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紙の本
音楽に捧ぐ
2001/05/29 05:20
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投稿者:春都 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芸術家という、ある種特異な人たちがいる。彼らはその身を捧げることで優れた作品をつくりだしているのだけども、一方で捨ててしまうもの、捨てざるを得なかったものも少なくないのではないか。
だからこそ他人には成しえない「創造」をすることができるのだ、と言ってしまえばそれまでだが、代償はあまりに大きい。ときに狂気さえひきおこしてしまうのである。登場人物の一人がいう「僕は音楽になりたい」とは、真摯でありながら凄惨な言葉だ。
欲をいえば、言葉によって音楽を奏でてほしかった。それこそ僕でも知っているバッハから、聞いたこともない音楽家の曲までいろいろと演奏されるのだけど、周辺情報、つまりこれはどういうときに書かれた曲でどんな意味を持っているなどの記述ばかりで、音そのものの描写がほとんどなかったのだ。
「言葉にはできない」といわれればその通りなのだけど、やはり音楽をあつかった小説としては、聴いている者の主観的印象で充分だからそれを書いてほしかった。
そう、本を開けば音楽が流れでてくるかのような。
紙の本
オルガン音楽に関する知識が無くても、十分堪能できる
2001/04/16 19:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
「バロック・ミステリー」とはあるが、バッハのオルガン楽曲を全く知らなくても、十分堪能できる作品だ。評者は、恥ずかしながら、全くバッハのオルガン楽曲を聴いたことがないが、十分面白い作品だと思えた。逆に、本作により、バッハのオルガン楽曲を聴いてみようという気にさせてくれる。
というのも、評者のパイプ・オルガンという楽器、そしてオルガン演奏に対するイメージが、本作により大幅に書き換えられることになったからだ。本作に触れる前の評者のオルガン像は、所詮小学校のオルガンの域を出るものでなく、極めて貧相なものであった。
しかし、本作で描かれる本当のパイプ・オルガンという楽器は、一つの音階に対し、音色の異なるパイプが複数装備され、全体として何千というパイプで構成されている楽器であった。とてつもなく複雑な「システム」なのである。演奏者は、この膨大な選択肢の中から、様々な音色の組合せを選択して、パイプ・オルガンというシステムを自己の楽器へと変貌させていかなければならない(この調整をレジストレーションという。これも勿論本作で知った)。甚大なシステムたるパイプ・オルガンを自己の感性を表出するものへと変貌させていく所為は、「神の所業」と言うことができるかも知れない。
読者は、きっと本作の読後、膨大なシステムを自己の意のままに奏でなければならないオルガン演奏という芸術に対する畏敬・崇高の念を感じることになるだろう。
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