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紙の本
在ることの不思議
2002/06/09 14:42
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の来歴、それはアイディンティティを保証する石の砦だ。だが、それが脆くも崩れ去ったとき、真実を知ることは今までの自分を否定することに等しい。
パスコーの孤独、それはパスコーの恵まれない家族関係に起因している。そして冒頭で起こる祖母エイダの死によってもたらされた来歴不安は、悪い夢のように彼に取りついて離れない。並行する事件がウィールドとダルジールの視点から描かれているものの、本書のメインテーマはパスコーの自分探しに他ならない。
だが、先祖の秘密を探る旅も、よくあるトラウマ小説のように感傷的ではなく、単純で退屈な癒しと再生の物語にもなっていない。この極めて中立的な身振りこそ、レジナルド・ヒル哲学の表れであると言ってよいし、甘くて口当たりのよい娯楽小説とは地平を違える偉大さの支点である。第1次大戦における軍法会議の犠牲者への追悼と政府ヘの憤りや、動物愛護運動の実情を見据える真面目さを、ダルジールとキャップ・マーヴェルのロマンス、ウィールドとディックウィードの二人暮らしぶりの挿入により中和させているところも心憎い。
紙の本
ダルジール警視シリーズ第14作
2001/09/26 21:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
パスコー主任警部は、祖母の葬儀に参列したことがきっかけで、第一次世界大戦に従軍した曾祖父の死に不審な点があることを知る。以来、自分そっくりの顔をしていたという曾祖父に取りつかれたかのように、パスコーは彼の人生を調べ始める。一方、ダルジール警視は、動物愛護の活動家が製薬会社に不法侵入し、敷地内で人骨を見つけてしまった事件を捜査していた。製薬会社は告訴をためらうし、人骨は古すぎるため立件は難しいと思われていた矢先、活動家の一人が轢き逃げされる。さらに、パスコーの曾祖父を覆っていた謎のベールが少しずつはがれていくにつれ、事件との奇妙な因縁が浮かび上がってくる。
第一次世界大戦がヨーロッパにとってどんなものであったのか、文字通り泥沼と化した戦場の様子が丹念に描かれているのだが、ユーモアの中に強烈な批判を込めるヒルの筆は、製薬会社の泥沼の敷地を重ねて時空を結び、パスコーの怒りを通して無益な死に対する憤りを呼び覚ます。
毎作ごとに構成に趣向を凝らしてきたヒルだが、この作品で大きく飛躍したように思う。重層的な構造が物語と完全に溶け合い、ユーモアとバランスのとれた洞察の深みがいっそう成熟度を増している。
ところで、パスコーは苦難続きだが、ダルジールは相変わらずだ。今作では、口の悪さもパワフルさでもひけを取らない女性と恋に落ちる。その成り行きも、読み所のひとつだ。
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