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自閉症スペクトル 親と専門家のためのガイドブック みんなのレビュー
- ローナ・ウィング (著), 久保 紘章 (ほか監訳)
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:東京書籍
- 発行年月:1998.11
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紙の本
従来の学説をまとめ、自閉症の娘をもつ実践をも踏まえた入門書であり、実践的概論書。
2002/08/16 11:54
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yuyuoyaji - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の説く「自閉症スペクトル」は、カナーの命名した自閉症とアスペルガーのあげた「アスペルガー症候群」やWHOの「DSM」の「広汎性発達障害」などを加味した広義の症候群のことである。
自閉症には障害の3つ組─人との相互交渉の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害─の基本的特徴があると定義づける。そのほかにも、なんらかの楽しみをもたらす動作を反復して安心する常同的動作の反復や運動をまねるのが不得意だったり、痛みが平気だったりする例をこまかくあげている。
自閉症の原因としては、脳の返縁系と小脳の出生前からの異常と神経化学物質、心理学的機能障害があるが、いずれも研究中であり、脳のさまざまな疾患と関連がありうるうえに自閉症そのものの定義が流動的であるために、断定することは困難である。
第2部の支援方法では、かれらの特徴にあわせた具体的な方法が数多くしめされている。まず時間を理解することができない。時間を理解できないということは、待つことができず、タイムリミットに合わせられない。その意味で目に見える予定表をつくることは価値がある。社会的な本能には欠けていても、親や家族がおだやかで一貫した接し方をつづけて、守るべき枠組みを明確にしめしながらたのしい経験を与えるようにすれば、おなじようにふるまえるようになる。コミュニケーションをとる最良の方法は、幅広い経験を子どもに提供—ことばや写真で予習し、復習—すること、触れたり指差したりのサインが使えるのなら、そのサインをのばすことが重要である。以下、有用な方法の一般原則と対処法がこまかく具体的にあげられる。
さらに基本的な生活スキルを教える一般原則、たとえばある種の課題ではやりとげたことに気づくよう、さいごの段階からはじめ、つぎにさいごから2番目、と工夫するというように、自閉症児の主体的な立場を尊重したやり方を説く。
後半では、顧問をしているイギリス自閉症協会の活動や医療サービスを自閉症児・者をケアする立場から紹介している。したがって日本とは社会的状況が多少ことなっている点もある。
普通学校か特殊学校かについても述べている。その立場は自閉症児は模倣によって学ぶ際、こまかくプロセスを踏まなければ学習は困難なので、統合教育は理念先行である。そしてほかの子どものいじめを受け、こころの傷を負う、マイナス面があると主張。この考えはとくに「専門家」の多くが主張するところであるが、教育のやり方によっては—たとえばチームティーティングで—自閉症児の発達をうながす統合教育は可能である。いじめを避けることも、致命的な事態にいたらない程度にふせぐこともできる。社会的に「隔離」するマイナス面より、さらに障害児といっしょに学んで成長した子どもたちは、そうでない子どもたちとはちがった受け止め方を生涯にわたってするだろう、というプラス面が大である。このように一部議論の余地のある考えも述べられているが、入門書としてじゅうぶんやさしく、実践的ガイドブックとしてとても濃やかな書である。1970年版の改訂版。訳文はわかりやすい。
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