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16人の異色科学者が紹介されています。
その中でも特に井上円了について造詣を深めたく読んでみました。
東洋大学の創立者でもあり好意的な評価されがちな人物ですが、筆者は非常にドライな見方で評していています。新鮮です。
井上円了の著作ではなかなか読み取ることの出来ない仏教への傾倒が記述されている点が独特です。個人的にはもっと深堀りしてほしかったけれども、科学者のオムニバス本としてはこれでいっぱいいっぱいなのかなあ。
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井上円了著作の「迷信解」「おばけの正体」「迷信と宗教」(全て国書刊行会発行)も読んだけれど、ブクログでヒットしなかったのでここにレビューを記します。
「迷信解」
日常の霊的と言われる不思議を十三段に分けて記しています。
内容はご多分に漏れず、人魂だと思ったら猟師の煙草の火だったとかそういう偽怪を究明するものです。
非常に読みやすい実話を引っ張ってくるのは、仏教における説法と通じるものがあるように感じました。
「おばけの正体」
これも「迷信解」と同様の構成です。127の怪談話は全部勘違いだったねというオチです。で、真怪は人であるというまとめ。
「迷信と宗教」
上記2点と構成はほぼ同様ですが、迷信話が世界5カ国から日本の各地方まで多岐に渡り、読み応えがあります。各国各地方の文化比較の指標にもなるかも。それは言い過ぎか。いや言い過ぎじゃないか。井上円了の著作は哲学的というよりも、民俗学的資料価値のほうが高いという点は確かにあると思います。
また、宗教と迷信の違いについて下記のように言及しています。
宗教=道理に基づき、超理的性質を有する/迷信=非道理的である。
宗教は有利無害であり、迷信は有利有害または無理有害もしくは無理無害のどれかしかでないとのことです。