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『英語教師のための英文法』の続編ということで、感想は前編と同じ。前編よりも、やや用例が多くなった印象がある。話題は準動詞、助動詞、関係詞、比較、法、前置詞、名詞、形容詞など。
今回も勉強になったところをメモしておく。まず規範文法の話になると必ず出てくる「分裂不定詞」について、「よほど改まった書きことばでなければ、分裂不定詞は極めて普通の語法だと言ってよい」(p.43)ということで、分裂せざるを得ない例としてYour job is to really make the club a success.(本当に成功させること)でYour job is really to ~(本当の仕事は)になってしまう(p.39)は、面白い。闇雲に批判するのではなく、必然的に分裂されているというものもあることが分かり、ここを見抜けないとだめだと思った。ところでp.43の「疑似分裂不定詞」については調べようと思った。あとはwouldを見たら仮定法、と単純に教えられることがあるかもしれないが、まず「何らかの文脈抜きに、いきなり時を表す表現を伴わずにこの助動詞が使われることはないことになります」(p.67)ということで、さらに、もともとwillが主語の意志を表すところから、"She would say that."(彼女ならそう言うだろう)とか、"It would rain on our wedding day!"で「よりによって私たちの結婚式当日に雨が降るなんて」という意味になる(pp.66-7)、というのも面白い。
また、今まで考えもしなかったけど、関係詞の非制限用法には「同格用法」と「継続用法」の2つがある(pp.92-4)というのも、言われてみれば、という感じだった。つまり、文中にあるもので、"Bill, who is now staying in Rome, says..."のような主節と緊密に結びつかず、支持物に対する注釈、補足説明になる「同格用法」と、"The mother put me towards the child, who presently seized me by the middle."(子供の方に連れていき、子供はすぐに私の腰のあたりにしがみついた)のように、日本語にすれば前から順に訳していき、主節と関係詞節が同等の関係になる、というのもなるほど、と思った。さらに、関係詞の非制限用法と言えばコンマ、と思っていたけれど「出来事の時間の前後関係を明白に示す文脈にあっては、コンマの有無がその文法性に決定的な影響を与えるほど強くない」(p.96)というのも初めて知った。他にも「望遠的関係詞構造(telescoped relative construction)」という言葉を初めて聞いたが、これは難しいなあと思った。"He knows that is his background - the wealthy and fashionable world."のような文のことを言うらしい(p103)。"This model is Lisa Trehot who frequently posed for Renoir."のwhoの先行詞はmodel(p.104)、"and I pointed out Miss Duvall who was at the telephone and told him that was the girl I wanted shadowed."のwhoの先行詞はthe girl(p.105)とか、難しい。
Q31の「代動詞の存在と倒置の生起」(p.173)の話で、「英語では代動詞の使用も倒置もごくありふれた現象であるにもかかわらず、なぜこのような疑問が生じるのでしょうか。それは、学校文法を含めて、たいていの文法書が比較構文を扱う際に例文を文脈抜きで挙げ(中略)、その構文の談話の中での機能をあまり考えないことに起因するのでしょう」という部分は全くその通りだと思った。倒置を成立させるだけの文脈がない、ということで、文法の授業であっても「中文読解」みたいなものが必要なのではないかと思った。
名詞や形容詞なんかの話は語法的な話題になるが、例えば"It was absurd for Frank to open that restaurant."と"...of Frank to...."の違い(p.204)というのも、そもそもabsurd for Frank toみたいな文を見たことがないだけに、考えてしまう。さらに、It for toで片付けるけれども、それにも"It's common for the free way to be crowded at rush hour."(p.214)みたいなものと、"It is dangerous for Tom to leave town now."(p.209)とは違う、というのも気づかなかった。さらに、p.200にing形が「させる」になる「心理動詞」の例が挙がっていて、こういうのをまとめて生徒に提示するのはいいかもしれないと思った。
最後にアメリカ英語とイギリス英語の語法に関するQAがあって、「7時20分前」は米で"It's twenty minutes of/to seven."のように、ofが認められることや、"While Mom visited with aunt Jane"のようにvisitが自動詞になる(p.226)というのは知らなかった。
いずれにせよ、著者の英語の経験値がものすごいということを感じさせる本で、多岐にわたるジャンルからよくこんなに例を集められるなと思った。(16/02/12)