紙の本
幼い日の思い出とともに、ちょっと前まであった“良き日本”を思いださせてくれる物語
2001/09/02 00:17
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投稿者:密偵おまさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年、我が子を殺して捨ててしまった親、見ず知らずの子供を可愛いからといって連れ去ってしまった大人、そんな物騒な話題が、絶えない。
この作品の主人公、ウメ子と美代ちゃんの冒険は、微笑ましいと同時に、今では失われつつある“良き時代の日本”の風景を思いださせてくれた。ユーモアあふれる語り口から飛び出す、幼い二人の女の子の友情をほのぼのと描き、読むものの心をほんわかと温めてくれる。
こんな大胆な冒険をしたことのない私でも、初めて母に内緒でバスに乗って友達と町に出かけた日の、ワクワクドキドキした気持、覚えたての自転車に乗って、気がついたら思わぬ遠出になっていて泣きながら夕焼けに染まった道を帰ったこと、そんな幼い日の思い出が蘇ってきた。
ギスギスとした日常を忘れて、ひととき、泣いたり笑ったり、ハラハラドキドキしながら、懐かしい思い出に浸れる、そんなほのぼのとした気持になれる物語である。
紙の本
あっけらかんと明るく楽しく、味があってたくましさもある−−素敵なパーソナリティの原点はここにあった。幼稚園児ふたりの友情を描いた小説。坪田譲治文学賞受賞。
2001/05/10 17:00
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
本にもなっている「週刊文春」誌上の対談『阿川佐和子のこの人に会いたい』とか、壇ふみさんとのエッセイバトル『ああ言えばこう食う』『ああ言えばこう嫁行く』など、魅力的なパーソナリティーを発揮して活躍する著者の初めての長編小説なのだ。
この方のコメントの痛快さは、「ポスト森茉莉」か「ポスト宇野千代」かという感じがする。そんな人の書く小説だから、面白くないわけはない。
素材はわりに「正統派」とお見受けした。紙芝居屋さん、おせんべいの缶でつくった大事なもの入れ、サーカス小屋など。登場人物も、あたたかく見守ってくれる園長先生、何でもお手本になってくれるお兄ちゃん、山の手風の自分のお母さんとは違う苦労人の友だちのお母さんなど。
どこかで読んだような、どこかで聞いたような安心感を与えてくれるカードの配り方である。お話の運びも「予定調和的」と言ってさしつかえないと思う。破綻して、読んでいる人を煙に巻くようなことはない。ひとつひとつのエピソードは、「これでいい?」と確認してくれるように、納得できるよう丁寧に進められていく。
マイナスイメージにもとられかねない「正統派」ではあるけれど、一気に読ませてしまう魅力は、何といっても登場人物の味なのだなあと思う。
お話の語り手である主人公の「みよ」は佐和子さんの分身のような感じ。お兄ちゃんやその友だちと遊ぶのが好きな活発な女の子で、少しおしゃべりで明るい。
お兄ちゃんと通う幼稚園に、毎日派手な洋服を着てくるウメ子という女の子が転園してきたところからお話が始まる。はっきりとしていて、どこか大人びたところのある性格のウメ子と、みよはすぐに親しくなる。
家に遊びに行ったとき、みよはウメ子がお父さんと一緒にくらしていないことを知る。「もう少し大きくなったら、みよちゃんと一緒にさがしに行く」とウメ子は言う。
ある日、よく話をする紙芝居屋さんとウメ子の母がけんかしているところを偶然に見かけたみよと兄は、その紙芝居屋さんがウメ子の父のことを知っているという情報をつかむ。
しばらく旅に出ることになったという紙芝居屋さんの話をウメ子に伝えると、ウメ子は紙芝居屋さんの小型トラックにもぐりこんで父に会いに行くと言い出す。いつかのウメ子の「一緒にさがしに行く」という言葉を思い出したみよは、同行することに決める。
家に置き手紙をしてトラックに乗り込んだふたりが行き着いたのは、サーカス小屋。ウメ子はそこで働く父に会う…。
心がじんわりと温まってくる愛らしいお話なのだ!
