紙の本
映画を観たときから、面白いという予感がした。
2001/08/25 23:54
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投稿者:ヤス - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画版「けものがれ、俺らの猿と」を観て、読んでみようと思い立つ。この映画自体はあまり面白くなかったのだが、原作への興味を高める効果はあったようだ 。
この本は「けものがれ、俺らの猿と」と「屈辱ポンチ」の2作品を収録していて、どちらの作品も作者を連想させる主人公が登場するし、現実離れした世界も似通っている。そして映画よりもずっと面白かった。
主人公の主観で進む世界はカフカのようだし、不条理で不確かな世界は純文学とも言える。下手をするとつまらなくなる可能性もあるのだが、そこのところは話芸の面白さでぐいぐいと読ませる。思いついたことをただ書いているようでありながら、絶妙の言葉遣いや間が笑える。ぐちぐちいろいろ考えたりする様子も面白い。
一番印象に残ってるのは「落ち穂らー麺」の使い方で、端折って書くとこんな感じである。
金がない主人公は、店頭で投げ売りされている「落ち穂らー麺」とかいう聞いたこともないラーメンを夜に食べようと考えていた。その後、しばらくして知り合った間抜け野郎がローストビーフサンドウィッチを「こんなうまいもん食ったことないっす」と感動して泣いているのを見て、普通のサンドウィッチに大の大人が泣くかと思い訊く。「おまえ普段なに食ってんだ。」「いえ、別に普通の」「普通のなんだ」「落ち穂らー麺とか」
こう書いてはみたものの、実際の面白さは伝わりそうにない。手にとって確かめてもらえればと思う。
紙の本
情けなく可笑しく
2001/08/22 18:50
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投稿者:ポーリィーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
羽振りのいい友人に復讐を頼まれ引き受けるが何をやっても被害を受けるのは自分たちだった…バカバカしくも可笑しい緊迫感のない復讐劇。表題作の他に、映画化された「獣がれ俺らの猿と」は絶品。展開がスピーディーで読んでいてこれほどくっきり映像が頭に浮かぶ作品はかつてなかった。映画化したくなって当然といえる。ぜひ、映画を見る前に読んで欲しい作品。
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「けものがれ、俺らの猿と」の映画が大好きで何回も何回も見ていたら原作があることに気づいた。それで買ってしまってすっかり町田康の虜。未だに「けものがれ…」は非の打ち所もない完成された作品だと思う。
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「けものがれ 〜」は、最初映画で知って(みてないけど)、「原作、『猫にかまけて』の人なんだー」って、思っちゃいましたスイマセン。
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電車の中で読んではいけない。笑いをこらえるのが、容易じゃないから!その、笑っちゃいけない苦しさが、もっとオカシさを呼んできちゃって、腹がよじれちゃう。町田康はアホなのか、天才なのか...
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けものがれ、俺らの猿と
タイトルもさながら、中身もブッ飛んでる。youtubeの予告編が好きです。鳥肌実すごい。
屈辱ポンチ
おっさんの珍道中。ほほえましいなあ。
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「けものがれ、俺らの猿と」 売れない脚本家が、ベテランプロデューサーに社会派映画の脚本依頼を受けるが、ロケハンに出かけた先で色んなトラブルに巻き込まれるという話。色んな頭のおかしい人がでてきたり、伝奇物的な怪しげな雰囲気で、横溝的な因縁話が! と期待するが、物語は尻切れトンボで終わる。お膳立てだけは色々してあるのに、なんでここで終わるんだろうと、不思議に思った作品。「屈辱ポンチ」売れないパンクロッカーが、友人のライターの子分とともに、跋丸という男にいたずらをする話。色んなばかばかしい手段でいたずらをするのだが、これも途中でなんか尻切れトンボ。こっちは一応後日談がついているので、まとめようとはしている模様。 文章はすらすら読めるし、途中で笑えもするんだけど、尻切れトンボだとなんか物足りない。
