。取り乱す両親(とくに女の子の方)。カップルの恋の行方よりも、女の子の家庭の波乱と雨降って地固まる的再生をえがいているような。でも、このくらいで許しが得られる家庭なんて、最初からコミュニケーション不足なだけで、修復不能なほど壊れきっているワケではないのよネ、とイカレきった家庭出身の私は思うぞ。
現実に肉体が日々刻々と変化していき、新たな生命の成長を実感せざるを得ない女の子の深刻さに比べ、男の子がフラフラしていることったら! まあ、ティーンに父親の自覚を持て、っつーのがハナから無理なのか?? ラストまで、ひたすら身勝手で自分ばかり可哀想がる男の子が軽蔑もの。一見無責任極まりなく思える彼の結論も、ある意味、将来的には女の子のためになっているのかもな。
「男にたよらず、強く生きよう!」という、ウィメンズ・リブ推奨物語でありました。
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