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「全体主義の起源」、「革命について」などの名著を中心に、ハンナ・アーレントの人生と思想を概説した一冊。最近公開された彼女の映画を観る前に、是非一読を勧めたい。
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アレントの入門的解説書。第1・2章では『全体主義の起源』の解説が、第3章では『革命について』におけるアメリカ論の解説が、そして第4章では、『人間の条件』などを材料にアレントの政治思想の解説がなされている。
『全体主義の起源』では、19世紀的な秩序の解体と、20世紀における全体主義の隆盛が、密接な関わりを持っていることが論じられる。アレントによれば、19世紀の秩序を支えていたのは「国民国家」は、一つの矛盾を内包していた。国家という制度は法の原理の普遍性に依拠しているにも関わらず、実質的に国家を担う市民は、本質的に同質と仮定された民族の統一体に血統と生まれによって属する者と考えられていた。ここに、法の普遍性と民族の特殊性との齟齬が存在する。ハプスブルク帝国やバルカン諸国には、こうした齟齬が顕著に現われている。
この矛盾を推し進めるモーターの役割を果たしたのは、帝国主義だったとアレントは考える。帝国主義は、国家と民族との間の齟齬を植民地においていっそう先鋭化させる。その具体的な現われが、拡大された種族意識に基づくナショナリズムとしての「人種主義」と、白人の責務に基づく植民地の保護政策としての「官僚制」である。そして「人種主義」が「世界観」へと結晶化し、国家の普遍性が汎民族主義によって征服されるとき、全体主義が生まれる。
20世紀前半が全体主義の時代だとすると、その後半はアメリカの時代である。アレントは『革命について』の中で、共和主義的な立場からアメリカ史を捉えなおし、その意義と問題を明らかにしようとした。アレントは、アメリカ独立戦争によって新しい統治形態が創設されたと考える。こうした政治的な建国の精神こそが、アメリカという国家の正統性を担保している。しかし、アメリカにおける圧倒的な富への情熱は、こうした共和主義という統治形態の創設によって確立された政治的な次元を掘り崩す危険性を孕んでいる。
アレントはこうした危険性に抗い、政治的なものの次元を明確にしようと試みた。彼女は『人間の条件』などの政治思想的著作を発表し、政治的行為を人と人の関係における「活動」を、人と物の関係における「仕事」や「労働」から明確に区別することで、ギリシアのポリスにその源を持つ公的領域を回復しようと試みたのである。
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横浜図書館で読む。興味深い本でした。著者は、立教大学の先生です。再読ですが、中身に関する記憶は全くありませんでした。この本を読んだきっかけは、杉浦 敏子「ハンナ・アーレント」を読んで、アレンとに興味を持ったからです。西欧と東欧の相違は、以下のようなものです。西欧は、国民国家へのスタートが早かったので、民族と国家がほぼ一致している。それに対して、東欧は、民族と国家の境界線は一致していない。