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借りた所:川崎市図書館
借りた日:2006/07/06-2006/07/20
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未読のまま返却
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いかにもコクトーらしい、芝居がかった物語。
出てくるキャラクターは芝居の一登場人物として、役割を演じるためだけに付けられたパーソナリティであり、人物としての深みを感じさせるものではない。コクトーは物語という形式ではあるが詩情にその重点を置いている。
芝居には詳しくないので上手くは言えないが、芝居を見に来た観客を煽るような文体だった。読みにくい、かもしれない。一語一語に力と意味があり、さらさらと読み進めるには随分と濃い文章だったと思う。
「恐るべき子供たち」にもあったコクトー独特の死に対する無邪気な興味みたいなのが本作品でも強調されていて、主人公のトマはどうしても死を悲壮なリアリティーあるものとしてとらえられない。そこでトマは無邪気に死と戯れ、死を知らぬまま死ぬことになる。戦場はそのような人間の死に対する感情を鈍化させるような舞台として一役買っていたのではないか。
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トマ、彼は一体誰なのか?真似をし、それを演じる詐欺師であるが、そこに悪意はなく、あくまで無邪気に詐欺を働いている。だからこそ皆はトマを信用する。
トマの臨終の場面は切なさが立ち込める。最後まで詐欺を働こうとし、死を演じるようとする。死に対するトマの無邪気さはコクトー独特の観点に基づいている。悪意のない悪は悪なのか善なのか、それともどちらでもないのか。
またコクトーは小説の主人公にあるゆる面で無知を与えている。その無知が何をもたらすのか、無知ではなくなったときどうなるのか、コクトーはそんなことを描くことが多い。
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丸善は現在、映画「人間失格」のポスターが
いっぱい貼ってあります。
この、太宰役の子、かわい過ぎ・・・
閑話休題、こっちのトマもなかなか魅力的。
でもそれ以上にコクトーの文章が素敵。
翻訳もいいんでしょうが(河野好蔵氏です)。
解説氏がどこかからの引用で
贅肉がなさ過ぎで、骨が透けて見えそうな文体だ、
みたいなことを挙げていました。然り然り。
やたら見得の多いお芝居みたいな感じで
読み進めません ^^
泥地の歩きにくさを
「乳母のように大きい接吻で捕らえようとする」
なんて言ってました。
実家にあるのは
「リバイバルコレクション」とかで金ぴかピンの
悪趣味極まりない表紙でしたが、図書館のは違いました。
復活文庫、みたいなの。
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賛否あるけど、私はめちゃくちゃ好きな作品。
コクトーっぽくない作品のように見えるんだけど、主人公の嘘つきサイコはやっぱり最後は悲惨に終わるあたりは、コクトーだなと。
読んだのが学生の時だった事もあり、
嘘って通し続けたら、いずれ本物になる!
なるほどね、悪くないね、新しい考え!
って、短絡的な解釈をしたのを覚えてる。
何が虚で何が実なのか?
それを決めるのは、本当は誰なのか、何なのか。
嘘は悪なのか?本当に?
嘘の上に成り立つ人生は全て作り物なのか?
そこにある生きた証を否定できるのか?
「死んだ真似をしなきゃ殺られてしまうぞ」
この言葉の真の意味とは。
立場が変わった今、再読したらどう感じるのだろう。
気持ちが上書きされる前に、感想を書き残してみました。