紙の本
場所が保持する人生の記憶
2009/11/25 22:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ホキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真をよくみると、園庭に遊具の影があったり、窓際に日が射していたりすることから、本書は文字通りの「夜の」幼稚園を描いたのではない。
では、「夜の」とは何を意味するのか。
それは、「目に見えない」「理性では捉えられない」こと、ここでは、幼稚園のあちこちに埋め込まれた「場所の記憶」を指す。
有名な『まっくら森のうた』の「光の中で見えないものが、闇の中で浮かんで見える」という歌詞を参照するとよい。
光-それは理性・意識に対応している-にもとずく、「あれは○○である」「これは△△のためにある」という「見える世界」の知識を取り払うことで、より身体や情感に根差した、知覚されない、すなわり「見えない」知識が露わになるのである。
本書がなんとなく恐く感じられることがあるのは、「見えない」世界を提示されることで、意識のレベルでは自己解体の不安がよぎるからである。
見えない知識は、理性による知識と異なり、輪郭はぼやけ、「……である」と明確には規定できないものである。本書の中の、語彙としては意味を成さない音声の羅列がそれを表している。
また、絵本の読み手にとっては、この言葉にどのようなリズム・情感を乗せて読むかによって自分の解釈や個性を発揮できる。
明確には捉えられないこれらの「場所の記憶」に属する知識は、しかし、理性による知識以上に、人間個人の生命力の源泉を担っている。たとえば、われわれ大人にも「思い出の場所」がある。その場所は、その人固有の経験や人間関係と結びつき、固有の価値を持って、その人の人生を彩り、生きている実感をもたらすのである。
「場所の記憶」とは、こうして、一義的には「私が記憶する、その場所についての記憶」であるが、私自身の主観に視点をおき、それが「見えない」ことを考慮すると、あたかも/まさに、「その場所が記憶する、私の人生の重みづけ」である。
そうした記憶の集積地である幼稚園の「夜」を描いた『よるのようちえん』は、「(今は大人になった者も含む)大勢の幼児が、自分の人生を作り上げてきた思い出がしみ込んだ場所」という、幼稚園の性格を見事に描き出しているのである。
本書が描く「場所の記憶」の観念は、マニアックな姉妹作『白ゆり50年』でより分かりやすく提示されている。
紙の本
ふっと素敵な夜の世界観
2021/12/20 10:34
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投稿者:とらこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
よるのようちえんに現れる不思議な小人?妖精?さんの物語。
物語といっても、何かをするわけではないのです。
どういう存在かも分かりません。
ただそこに、たたずんでいるだけ。
幼稚園のあちこちに、そっとそっといる。
その言葉の響きと世界観がたまらなくいいのです。
何も起きない物語。でも、なんだか読み終わると穏やかな気持ちになります。
紙の本
よく知っている、誰も知らない場所
2016/09/20 15:50
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投稿者:coco - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日通って、慣れ親しんでいる幼稚園も、見方を変えると、とたんに不可思議な場所に早変わり。
小人のような妖精のような不思議な生き物たちが現れて、幼稚園は夜もやっぱりにぎやか。
見慣れた場所を不思議な空間に変えてしまう、ことばの魔法使い谷川俊太郎さんの魔法に感服。
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谷川俊太郎さんのとっても不思議な感覚の絵本です。よる、だれもいないようちえんで、ふしぎなものたちが動きしゃべり…そして朝がくると消えていく…。
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これはこどもが3〜4才の頃に図書館で借りた本。
言葉の持つリズムが楽しくて何度も何度も借りては読んでいました。
さすが谷川俊太郎です。
よるのようちえんで遊んでいる不思議な生き物たち。
こどもが特にお気に入りのページは、不思議な生き物たちが全員集合する場面。
すごい早口で一気に読んであげると、ゲラゲラ笑います。
物語を楽しむというよりかは語感を楽しむ絵本なので、小さい子でも楽しめるようです。