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「けものがれ、俺らの猿と」「屈辱ポンチ」の二本。こんなことねーよ、って思わせる能力はピカイチですね。町田康の手にかかれば、誰のどんな日常も、わたわたしたぬるぬるした感じに描かれるんだろう。
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相変わらず阿呆な話を考えるなぁ。
出てくるのは奇人・変人ばかり。
独特の文章がその可笑しさを引き立てる。
彼の考える物語の主人公にだけはなりたくない。
この物語は結局どこに向かってるんだ、
と思い始めた頃、あやふやに終わってしまう。
もう少し読んでいたかった。
<収録>
1.けものがれ、俺らの猿と
2.屈辱ポンチ
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町田康はその処女小説『くっすん大黒』を書いた時点で、作品のスタイルを確立していたと思う。
ともすると冗長でだらけているように受け止められかねない文章も、実はリズムという計算のもとで、滑らかに響く。ところどころに挟まれる古典的ジョークや細かすぎるくらいに事の成行きを描写するあたり、あるいは奇怪な行動を起こす登場人物や、蠢く虫ども。これらは、下手をするとそれだけで読者の読書意欲を殺いでしまう可能性がある。しかし、町田康は果敢だ。徹底している。
町田康の小説に出てくる主人公は、悉く堕落・没落した生活を送っていて、これではいかん、なんとかせんければならぬとあがくのだけれど、その思惑と現実とのズレは常に広がっていき、如何ともしがたい。そのため、読者はストーリー展開をまったく予測できず、さらには現実と妄想の境目が曖昧模糊としていき、それが却って小説の不気味なリアル感をいや増している。
主人公たちは社会を嘗め切っている。嘗め切っているが、社会の有り様をいったん受け入れたうえで、著しく脱線。そして軽侮しているのである。そこから彼らは立ち上がろうとする。その姿たるや滑稽、しかし、美しい。
処女作『くっすん大黒』ではさほどでもなかったが、芥川賞受賞作『きれぎれ』に到るころには、そのストーリー展開たるや、凄まじいスピード。話はあらぬ展開へ進み、そして唐突に幕を閉じる。多くの読者は、呆気にとられて、ジ・エンド。頭の中は、カオス・オブ・カオス。
人間社会に生きることの中に潜む、醜さ・惨めさ・馬鹿馬鹿しさの視点から、ここまで真正面にぶつかっていく作家は他にいない。
【収録作】
『けものがれ、俺らの猿と』…仕事のない佐志のもとに、老プロデューサー楮山が現れる。脚本取材のために出掛ける先々でトラブルに巻き込まれる佐志。有無を言わせぬ兇悪警官。珍妙な素麺祭(?)での人々の大混乱。ヘボ大仏とクレイジー田島。そして猿のアンジーちゃん。ストーリーは楮山の咳の激烈さとともに加速度を増し、純喫茶「悶」での、何故か分からぬウェイター役で、唐突に終わる。滑稽の極み。
『屈辱ポンチ』…知人・浜崎の頼みで、ひょんなことから跋丸という人間への復讐をすることになった岡倉。浜崎から差し出された助っ人(?)帆一とともに、跋丸へ嫌がらせをこれでもかと実行するが、これ皆失敗。無言電話。白紙FAX。生肉。活け鱒…。岡倉と帆一のくだらないやり取りをリズミカルに描く。滑稽の極み、再び。
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売れない脚本家が映画プロデューサーからの突然のオファーにより、ロケハンへ出発。東京にほど近い場所で出会う不条理感たっぷりの人々・・・。次から次へと起こる珍騒動を描いた「けものがれ、俺らの猿と」。
バンドをしながらフリーター生活に甘んじている「俺」が、友人に副手の代行をさせられることから始まる珍騒動を描いた「屈辱ポンチ」の2編を収録。
どちらも強烈にギャグが冴えていて、かなり笑える作品。
町田節ともいえる弾丸のような、言葉!言葉!の緊張感。
そして間の使い方のセンスが独特の脱力感を生み出し、読み手を町田ワールドに引きづり込みます。
ポイント、ポイントでかなりツボに入るギャグもあるので、静かな喫茶店などでは注意が必要です。