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女と別れたい男と、男に捨てられまいとする女。その二人の愛憎入り混じる様を描いた小説。何しろ二人が互いに恋に浮かれていた時期はほんの序盤で、あとは延々「別れたいのに別れられない」という優柔不断なアドルフの一人語りが続く。
そんなに関係に倦んでいるならさっさと別れればいいのに、と何度も思った。エレノールが必死に取りすがる姿にもいらいらしたが、アドルフの一人称で語られる分、彼の心理に対する苛立ちの方が強く感じた。
最後の彼の心理描写は読んでいて慄然とした。結局アドルフにとって一番大切なのは自分なんだな。
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*ブログ感想あり*
http://blog.livedoor.jp/marine0312/archives/51567994.html
あたしは、アドルフを男性としては好きになれません。断固。
恋がきれいなのは、きっと一瞬なのです
かわいそうなエレノール。かわいそうな、アドルフ。
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新潮文庫「アドルフ」の表紙が新しくなったものを買って読んだ際に、弟に「この表紙『悪魔城ドラキュラ』(コナミのゲーム)みたい」、と見せたところ賛同を得た。なんかえらいかっこよくなった。
Amazonではなぜか古いバージョンで、そのかっこいい表紙が出ないのが残念。
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19世紀フランスの恋愛小説。
なのに、現代人が読んでも、昔の物語としてではなく一個人の懊悩としてよめる。
恋の魅力について、
「自然によって定められた人間を探し当てたというあの確信。共にある時のあの嬉しさ。離れている時のあの希望。周囲のすべてに対するあの優越感。…」なんて書いてる。
自分で気を引いた女があまりに自分にはまってしまったので今度は逃げたくなる、
けど弱いから言えない、
けど矛盾した行動をとったりして女をもてあそんでるみたいに見られる、
けどそれが切れてしまうと、待望の待望の自由が手にはいったのに、物足りない。すべての人々にとって自分がいてもいなくても関係のない他人になってしまったと。
主人公の性格は好きじゃないけど、見過ごしてしまうようなことが一挙手一投足、あらわされていて面白い文章だった。
昔の話だからちょっと不自然なとこもあるけどね。
あと堀江敏幸とかいう人のあとがきが鋭い。
自分の心なのに、アドルフは、「ような」「めいた」で語っている。
「恋しているような気がした」「ほとんど恋情に似た甘い感動が胸に満ちてきた」
この小説のタイトルが、主人公の名前である『アドルフ』であって、主人公のことを病的に愛する女性の名『エレノール』ではないことが、そもそもこの小説を表してるよね、みたいな視点が面白かった。
あ、あとは表紙がちょっとコバルト文庫みたいな感じで恥ずかしかった笑
←これじゃなかったのさ。
P.S ほかの人のレビューを見て。
私はアドルフを悪く言えないな。
性格はほんとうじうじしててあれだけど、エレノールの理由もわからないくらい激しい情念にやられたら、無理!!!
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こまごましたことはその楽しさ故にかえって記憶にとどまらず、心の中にはただ一筋、長く幸福の跡を残すだけ
遅かれ早かれ避け得られない苦痛に、ほんの一瞬立ち向かう勇気がない
長い間互いに口に出さずに胸に畳んで置ける言葉がある。だが、ひとたび口にされたが最後、それは絶えず繰り返されるのだ
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(1967.04.30読了)(1967.04.29購入)
(「BOOK」データベースより)
前途有望な青年アドルフは自らの空虚な心を埋めるため、伯爵の美しい愛人エレノールに恋を仕掛け成就させる。しかし、彼女が贅沢な生活も、子供たちも、風評もすべてを捨てるという一途な愛情を示した時、彼はその関係からの脱出を願うようになる。耐えがたい重圧を感じながらも、どこにも逃れることが出来ない男性の虚しい心の動きを冷徹に分析し、精緻に描ききった自伝的心理小説。
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優柔不断なアドルフ。恋のような本当の恋じゃないような。同情したいのか、恋してたのか?よくわからない内容だった。エレノールの手紙を読んだことで、思い切り刷り込まれた人生の苦悩。
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主人公はタイトルにもある「アドルフ」。このアドルフの一人称語りで物語が進みます。こいつは恵まれた境遇で将来も前途洋洋な若者でありながら、女性に対してはかなり不道徳な、歪んだ考へを有してゐるやうです。これは父親の影響があるらしい。父は「結婚を問題にしない限りは、どんな女でもものにし、次にこれを棄てても構わない」(本文より)などといふ思想の持主だと「私」は語つてゐます。
しかし悲しいかな対象となる女性が見つからない。そんな時、P***伯爵が囲つてゐるエレノールなる女性と巡りあひます。彼女はアドルフよりも十歳も年長で伯爵との間に子供も儲けてゐるのですが、「胸は恋を欲し、虚栄心は成功を要求していたときに、突然目の前に現われたエレノールを見て、この人ならばと思った」(本文より)などと白状してゐます。
アドルフのアプローチに対して、憎からず思ひながらも慎重な姿勢を崩さぬエレノールでしたが、最後にはアドルフの想ひを受け入れます。
無論周囲から祝福されるやうなカップルではありません。その為、二人は多くのものを犠牲にしました。特にエレノールは、世話になつたP***伯爵を裏切り、子供を捨て、慣れ親しんだ土地を去るのです。あゝそれなのに、全てを失つたエレノールを、アドルフは次第に重荷に感じるやうになります。そんな彼の心の変化を読み取つたエレノールは......?
