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紙の本
分厚いのがお好きな方には本当にお奨めです。
2004/08/06 18:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書子司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書判全2巻、1冊でこの分厚さなのに、それが2冊も。まず小説は長くないと読む気がしないという方(実は私なんですが)にはお奨め度満点の作品です。
昭和28年、関口巽が伊豆山中の住民ごと忽然と消えた村を探すよう依頼されることから話が始まり、あれよあれよという間に話は大風呂敷を広げるように拡大というか、一見関連のなさそうな新興宗教や催眠術、占い師などの六つの話、つまり六つの妖怪の話が説き起こされていく。そして「宴の始末」(下巻ですね)で、その六つの話がすべて連関し、1人の黒幕による実験であることが京極堂によって解き明かされる。今回は、実は京極堂は話の筋を知っている、なのに関わろうとはしないのです。その理由は、京極堂の戦時中の兵役と関係している、ということなのですが、そのあたりのことは読んでもらうとして…。まぁ、この6つの独立していると思える話をつなぐその力技の見事さ、妖怪に関する蘊蓄の広がり、思考に関する思索の深さ……。こんなに良く書けるものだと感心しつつ、ページを捲る手を止めることができませんでした。あっという間の2冊読了。
で、読み終わってちょっと思いました。この作品の建て方、浦賀和宏の「頭蓋骨の中の楽園」と同じではないだろうかと。読んだことの無い方のために、この作品のあらすじをちょっと述べると……。
首無し死体となって発見された美人女子大生、その殺害された女子大生の友人が、笑わない男、安藤直樹とともに犯人を探そうというものです。さらに、二人目の女子大生の首無し死体が見つかり、首が見つからぬままに、異常なる連続殺人の背後には、密室の中で首を切断して自殺した作家の存在があるという話がからんできます。さらに、殺害された女子大生の婚約者である刑事や、2番目に殺害された女性の夫であるミステリー作家などが関係し、話は混とんを極めていきます。そしてラストになって、探偵役である安藤直樹が解決するわけですが、それは推理とか伏線とかではなくて、単純にその一連の事件の発端となった記憶操作を行った人物、萩原を知っていたという理由で解決してしますのです。しかも、一見バラバラに見えた様々な出来事がすべて関連し、それらをすべて萩原がコントロールし、すべてが彼の実験だったというのです。
塗仏の宴とよく似ているといえませんか。京極堂に対する安藤、堂島大佐に対する萩原、催眠術や暗示に対する記憶の消去と刷り込み、6つの関係ないように見えた話が実はすべてひとつの連鎖であったことに対する、4つの首無し連続殺人事件が実はひとつの殺人事件が発端となって行われた関連する事件であったこと、探偵役が事件そのものと関わり、しかも黒幕を知っていることなど、建て方がよく似ていると思われます。もちろん話は全く違うものだし、文章のうまさ、読みやすさ、小説としての面白さなどはるかに本作の方が上と思いましたが……。その点ちょっと気になりました。一度そちらの方も読んでみてください。
紙の本
流石の一言に尽きますね。
2003/01/20 00:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東雲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうやってこれを終わらせるんだ!という『塗仏の宴 宴の支度』を美事にまとめて事件は解決。いやいや解決と言っていいかどうかは判りませんが。
今回は(も)、これでもかというくらい、京極堂が格好好い。
恵まれちゃいますが、彼は本当に苦労人ですね。ファンは思わず惚れ直します。
勿論お馴染み、榎木津、木場氏も大活躍(?)。
宴の支度じゃ散々焦らされましたが、後半は例によって一気に事件が動きます。はてさて、鬼が出るか蛇が出るか……。
京極堂の前に立ち塞がるのは一体…。
恐怖ものではないけれど、思わず背筋が寒くなる。
そんなところが好いところです。
読了後はじっくりことこと考えさせられます。
さて妖怪小説シリーズを愛読しているそこのあなた!
……読まなきゃ損です。