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思った通りの展開と歯切れの良い文体で、一気に読める。出来たら小学生の時に読みたかったと思わせる、ジュブナイル。
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ウメ子は変わっている。ウメ子はふつうの子とちがう。初めて会った日から、みよはずっとそう思ってきた。ロビンフッドのような服装に、勇敢な行動。みよは、ウメ子の魅力に夢中になった。そんなある日、謎の紙芝居屋さんが現れ、行方不明だったウメ子の父さんの居場所が・・・。
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ニ三日前の新聞広告で名前を見ていた本。図書館にあったのですかさず借りてきました。この人のエッセイは好き。壇ふみとの「ああ言えばこう食う」なんかいいですよね。二人とも視点が鋭くって、しかもユーモアに温かみがある。小説は読むのは初めてなのだけれど、イラスト(本人)を含めとても読みやすくっていい話だった。
「サーカス」と聞いてわくわくする興奮と共にある種の「怖さ」というか「寂しさ」を感じるのは私よりも上の世代だけなのかもしれないけど、現在の「イリュージョン」めいたそれとは違った「異世界」の香りを含んだ何かがその言葉にはあったと思う。もう一世代前だと「美しき天然」とか「ジンタ」とか言ってもっとノスタルジックで寂しげなことを思い浮かべるのかもしれないけど。そんな「日常の延長であるところの非日常」の世界を描いているのがこの本であるとも言えるだろう。主人公は幼稚園児で、その年齢にしてはちょっと大人びたところがないとはいえないけど、そう不自然と言うほどではない。テーマもそう奇抜な珍しい物ではなく、ありふれた物といってもいいかもしれない。しかし読んだ後なにか残る物があればそれはいい作品といえるのではないだろうか。
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みよちゃんのいる幼稚園に、ウメ子が転園してきます。
朝のお祈りの最中に、真っ赤なエプロンドレスに、赤のブラウスで
登場(?)したウメ子は、元気で、物怖じせず、男の子とも平気で遊んじゃいます。
ちょっと引っ込み思案のみよちゃんは、そんなウメ子が気になってしかたありません。
そんな二人の可愛い友情物語です。
ウメ子に振り回されるような、みよちゃんですが、ちょっとずつみよちゃんが成長していく姿がほのぼのとしています。
何気なくみよちゃんに声をかけてくれる園長先生が、素敵です。
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幼稚園に転入してきたウメ子、みよちゃんの視点からのお話。
とてもしっかりとした、個性的なウメ子に惹かれるみよちゃんとおにいちゃんの楽しくて、ちょっぴり冒険で、温かい友情。優しい気持ちになれた。
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阿川さんのエッセイは読むけれど、このような小説もお書きになっていたのですね。
幼稚園児のみよちゃんとウメ子の友情のお話。
このウメ子、とても強烈なキャラで、転園当日衝撃的な真っ赤な服を着て現れた。気になるけどなんだか腹立たしかったり、仲良しなんだけど肩透かしくわされたようであったり。友達になっていくのってなんだかムズムズすることあったよな。だんだんだんだん育んでいくものなんだよね。その様が良い。
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阿川佐和子さんが年少時代の経験を元に書かれた、初の長編小説です。みよが兄と通う幼稚園にウメ子が新たに入園してきた、ウメ子は変わっている。ウメ子はふつうの子とちがう。初めて会った日から、みよはずっとそう思ってきた。ロビンフッドのような服装に、勇敢な行動。みよは、ウメ子の魅力に夢中になった・・・物が豊富に溢れていない時代、貧乏だけど温かい家庭、懐旧の世界に導かれる。みよ視線で書かれる素直で読みやすい文章、先日読んだ佐和子さんのエッセーと重なり、佐和子さんをより身近に感じられた。
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元気でちょっと変わった女の子、ウメ子。
自分とは違う女の子だから、ウメ子のような子が幼稚園にやってきたら、あたしも友達になりたい!
自分に似た人にはイラッとしてしまいがちだけれど、自分にはないものを持っている人にはとっても魅力を感じてしまう。
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(2015/1/20読了)
阿川さんのエッセイは読んだことがあるけど、長編は初めてです。偶然にも(?)この作品が阿川さんの初めての長編でした。
タイトルは狙っているような感じですが、装丁も挿絵も目次も可愛いので、書架から選んだ作品です。
幼稚園児の友情、冒険、成長。家族から、見守る周りの大人達からの愛の話。
読み進めるほどに、スピードが加速していきました。勇気をもらえ、優しくなれる、温かいお話しでした。
(内容)
「お父さんはいないの」ウメ子はうつむいたまま、答えた。とたんに私の笑いも止まった。急にあたりが静かになった。悪いことを言ってしまったらしい。私は白いワンピースのレースをいじりながら、小声で聞いてみた。「死んじゃったの?」ウメ子はびっくりした顔でこちらを向き直った。「ばかだなあ。死んでないよー。生きてるんだよ。でも、どこにいるかわからないの。だから、もう少し大きくなったら、捜しにいくんだ」「ひとりで」「ちがうよ。みよちゃんと一緒に」。天性が迸る、阿川佐和子初めての長編。
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ウメ子は変わっている。
ウメ子はふつうの子とちがう。
初めて会った日から、みよはずっとそう思ってきた。
ロビンフッドのような服装に、勇敢な行動。
みよは、ウメ子の魅力に夢中になった。
そんなある日、謎の紙芝居屋さんが現れ、行方不明だったウメ子の父さんの居場所が・・・。
(アマゾンより引用)
ほんわか~な話で面白かった(*´∀`*)
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みよちゃんの友だちのウメ子は強烈な個性の持ち主。
ウメ子が行くところ、いつも大騒動がまき起こる。
そして、家出した父親との再会は、ウメ子を少しだけ
大人にした…。
少女のまっすぐな友情と冒険を描く。