本作は近代心理小説の魁と呼ばれる、19世紀おフランス文学の一作。いやあ面白い。歴史的作品とか、記念碑的作品などと呼ばれるものは、その歴史的意義のみで語られ、実際は退屈で後世の審判には堪へられず、ひつそりと古典の棚に収まる作品が多い。
しかしながら『アドルフ』は現在の読者にも十分アピールします。恐らく多数の男が、アドルフと同じ思ひを、少ながらずしてゐるからではないでせうか。少なくともわたくしの性格はアドルフに似てゐます。ちよつとだけね。
エレノールを重荷に感じながら、彼女を傷つけることを恐れるあまり、身動きが取れなくなるアドルフの心の動きは、苦しい程理解できるのであります。しかしその態度が、結局エレノールを苦しめてゐるのですね。それもアドルフは承知してゐるから、一層蟻地獄の穴に嵌つて行くのでした。
ところで、アドルフは作者コンスタン自身がモデルであります。実際コンスタンは女性にはルーズだと言はれ、有名なスタール夫人以外にも多くの浮名を流したさうです。ゆゑに名前はコンスタン(constant)だが、名は体を表さず、実はアンコンスタン(inconstant=浮気者の意がある)だと綽名されたとか。(三浦一郎『世界史こぼれ話』より)
いくら内面に苦悩を抱へてゐても、世間の目は単なる女たらしなのでした。まあ、そんなところでせうね。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-690.html
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社交界の”高嶺の花”の女性を手に入れた途端、冷めてゆく男心の移り変わりを執拗な筆致で描き切った異色の心理小説。
19世紀初頭、大学を出たばかりの青年アドルフは、空虚で退屈な日々を紛らわせるために恋をしたいと考えるようになり、遠縁の伯爵の愛人で10歳年上のエレノールに目をつける。
アドルフ自身の手記という形をとる本作は、残酷なことにエレノールを愛しているのではなく「本当に恋をしているような気持ちになった」と言い切る。だが、貞淑だった彼女がついに陥落し、夫も子どもも社会的地位も捨てて彼のもとへ走った時から、アドルフは次第に彼女を疎ましく思うようになる。作者の実体験に基づくというこの心理描写がなんとも恐ろしい。
駆け落ち後は帰る場所のないエレノールが不憫で別れを告げることができないアドルフ。その間の苦しさ、鬱屈した思い、優柔不断な自分への苛立ちなど、自己中心的な彼の心の動きが延々と綴られる。
結局2人は別れさせられるが、彼女はショックで倒れた後そのまま死の床につき、そこで初めてアドルフがこの世で唯一自分を愛してくれた女性を殺してしまったことに気づく愚かしさ。(ちなみに職場の男性陣に訊いたところ、複数の人が実際に目当ての女を手に入れた途端満足したと答えた。「釣った魚に餌はやらない」は世界共通認識の男性心理なのだ。)エレノールの死後に見つかった手紙の恨みつらみに満ちた文面がこの物語を締めくくり、アドルフの悔恨と孤独感が深い余韻を残す。