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ユニークなコトバとリズムが心地良い作品。ちょっぴり怖くて、面白そうな“夜の幼稚園”。そっとさん、さっとさん、すっとさん…etc.と、いろんな仲間が集まって…「ホントにこんなのがいたら、どうする??」おもしろがりながらも真剣な顔で私に聞いてくる子どもたち。巻末には谷川俊太郎さん作詞、谷川賢作さん(谷川さんの息子さん)作曲の『よるのようちえん』の歌が楽譜付で載っていました。さっそくキーボードで弾きながらみんなで謳ってみたら、不気味でかえって面白かったです(笑)。以後、たま〜に鼻歌で子どもたちが歌っています。よほどインパクト強かったのでしょうか。
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絵本だけど、これはもはやアートです。
コラージュで出来ていて、言葉も不思議。
擬音なんだけど、普通は使わないような
言葉にリズムが感じられる。
是非体感してください。
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誰もいない幼稚園。そこに現れたのは
「そっとさんが かおをだしました」
「そっとさんが きょろきょっりん」
「すっとさんも きました」
「すっとさんは すっ とん とん」
この後も、ぱっとさんにぬっとさんに、ぽっとさんも登場します。
夜が明けると 「さよよよんならららら〜ん」 と帰って行きました。
谷川俊太郎さんの文に、中辻悦子さんの絵と写真の不思議な世界。
読んでいると、なんだか楽しくなるそんな絵本です。
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この本を借りたのは今回で2度目。
夜の幼稚園で遊ぶ不思議な人(?)達と
文章のリズムとが娘のツボみたいです。
文字数が多くはないので娘(3歳現在)も読めます。
3歳7ヶ月
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子供達が帰ったあとの、ひっそりとした幼稚園。
あちこちから不思議な生き物たちがやってきます。
いいえ、どこかに隠れていたのかもしれません。
下駄箱の間や園庭やトイレにも。
まるで可愛らしい妖怪みたいに遊ぶ生き物たち。
そうそう、そんなこと夢の中のことだと思っていたけど…
本当にそんな生き物たちがいるのかもしれません。
子供はきっとドキドキしながら想像しちゃうでしょうね。
そしてまわりにお友達がいっぱいいても、
もしかしたら…と思って椅子の下や階段の裏なんかを
そっと覗き込んでしまうかもしれません。
谷川俊太郎さんの本。
絵と写真は中辻悦子さんという方が描いています。
最後に「よるのようちえん」の歌と楽譜があるのですが、
ちょっとピアノで弾いてみました。
この絵本にぴったりな不思議で幻想的な曲です。
この絵本をお読みになったら、ぜひ歌ってみてください。
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谷川さんの語感豊かな言葉遊びと、ネガにクレパスで色を塗ったような写真が素敵な絵本。だれもいなくなった夜の幼稚園に不思議な仲間たちが集まってきます。このちょっと怖い感じ、こどもは惹かれますよね。
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谷川さんの絵本の中で一番好きな一冊です。ちょっとこわい、でもとても楽しい、夢と現実の狭間の世界が子どもにも人気。三歳児に読み聞かせ。五歳の今でも時々。
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ようちえんはまっくらですもうだーれもかえりました。せっとさんがきました。すっとさんもやってきました。すっとさんはすっとんとん。さっとさんもきました。さっとさんはさっさかせ。じっとさんはぷんぷくりん。あれぜっとさんがわらってる。ぜっとさんはえへへのへ。ぴぽぺてぽ。いつのまにかぽっとさん。ぽっとさんはあっちっち。ぽっとさんはゆめのなか。ぽっとさんはほんわほわ。さよよんならららーん。
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谷川俊太郎さんの本らしく、登場人物の名前や絵に遊び心が溢れすぎてよくわからない本ですが、他の本にくらべて、この本では題名から、「夜のようちえんに何か人外のものが出てくるんだろう」と予測できるので、ストーリーや展開をさほど気にせず、登場人物と一緒に楽しんでページをめくれる一冊です。
絵が、写真を基盤にして面白いのですが、写実的雰囲気に人外の生き物?が出てくるので、そのアンバランスをおもしろいと思うか、不思議なものとして怖がるか、子供によって反応がびみょーかもしれない一冊です。
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夜の幼稚園には、誰もいません。ところがしばらくすると10人の見た事のない生き物がやって来ました。10人は幼稚園の中で宙返りをしたりプールに入ったリして遊びました。空が明るくなってくると、みんなどこかへ消えて元の幼稚園に戻ってしまいました。
子ども達の知らない夜の幼稚園がユニークに描かれていて、夜の幼稚園はどんな風なのかと興味をそそります