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紙の本
21世紀人の必読書
2001/02/19 21:30
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はそもそもの出自が文系なので(文系なのに、ではない)数学にはことのほか関心を寄せている。たとえば数学的センスを欠いた文学者など愚物だとさえ思っている。
とはいえ、そのように力んでみせたところで、数学的訓練の経験も素養も欠いた素人数学マニアにすぎない私にとって、親しく読める数学書の範囲などたかが知れている。たとえば本書のように、目もくらむような刺激を与えてくれる一般向け数学書にめぐりあえたとしても、その客観的な価値等を云々できる資格もない。
資格はないけれど、これだけは言えると思う。——21世紀の人類社会は、なんて見てきたようなことを話題にしたいなら、まず本書を読むべきです。読んでも分からないなら、勉強すればよろしい。それが基本。子どもにはそう教えるでしょ。(これは自戒の弁。)とにかく、この本は面白いよ。
何がどう面白いかをちゃんと伝えられないのが歯がゆいし、その面白さの数学的意味などまるで分かってはいないとは思うのだけれど、たとえば次の文章を玩味してみてほしい。ちなみに、引用文中に出てくるデルタ関数とは、x≠0のときδ(x)=0、x=0のときδ(x)=∞と定義されるもの。
《集合論的世界像の中核には、点という概念がある。この点という概念こそ、素粒子は点であるのか、という、素粒子論の基本的問題に通じる。
場の概念の定式化を、現在の数学の枠組みの中で行えば、場は関数であるしかない。その場の理論の中に、点としての粒子を入れれば、それは、デルタ関数で表されるしかない。デルタ関数に関する現在の数学の理解は、線形偏微分方程式に対してのみ有効なものであり、デルタ関数の2乗は現在の数学では理解されていない。デルタ関数の2乗が存在しないことこそ、場の量子論の発散の困難の第一歩の現れである。[中略]
20世紀後半に現れた、空間から点を捨て去るさまざまな試みが、場の理論の基本問題への挑戦と深くかかわるべきなのは当然である。
ホモロジー(代数)のその中での位置を次のように考えることはできないだろうか。世界がどうなっているのか、そのからくりを理解するという(おそらく幾何学的な)問題意識からは一歩後退し、よりプラグマティックな目標を設定しよう。すなわち、実験・観測の結果を予言する、あるいはその結果を体系立てる理論を構成する、ことを目標とする。[中略]
観測の諸結果の背後に幾何学を予見するならば、ある幾何学的な圏(たとえば位相空間の圏)があって、そこからなにか函手があり、得られるのがある秩序を持った数の体系すなわち観測結果から導かれた理論とみなされるべきであろうか。背後にある幾何学の発見を21世紀にゆずるならば、我々の現在の課題は、観測結果に体系を与えることのできる秩序の発見である。
ここで、「ホモロジー」の出発点を思い起こそう。ホモロジー論とは位相空間を群で置き換えることであった。すなわち、代数的な数の体系で、幾何学的な対象を近似することである。この近似をより精密にすれば、何らかの発展した「ホモロジー論」が、幾何学的な情報をすべて含み、そして、そのようなホモロジー論によって、観測結果を体系づけることができるかもしれない。
さらに、幾何学⇒ホモロジーという矢印の向きを逆さにして、21世紀のホモロジー論が21世紀の幾何学を生むことを期待できないであろうか。
これが、ホモロジーにかけた、一数学者の夢なのである。》
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